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もしも上杉謙信が天下を取ったら

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もしも上杉謙信が天下を取ったら

第3話 - 第3話　挟撃

36

2024年12月07日

#歴史

#ifストーリー

#戦国時代

伊琉夏

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伊琉夏

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京の空が赤く染まり、戦の匂いが空気を支配していた。織田軍は後退を余儀なくされた。だが、義昭の勝利を信じることはできなかった。休戦後、信長の軍は三重に向かって撤退を開始した。

その時、戦局を一変させるべく、突如として現れたのは、武田信玄率いる武田軍だった。

「信長よ、貴様の背後にまで牙を突き立ててやる。」

信玄の目は、荒れ狂う嵐のように冷徹であり、戦を終わらせるその決意に満ちていた。武田軍は、徳川の軍勢を破り、愛知を越えて三重に迫るまでに至った。その一撃で、信長の腹に深く爪を立てることを決意していた。

信玄は、戦の場においては一切の迷いを見せなかった。彼の眼差しの先に映るのは、信長の撤退する背中、そしてその先に控える未来だった。甲斐から遠く離れた三重の地で、武田軍は静かに、しかし確実にその力を示していた。

「信玄公、今こそ信長を討つ時です。」

部下が信玄に声をかける。その声には、どこか興奮がこもっている。信玄は無言で頷き、手綱を握り直した。

信長が撤退を始めた瞬間、彼の周囲はもう異様な雰囲気に包まれていた。自軍の兵士たちが慌ただしく動き始めたその背後、突如として現れたのは、静かで速い武田軍だった。彼らは、まるで時間を止めたかのように、ただひたすらに進む。鉄の馬が駆け抜け、槍が空を切り、足元から伝わる地鳴りが恐怖を引き起こす。

そして、信長の軍が三重へと進んだその道を、武田軍が完全に塞ぐ。信長は、その事実を受け入れた時にようやく感じた—背後から迫る圧力を。兵たちが戦場で奮闘する中、信長は冷静に状況を見極めていた。

「信長は、もう後退を余儀なくされるだろう。」

それが、信玄の狙いだった。信玄は、戦いの中で冷徹な計算をする。その心には、戦の枷を振りほどく力が宿っていた。

「信長を追い詰めるのは、戦場における最大の楽しみだ。」

信玄が手綱を引くと、一斉にその指示に従う。無駄な言葉は必要なかった。武田軍は、戦場において一糸乱れぬ動きで知られていた。その彼らの動きは、まるで精密な時計の歯車のようにぴったりと合い、一体となって信長の軍を包囲していく。

信長の撤退路は、すでに封じられていた。両側から挟み撃ちされるその瞬間、信長の心にもまた、冷徹な決断が下された。彼は武田軍に対して一番の力を振り絞ることを決意した。しかし、それでも信玄の軍は圧倒的だった。

武田軍の音は、雷鳴のように響き渡り、信長の軍に迫る。信長の戦闘指揮は素晴らしく、その冷静な判断力は一度も揺らぐことはなかったが、それでも限界がある。

「信長を追い詰める。ここから逃げられる者は一人もいない。」

信玄は言った。彼の言葉は、戦の重圧をさらに深く刻むように、進軍する武田軍の中に響き渡った。

その時が来た。信長の前に立ち塞がったのは猛者たち。眼には、一つの目的が宿っていた。それは、信長を打ち破ること。

信玄のその一声が、まるで全てを決定づけるかのように響いた。

「今こそ、信長を討ち取るのだ！」

武田軍はその瞬間、全力を振り絞り、信長の軍を挟み撃ちにした。戦場の空気が、まるでその瞬間を迎えるために渦巻いていたかのように重く、そして激しく変化した。