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「……ここは、どこだ?」
視界いっぱいに広がるネオン。
道の脇にはカフェのロゴ——緑の人魚が微笑んでいる。
スターバックス。
だが、そこに映る光景は、どこか現実離れしていた。
看板はホログラムで浮かび上がり、空を見上げれば、空間全体がピクセルで揺らめいている。
佐藤藜(さとう・れい)は、TikTok社の一社員だ。
いつも通りオフィスで動画アルゴリズムの調整をしていたはずだった。
気がつけば、机の上のマグカップがぐにゃりと歪み、
画面に表示された「Google Play」のロゴが爆発的に拡大し——
次の瞬間、彼はこの見知らぬ街に立っていた。
「……夢じゃない、よな?」
足元のアスファルトを踏む音が、妙にリアルだ。
背後のスターバックスからは、香ばしい豆の香りが漂う。
だが、その香りの奥に、鉄とオゾンのような電子臭が混じっている。
佐藤は歩き出した。
スマホを取り出すが、画面は真っ白。
ただ一文だけが表示されている。
《ようこそ、Google Playの世界へ。》
喉が鳴った。
その瞬間——
「ようやく会えたな、TikTokの人間。」
低く、落ち着いた声。
振り向いた先に立っていたのは、スーツを纏う一人の男。
黒縁の眼鏡、整った髪、穏やかな微笑。
どこかで見たことのある顔。
——スンダー・ピチャイ。
Google社のCEO。
「えっ……ピチャイ、さん……? どうしてここに——」
彼は静かに歩み寄り、藜の肩に手を置いた。
そして、目を細めてこう言い残した。
「私は君を、必ず地獄へ送ると決めている。」
次の瞬間、彼の姿はノイズと共に霧散した。
残されたのは、電子の残響音と、心臓の鼓動だけ。
佐藤藜は立ち尽くした。
Googleの世界——
ここは、誰かの手によって設計された“仮想の神域”。
だが、なぜTikTokの社員である自分が、この世界に放り込まれたのか。