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「司先生は私んだよ!」
「俺の、明浦路先生だ」
「司は僕のだよ」
「あの……皆さん?」
休日のいのりの教室と、今日は理凰もいる。そして何故か夜鷹純。
「ね!司先生!初めての生徒、私ですもんね!」
「俺が最初に3回転のコンビネーション跳べたから、明浦路先生は俺のだ」
「司の憧れは僕だよ?だから司は僕のだ」
俺は誰のものでもないんだが。
「あの!引っ張らないでください!」
「嫌です!(だ)」
いのりは右足に抱きつき、理凰は左足に抱きつき、夜鷹は後ろから抱きついている。
この状況に突っ込んでくれる人(瞳)は不在である。
はっきり言って動けない。
諦めて気が済むまで好きにさせようと放っていると、3人が自慢話をし始めた。
「私は司先生の最初の生徒なんだよ!司先生といちばん一緒にいるのは私!」
「俺は明浦路先生に教えてもらってる時に3回転成功したし、明浦路先生の生徒の中で一番最初に3回転のコンビネーションとんだの俺だよ」
「司は僕に憧れてスケートを始めたんだよ。それに、一緒に住んで…」
「夜鷹さん!!」
司は首を左右に必死に振った。
そう。2人は同棲しているが、周りには隠しているのだ。司過激派が暴れ出すので。(どこぞの2人。)
「……それに、夜一緒にリンクで練習してるし。慎一郎くんもいるけど」
「「はあ!?」」
「何それ羨ましい!夜鷹さん変わってください!」
「無理」
「親父ずるい!!」
「あの……そろそろ離してくれると嬉しいんですけど…」
「司は黙ってて」
「はい……」
耳元で言われると反論など出来ない。
「俺は、明浦路先生の腹筋を見た事がある!」
「はあ?」
ドヤ顔の理凰。絶対零度の空気をまとう夜鷹。驚愕するいのり。カオスである。
「ええ!?なんで!?いつ!?」
「夏の合宿の時、風呂が一緒だった」
「私も司先生の腹筋みたい!」
「僕は見たことあるよ」
「なに!?俺だけの特権だと思ってたのに……!」
「なんで!?いつですか!」
「何回もあるよ」
「「ああああああああぁぁぁ!」」
「なんで、どうして……!」
「羨ましい……!」
いのりと理凰は地面に突っ伏した。
夜鷹はその間も司をバックハグしていた。そして司は顔を赤くしていた。腹筋を見た事があるというのは、きっとベッドの上でのことだろう。
「夜鷹さん!勘弁してください!」
「別にいいでしょ。事実なんだから」
「そうじゃなくて……!」
こんなの拷問と一緒だ!
いのりと理凰が復活し、再び自慢話を始めた。
「私は初めて曲かけの時、一緒に司先生と滑った!」
「俺の曲で一度踊ってくれた」
「僕のスケーティングを真似してる」
「ぐっ……!」
「強い……強すぎる……!」
夜鷹の一手が毎回強い。いのりと理凰は太刀打ちできない。
司は切実に祈っていた。
誰か、この状況を突っ込んでくれ!
そんな望みも虚しく、自慢話もとい謎の戦は続く。
「私は司先生にお姫様抱っこしてもらったことある!1級の大会の時に!」
#関係者以外立ち入り禁止
「俺も夏合宿の時に肩に担がれたことある!」
「一緒に寝たことある」
「なんでだよ!(ですか!)」
「夜鷹さんなんでそんなにカードが強いんですか!」
「このクソジジイ!この……!クソ羨ましい!」
「だって付き合ってるから」
「「え……?」」
いのりと理凰の思考は停止した。そして司の情緒はめちゃくちゃになっていた。
「わああああ!!夜鷹さん!!何言ってくれてるんですか!、」
「付き合って、る?」
「このジジイと、俺の明浦路先生が……?」
「お前のじゃないよ。司は僕のだ」
「追い討ちかけんなああ!」
司の悲痛な叫びにも夜鷹は反応しない。
「司先生……私の司先生……夜鷹さんに取られた……」
「司は君のになったことないでしょ」
「ガハッ」
「いのりさーーん!」
「こいつ、息してない!ショックが大きかったんだ!」
「どうしたの、その子」
「お前のせいだよクソジジイ!」
「僕は事実を言っただけだよ」
「それがダメなんですよ!!」
「?」
夜鷹純はどこまでも自分本位な人間だった。
その後瞳が来てこの惨状に「何があったの!?」と悲鳴をあげた。
いのりと理凰はこの日のスケートの練習は身が入らず、今までで1番転けたという。
1週間後。
いのりと理凰とそして何故かまた夜鷹純が喧嘩していた。
これまた意味のわからないことにスケートリンクの円卓を3人(+司)で囲んで。
「夜鷹さん!私の司先生返してください!」
「クソジジイ!俺の明浦路先生を返せ」
「君たちのじゃないし、返す義理もない」
「もう黙って!?」
「司先生は静かにしててください!」
「はい……」
教え子に逆らえない男。それが明浦路司という男である。
「私が1番司先生のこと好きです!」
「俺の方が好きだね!」
「司は僕のことが1番好きだよ」
「なんでそんなこと言い切れるんですか!」
「恋人だから」
「そういえばそうだった……!」
「お前、忘れてたのか?」
「ショックが大きすぎて脳が勝手に補正したみたい……」
「俺もできることならそうしたいよ」
普段司のことで争っているふたりが、強力な敵を前に分かち合った瞬間だった。
「世界で1番嫌いな奴が、1番好きな先生と恋人なんて、お前に俺の気持ちがわかるか!クソジジイ!」
ほぼ八つ当たりである。
「分からないけど、好き同士なんだから何も問題ないでしょ」
「くっ……!めっちゃ腹立つ!」
「司先生、私の司先生……」
「だから、僕のだよ」
「あの!わかったので!そろそろ練習再開しましょ!?」
「明浦路先生は静かにしててください!この勝負に決着つくまで!」
「あなた達、いい加減にしなさい!」
「「「!!」」」
瞳がついに切れた。見守っていた瞳も、さすがに堪忍袋の緒が切れたようだ。いのりと理凰はリンクに向かい、夜鷹は出口に向かった。
「瞳さん……。ありがとうございます……」
「司くん。あなたも、もう少し恋人の手綱、握っててちょうだい」
「はい……すみません」
「さあみんな!練習再開するわよ!」
今回怒られたから3人は懲りたと思われた。だが。
1ヶ月後。
「司先生は私んだよ!」
「俺の、明浦路先生だ」
「司は僕のだよ」
デジャブ。
司脳の彼らは、1ヶ月もあれば怒られたことも忘れてしまうらしい。
瞳は頭を抱えた。
ツッコミ役は、誰よりも苦労人なのだ。
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