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空音
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シュメール
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「私の物語は大ヒットします!この話は万人に読まれます、映画化もされるし、私の原作は世界中の言語に翻訳されて海を渡るわ!大金を稼いでくれる!」
一体この子は何を言っているのだろうと理解に苦しんだが、まだ脳裏の片隅に添削代金が残っていたので辛抱強く桜子はその場に座っていた
後三十分も相手したら用事があると言って退散しよう――桜子はこっそりスマホの時計を確認した
「目覚ましテレビで取り上げられるわよね、それにNetflixで有名な韓国のドラマ監督達がこぞって映像権利を取り合うわ、でも私はそんなはした金はいらないの、この本が世界に広がってくれればそれでいいの、普段は本のことなんか扱わないインフルエンサーとかがこぞって読み出すわ、あらゆる媒体が私の本に夢中になる」
コーヒーはもうすっかりぬるくなっている、急に疲れてきて桜子は肩をすくめて言った
「もちろん、自分のやっていることを信じるのはとても大切なことよ、私のクラスの生徒にもあなたほどの気概を持って欲しいものだし、たとえ・・・その・・・今さっきあなたが言った成功も・・・極めて見込み薄だとしても・・・よ?だって今の世の中にはWeb小説書きでおよそ50万人、公募勢は100万人いると言われているわ、そのうちの『億り人作家』を目指す人の99.9%以上はその努力は報われないの、世の中にはすごい小説が沢山あって、それが常に出版されているの、もちろん私はあなたの小説にいいことが沢山あって欲しいと思うけど、その前にあなたはまず、あなたの作品を考えうる最高の形に仕上げる必要があるわ」
「もう最高に仕上がっているわ、先生は私の作品の誤字脱字チェックだけしてくれればいいの、決して文章を変えることは許さない!」
希実は腹立たしいほど強情だった、二人は暫く見つめ合った・・・いや、睨み合ったと言ってもいいだろう、フードコートの喧騒が、二人の間だけぽっかりと抜け落ちたように静かになる、やがて希実が口を開いた
「わかったわ、かいつまんで概要だけをこの場で口頭で話してあげる、題名は『あの虹の向こうに』よ!」
「虹?虹がその作品のテーマなの?」
「そうとも言えるし、違うとも言えるわ」
―どっちなのよ!―
そう心に思いながらも、彼女が桜子の前に現れてから何も進んでいなかった面談がやっと動き出した、しかもこの子はとんでもないナルシストだ!今まで会った小説書きでは断トツだ
桜子は内心そう呆れながらも、クリームソーダの泡がゆっくりと消えていくグラスの向こうで、希実の表情がみるみる生き生きと変わっていくのを見逃さなかった
希実は静かに話し出した、語ったといった方がいいのかもしれない・・・ジャンルはざまぁ要素が入った恋愛の愛憎劇に思えた
30分で退散どころか彼女は2時間語りに語った、聞いているうちに桜子もだんだん引き込まれ、語り終わる頃には身を乗り出して希実に聞いた
「それで?最終的にその三人の女の子を騙した、とんでもなくイケメンの結婚詐欺師はどうなったの?」
「人間一番衝撃を受けるものは、命を取られることでも、金銭をだまし取られるものでもないわ」
「それは何?」
希実は「どうだ!」とばかりに鼻息を荒くして桜子に答えた
「「愛」を裏切られることよ、私が言ってるのは最近流行っている復讐もので「浮気」されたから「金銭」を取って終わりってそんな陳腐な話を言ってるんじゃないわ」
「あ・・・う・・・うん・・・そうね」
最終的に、桜子は同意したものの・・・彼女が何を言っているか理解できていなかった、とにかく本文を読んでみない事には何とも言えない
コメント
2件
なんだかワクワクしてきたよ😆希実の作品面白そう!
第27話、読みました!希実さんの圧倒的な自信とナルシシズムに最初は呆れるばかりだったけど、彼女が2時間語るうちに桜子先生ごと引き込まれていく感覚が面白かったです。「愛を裏切られること」が一番衝撃的だっていうテーゼ、どんなざまぁ展開になるのか気になりすぎます。ラストの桜子先生の困惑した反応もリアルで、続きが気になる終わり方でした!