テラーノベル
アプリでサクサク楽しめる
「はっ!? ちょっ、なんでここに!? ここ、僕の家ですよ!?」
「知ってるよ。ピンポン鳴らしたのに出てこねぇし、鍵は開いてるし、中から話し声がするから挨拶しに来たんだ。お前、防犯意識甘いんじゃねぇの?」
「……っ」
鍵を掛け忘れたのは確かに自分だが、勝手に入ってくるのはどうなんだろう。
「大樹、勝手に人の家に上がらないでください」
瑞樹が眉間に深いシワを刻み、あからさまに不機嫌な声を出す。
「俺はちゃんと挨拶して入ったぞ。つーか! お前、誰のおかげであいつら始末できたと思ってるんだ」
「それは感謝してます。だから、もう帰ってください」
「人遣い荒すぎだろ。別にいいじゃねぇか。俺だって朝倉奏に会いたいんだよ。な? いいだろ?」
大樹はどっかりと柊吾の右隣に腰を下ろし、まったく帰る気配を見せない。
柊吾は瑞樹と大樹に挟まれる形になり、二人の間でひたすら視線を彷徨わせることしかできなかった。
(……なんで、こうなったんだ)
ようやく瑞樹と思いを伝え合ったのに、なんなんだろう。この空気……。
なんとなく気まずくて、自分の部屋なのに落ち着かない。
「大樹」
「なんだよ」
「用事はもう済んだんでしょう? 早く帰ってください」
「そう邪険にすんなって。いいじゃねぇか、減るもんじゃなし」
「減ります。柊吾さんの視界に貴方を入れたくないです」
「ひでぇなぁ。あぁ、あれか? コイツが俺に靡くんじゃないかって心配してんのか」
「わわっ」
グイっと肩を引き寄せられて、体勢が崩れる。
ふわりと男らしい香りが鼻腔を掠め、ドキッとする。ニヤニヤと笑いながら、大樹はわざとらしく柊吾の顔を覗き込む。
瑞樹がすかさずその視界を遮るように、柊吾との間へ割り込んだ。
「触らないでください! 柊吾さんは俺のものです! 誰にも渡しません!」
再び反対側へと引っ張られ、守るようにしっかりと抱きしめられた。
「うわ、独占欲すご。お前、そんなキャラだったっけ?」
「兄さんには関係ありません」
火花を散らすような二人のやり取りに、柊吾は乾いた笑いを浮かべることしかできない。じっとりと背中に汗が滲んでいた。
「なぁ朝倉、コイツ腹黒だから気を付けたほうがいいぞ」
大樹が呆れたように鼻で笑い、柊吾に向かってポンと軽く肩を叩く。
「柊吾さん! 大樹の話なんて聞かなくていいです!」
「はぁ? たくっ、頑張って体張ってお前を大学に行かせてやったのにひでぇ言われようだな」
「ちょっと! その話は今、関係ないでしょう!?」
ムキになって言い返す瑞樹と、面白がりながら煽る大樹。実の兄弟らしく遠慮なく口喧嘩を始める二人を見ていたら、胸の中にあった緊迫感がふっと毒気を抜かれていく。
「……ふふっ」
思わず口元から小さな笑いが漏れた。
「二人とも、仲が良いんですね」
「「よくない!!」」
息ピッタリにハモって反論する二人。
勝手に色々裏で動いていたことや不快だったこと、本当は瑞樹をちゃんとお説教して怒らなきゃいけないはずなのに。目の前で真剣に火花を散らす二人を見ていると、なんだかもう、どうでもいいような気がしてきてしまう。
コメント
2件
なんて微笑ましい兄弟喧嘩♡ 第一印象が怖いと思っていた大樹でしたが意外と可愛い一面もあるだなんて…♡
あはっ、大樹のズカズカ入ってくる感じと瑞樹の過保護な独占欲の温度差が面白かったです😂 それでいて最後に柊吾が「仲良いんですね」って言ったら息ピッタリに「よくない!!」ってハモるところ、思わず笑っちゃいました🤍 重たい展開の後にこういう兄弟の軽い掛け合いがあると、ほっとしますね。かんなさん、いつも絶妙なバランスでキャラを動かすの上手すぎます…!
#三角関係
霞花怜
1,066
#イラスト部屋
寿命㌫(主) 🔮🖤ᩚ
695