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コメント
1件
うわ……これは重い展開だね。結翔がやっと雫さんを見つけた場所がまさか瓶の中だったなんて。彼の「ありがとうって言えてねぇ」って台詞がすごく胸に刺さるよ。あの日々の温かい記憶が、今の状況と対比になって余計に辛い。 それにしても神楽坂仁、この登場の仕方……気配がまるでなかったって描写が不気味すぎる。笑顔で「俺の大切なもの」って言い放つ狂気、ちゃんと伝わってきた。やっぱりこの作品、伏線の貼り方が丁寧だなあ。ここからどうなるのか、続きが気になって仕方ないよ。
第21話 「真実の行方」
───結翔side
宙と名乗った女は、何も言わずに暗い山道を歩いていた。
ザッ……
ザッ……
木々の隙間から、月明かりが僅かに差し込んでいる。
結翔「…………」
俺は、その小さな背中を追っていた。
雫さんの行方が分かる。
そう言われたからだ。
だから、絶対に帰るつもりはなかった。
ザッ……
ザッ……
けれど――
結翔「…………なぁ」
宙は振り返らない。
結翔「……どこまで行くつもりなんだよ」
宙「あともう少しで着くさ」
結翔「……少しって、どれくらいだよ」
宙「貴方が思っているよりは近い」
結翔「…………」
結翔「それ答えになってねーだろ!」
宙「答えたつもり」
結翔「やっぱちゃんと答えてねーじゃんかよ…」
宙「…………」
また歩き始める。
ザッ……
ザッ……
結翔「…………」
結翔「……お前さ」
宙「なに?」
結翔「さっきから妙に落ち着いてねぇか?」
宙「そう見える?」
結翔「見えるっつーか……」
結翔「普通、こんな時間にこんな山奥を歩いてたら、もうちょっと警戒するだろ」
宙「私は慣れてるから」
結翔「……そういう問題か?」
宙「それに」
宙は月を見上げる。
宙「夜の山は、街よりずっと静かだよ」
結翔「…………」
宙「人の声も、車の音もない」
宙「聞こえるのは風と木々の音だけ」
結翔「……自然の音が好きなのな」
宙「自然な音って落ち着いてるから」
結翔「こんなところに住んでる奴…そういねーよ…」
宙「少なからず私は自然好きの1人なの」
結翔「……(俺には無理だな……)」
ザッ……
しばらく歩く。
そして――
宙の足が止まった。
結翔「……っ」
結翔は危うくぶつかりそうになり、慌てて足を止める。
結翔「おい……急に止まんなよ……!」
宙「着いた」
結翔「…………」
宙の視線の先。
そこには――
山奥にぽつんと建つ、小さな小屋があった。
結翔「ここで雫さんのことが分かんのか?」
一ノ瀬ルナ
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#日記
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フユめん
380
結翔は小屋を見回す。
結翔「……ただの小屋にしか見えねぇけど」
宙「私の小屋だよ」
結翔「…………は?」
宙「ここで暮らしてる」
結翔「お前、マジでこんなところに住んでんのかよ……」
宙「山はいいよ」
結翔「何がだよ」
宙「静かだから」
結翔「…………」
宙「それに、お月さんがよく見える」
結翔「……月、好きなのか?」
宙「好きとか嫌いとかじゃないよ」
宙「ずっとそこにあるから見てるだけ」
結翔「…………」
やっぱり。
こいつの考えてることは分からない。
宙「入って」
ギィ……
古びた扉が開く。
結翔「……お邪魔します」
小屋の中へ入る。
宙「本題はここから」
結翔「…………」
結翔「やっとかよ」
結翔「じゃあ教えてくれ」
結翔「雫さんはどこにいる?」
宙「…………」
結翔「……おい」
宙「言葉だけじゃ、貴方は信じない」
結翔「…………何?」
宙「だから見せる」
結翔「見せるって……」
宙「お医者さんの行方」
結翔「…………!」
結翔「お前、本当に知ってんのか!?」
宙「知ってる」
結翔「だったら早く言えよ!!」
宙「…………」
結翔「俺、学校終わってからずっと探してんだぞ……!」
結翔「病院にも行った!患者の人たちにも聞いた!」
結翔「でも誰も雫さんがどこに行ったのか知らねぇって……!」
結翔「連絡だってつかねぇし……!」
結翔「だから俺は……!」
言葉が詰まる。
結翔「……絶対見つけるって言ったんだ」
宙「…………」
結翔「だから……」
結翔「知ってるなら、頼むから教えてくれ……」
宙「…………」
宙は、しばらく結翔を見つめていた。
そして。
宙「真実を知りたい?」
結翔「…………」
結翔「……当たり前だろ」
宙「本当に?」
結翔「何回聞くんだよ……!」
結翔「知りたいに決まってんだろ!!」
結翔「知らないまま帰れるわけねぇだろ……!」
宙「…………」
結翔「雫さんがどこにいるのか」
結翔「何があったのか」
結翔「全部……知りたい」
宙「…………」
宙は、結翔から視線を外す。
宙「なら、見に行けばいい」
結翔「……は?」
宙「貴方の目で」
結翔「…………」
宙「口で聞くより、その方が早い」
結翔「……どうやって?」
宙「少し眠ってもらう」
結翔「…………は?」
宙「私の術を使う」
結翔「術って……」
宙「ちょっとした催眠術」
結翔「いや待て待て!!」
結翔「なんで急に催眠術なんだよ!?」
宙「見た方が早いから」
