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白山小梅
白山小梅
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こうなれば、滞在時間を最短で決めてやる。
VS柊 碧音に闘志を燃やして、いざ、出陣。
「お待たせ致しましたー!ハイボールの方ー!」
「はーい」
柊か……!!
そういえば合コンの時もハイボール飲んでたな……!?
柊はわざわざ隅で煙草を吸っているから、近くまで持っていく。隣の女の子のおっぱいを間近で拝ませてもらえるらしい。
「オススメ、なーに?」
グラスをそっとテーブルに置いたと同時に耳元に噛み付いた言葉。あの夜、柊が噛んだ耳朶がじんと疼いて、鼓動はゆっくりと弾んだ。巨乳とか、考える余地なんて無かった。
耳が、熱い。
「え……と、長芋のとろとろ明太チーズ」
「へえ、それ好きなの?」
「うん、好き」
「じゃあ、今度来た時頼も。あざーす」
わざわざ応えたのに、今日の柊は明太子な気分ではなかったらしい。
だったら今言うこと無いのに、柊はこういうところが意地悪だ。
あっさりとあたしに線引きした柊は、あたしが運んだお酒をひと口含むと「俺が飲んだ分飲んでいーよ」と、女の子とシェアしている。
なんだか、柊のことを意識している方がバカバカしく思えて、店員は店員らしく、仕事に戻る。
「疲れた〜、トイレ陣取ってたお客退かすのに俺の体力削られたわ」
「あの人やばかったですね。プロポーズ成功のお祝いで飲まされて、結果主役が秒で潰れたらしいですよ」
「それ系の話さ?聞く度に思うんだけど、ちょっとは怨恨入ってるだろ。怖すぎんか?」
「辞めましょう、私とほとりが人間不信になったら廣瀬さんのせいですよ」
「なんで俺?」
AM0:30
人の波も落ち着いたので、早番のあたしと芽依は廣瀬さんと一緒に上がった。
はー……今日は色々としんどかったし、どっと疲れた。明日が休みで心から良かった。
「芽依ちゃんと柴崎さんの知り合いの男の子たち、あれ同じ大学?」
「あれはT大生ですよー。こないだの合コンで知り合ったイケメンくん達です」
柊たちの団体さま御一行は、二次会って言ってたし、今ごろこの辺りのカラオケとかで楽しんでいるのだろう。
……あの巨乳の子と抜けたりしてるのかな。
て、また柊のこと考えてたや。関係ない、関係ない。
いくら意気込んでも、勝手に柊のことばかり考えてしまうのが悔しくて、頬を思いっきり抓って頭の中から柊碧音っていう男を追い払う。
バイト先の居酒屋は地下にあるので、階段を登って地上に出ると、先を歩いていた芽依が突然立ち止まった。
階段で止まられるの、迷惑なんですけどー?
「……あれ、柊くんじゃない?」
「え?」
視線の先にあるのは、ちょうど、雑居ビルとビルの間にある喫煙所。その中にいる一人の男性。
「おつー」
気怠い雰囲気を纏う柊は、気怠い挨拶を告げると、気怠そうに煙草を押し潰した。
「どうしたの?忘れ物?」
「そうそう、忘れ物」
忘れ物、無かったけどなあ……?
バッシングしていた時の様子を思い浮かべていると、柊はポケットからスマホを取り出して、あたしに向かってそれを差し出してくる。
「こないだ、連絡先聞くの忘れてた」
連絡……?
唐突に、柊はあの夜の続きと錯覚するようなことを言うから「……は?」と間抜けに返事をする。
呆然とするあたしよりも反応をみせたのは、芽依の方だった。
「え!やっぱりそーゆーこと!?」
だから、あたしの時間が進むのは意外に早くって。
「ち、ちがう!断固違う!柊は高校の同級生なの!」
「まじで?合コンの時は知らないって言ってたじゃん」
「や、同級生って言うと、合コンがクラス会みたいになるし、気まずくなるかなって思って」
「気にしなくてよかったのに〜……。あ、廣瀬さん奢ってくれるんですよね!二人で飲み行きましょ〜?」
「ハイ、喜んで〜!」
どうやら気を遣ってくれたらしい、勝手に行き先を決めた芽依と廣瀬さんの二人は、夜の街を行き交う人の群れの中に紛れてしまった。