テラーノベル
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ご縁があってオリバー先生と参戦した野外ライブ。梅雨のジメジメとした空気感の中でもライブは大盛況で、ブースごとに移動が激しく何度となく逸れそうになった。
人の波の交差点。
平均より身長があるといっても大した差ではない。人に押されたらすぐに転びそうになる。
(……少しだけだから大丈夫だと思いましたけど、踵が高い靴を履いてくるんじゃなかったですね。)
「うわっ、」
「おっと、」
ほんの少し周囲への注意が疎かになり人の波に押されてその場に倒れそうになった刹那、オリバー先生が私の体を優しく且つしっかりと支えてくれた。
「アキラ、大丈夫かい?」
「すみ、ません。」
「気にしなくて良いよ。ん〜でも逸れたらあれだし、手でも繋いどくか。」
「え、でも、」
「大丈夫、大丈夫。人多いしバレないって。」
私の不安も懸念も全て包み込んでくれるような笑顔で、吹き飛ばしてくれるような声音で。
(あぁ私、この人のこと)
なんて思ってはいけないことなのに。
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