結翔「…………」
宙「そんな怪しいものじゃないよ明日になればここへ戻ってこれる」
結翔「……今日初めましてヤツの言葉信じられねーよ…」
結翔「……本当に、雫さんのところに行けるんだな?」
宙「私が嘘をついていると思う?」
結翔「…………」
結翔「……分かった」
結翔は拳を握る。
結翔「やってくれ」
結翔「俺は……絶対見つける」
宙「…………」
宙は結翔を見つめる。
宙「じゃあ、行ってらっしゃい」
結翔「…………」
宙「貴方が探している人に――」
宙「会えるといいね」
――――視界が、暗転した。
────────────
結翔「…………」
目を開ける。
結翔「…………ここは?」
見覚えのない場所だった。
薄暗い。
古びた建物。
床には物が散らばっている。
結翔「……ゴミとか散らかってるし……」
結翔「ちゃんと整備してねぇのか……?」
一歩。
ギシ……
結翔「…………」
結翔「つーか……ここって、もう使われない建物じゃねーか……」
その瞬間。
結翔「…………ッ」
異臭。
鼻を刺すような、耐え難い臭い。
結翔「ヴッ……!!」
反射的に鼻と口を覆う。
結翔「な、なんだ……この臭い……ッ」
足が止まりそうになる。
それでも。
結翔「……くそ……っ」
鼻を押さえながら進む。
結翔「……こんなところで……倒れてられっか……!」
雫さんを探す。
そのためだけに。
そして――
廊下の先。
一つの部屋があった。
ギィ……
扉を開ける。
結翔「…………」
そこには。
大量の物が飾られていた。
瓶。
箱。
棚。
そして――
人間が生きていた証。
結翔「…………なんだよ……これ」
視線が部屋を彷徨う。
その奥。
ひときわ大きな瓶があった。
結翔「…………」
その中に――
一人の女性。
結翔「…………!」
胸が跳ねる。
結翔「……雫……さん?」
確信なんてなかった。
違うかもしれない。
でも。
身体が勝手に動いた。
ダッ!!
結翔「雫さん……!!」
走る。
必死に。
何度も名前を呼びながら。
結翔「雫さん!!」
瓶の前へ駆け寄る。
結翔「…………」
顔を見る。
そして――
結翔「…………」
全身から力が抜けた。
そこにいたのは。
間違いなく。
雫だった。
結翔「…………雫……さん?」
返事はない。
結翔「…………」
結翔「なぁ……」
震える声。
結翔「……起きてくれよ」
返事はない。
結翔「…………」
結翔「……やっと見つけたのに…ッ」
結翔「俺…探したんだぞ……!」
声が大きくなる。
結翔「病院にも行った……!」
結翔「患者の人たちにも聞いた……!」
結翔「連絡だって……何回もッ…!」
けれど。
何も返ってこない。
結翔「…………」
結翔「……なんでッ…」
目の前にいる。
確かに、雫さんなのに。
いつもみたいに笑わない。
いつもみたいに――
「結翔さん」
そう呼んでくれない。
結翔「…………」
結翔「……なぁ」
声が震える。
結翔「……あぁ、きっと夢だよな…そうだよな…」
答えはない。
結翔「…………」
結翔「夢だって……言ってくれよ…ッ…」
指先が震える。
結翔「……俺……」
結翔「まだ……ちゃんと……」
喉が詰まる。
結翔「……ありがとうって……言えてねぇだろッ……」
あの日。
自分の苦しみを救ってくれた人。
何気ない言葉で、自分を支えてくれた人。
またいつでも来てください。
そう言ってくれた人。
結翔「…………」
結翔「……もう……」
声が掠れる。
結翔「もう、話せねぇのかよ……?」
結翔「……なぁ……雫さん……」
結翔「返事してくれよ……」
結翔「頼むから…ッ…」
それでも。
返事はなかった。
結翔「…………」
その瞬間。
結翔の中で。
何かが、音を立てて崩れた。
悲しい。
苦しい。
悔しい。
信じたくない。
認めたくない。
全部が一度に押し寄せてくる。
結翔「…………っ」
拳を握る。
結翔「……俺……」
結翔「……いつやられたんだ…?…いつかは分からねぇ…でも雫さんは苦しんでたんだ……ッ…俺は…呑気に過ごしていた日に……」
その時――
コツ。
結翔「…………!」
背後。
足音。
結翔「……っ!?」
コツ……
結翔は振り返る。
だが――
そこに立っていた人物を見た瞬間。
結翔の目が見開かれる。
結翔「…………!」
な、なんだ……こいつ……!
気配が――
なかった。
結翔「(いつから……!?)」
結翔「(こいつ……俺の後ろにいたのか……!?)」
結翔「(気配がしなかった……!!)」
そして。
??「あれ?」
場違いなほど明るい声。
??「お客さんかな?」
結翔「…………」
男は、笑っていた。
神楽坂 仁。
仁「こんなところまで来るなんて」
仁「随分物好きなお客さんだねぇ」
結翔「…………お前……」
仁は結翔を見る。
そして。
その視線が、雫へ移る。
仁「…………あぁ」
仁「見つけちゃったんだ」
結翔「…………」
仁「そこにいる子もだけど……ここにあるモノ全て」
仁「俺の大切なものなんだよ」
結翔「…………大切……?」
仁「そう」
仁は笑う。
仁「俺が見つけた」
仁「俺が救ってあげた」
仁「だから――」
一歩。
仁が近づく。
結翔「…………ッ」
仁「勝手に触られると困るんだよね」
結翔「…………」
仁「ここにあるものを汚されちゃったら穢れちゃうから」
結翔「…………ッ」
仁は笑顔のまま、首を傾げる。
仁「ねぇ」
仁「君は――」
仁「何をしに来たのかな?」