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聖次
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雫
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雨の匂いがする日だった。
空はどんよりしていて、今にも泣き出しそうで。
まるで、私の気持ちをそのまま映してるみたいだった。
「今日、部活休み?」
後ろから声がして、振り返る。
そこにいたのは、ずっと隣にいたはずの人。
「うん。そっちは?」
「俺も。珍しく一緒だな」
そう言って笑う顔は、いつもと同じなのに。
どうしてか、もうすぐ見られなくなる気がして、胸がぎゅっと締めつけられた。
「ねえ」
気づいたら、呼び止めていた。
「なに?」
少し首を傾げる仕草。何度も見てきたはずなのに、今日はやけに鮮明に焼き付く。
「もしさ」
言葉が詰まる。
言いたいことは、ずっと前から決まってたのに。
「もし、離れ離れになったら…どうする?」
自分でもずるい聞き方だと思った。
本当は、“離れたくない”って言いたいのに。
君は少しだけ考えてから、空を見上げた。
ぽつり、と雨が落ちる。
「まあ、連絡は取るんじゃない?」
軽い口調。
でも、それが逆にリアルで、胸に刺さる。
「あとは…たまに会えたらいいよな」
その“たまに”が、やけに遠く感じた。
「そっか」
それしか言えなかった。
本当は、もっと近くにいたいのに。
“たまに”なんかじゃなくて、毎日がいいのに。
雨は少しずつ強くなっていく。
屋根のあるバス停に逃げ込むと、隣に君が立った。
近い。けど、触れられない距離。
「濡れてる」
君が言って、そっとハンカチを差し出してきた。
「ありがとう」
受け取ると、少しだけ手が触れた。
その一瞬が、やけに長く感じる。
「あのさ」
今しかないと思った。
このまま何も言わなかったら、きっと後悔する。
「私——」
でも、その先が出てこない。
怖かった。
関係が変わるのが。
今のままじゃいられなくなるのが。
沈黙が落ちる。
雨の音だけが響く。
そのとき、君が小さく笑った。
「無理して言わなくていいよ」
優しい声だった。
優しすぎて、逆に苦しかった。
「でもさ」
君は少しだけ真剣な顔になる。
「俺は、離れても忘れないよ」
その言葉に、胸の奥がじんわりと熱くなる。
「だから」
一瞬、目が合う。
「ちゃんと伝えたいなら、逃げんなよ」
不器用で、でもまっすぐな言い方。
ずるい。
そんなの、言えるに決まってるじゃん。
涙が出そうになるのをこらえて、息を吸う。
「——好きだよ」
やっと言えた。
雨の音に紛れそうなくらい小さな声だったけど、確かに届いた。
君は少しだけ驚いて、それからふっと笑った。
「やっと言った」
「え…?」
「ずっと待ってた」
その一言で、全部報われた気がした。
雨はまだ降っているのに、世界が少しだけ明るく見えた。
コメント
2件

何回も、♡を押してしまいました、、笑 やっぱり、ノエルさんは、情景を想像させる文章を書くのが上手だと思いました!いつも短い文章なのに、、、不思議と長く感じました。(矛盾) 逆に、その短い文章が、物語を語ってるんじゃないかと、感じました。! またまた、神作でした!面白かったです!