テラーノベル
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余とイリスの居住区画にて、イリスが真の姿を見せようとしている。
彼女の髪が漆黒に染まり、瞳が紅く染まる。
そして背中からは黒い翼が生えてきた。
「な、なんだこれは!?」
「ちょっと、これってまさか……!!」
シンカとフレアが驚愕の表情を浮かべる。
イリスの変身はまだ続いている。
どんどん魔力が膨れ上がっていく。
バリバリッ!
彼女の周りに雷がほとばしる。
溢れ出る魔力により、彼女の得意魔法である雷が半暴走しているのだ。
「ひいっ!」
シンカが腰を抜かして尻餅をつく。
「ば、化け物……!!!」
フレアが恐怖のあまり、震え声でそう叫ぶ。
「そこまでだ、イリスよ。魔力を抑えよ」
余はそう声をかける。
「はい。時間がかかって申し訳ありませんでした。まだこの変化に慣れていないのです……」
「十分だ。おいおい慣れていけ」
「はい、ディノス陛下」
イリスがそう返事をする。
「な、なんでディノス君は平然としているんだっ!?」
「と、とんでもない魔力の重圧だわ……。私たちとは生物としての格が違う……」
シンカとフレアがガタガタと身を震わせている。
「さあ、2人とも落ち着け。怖がることはない」
余は優しく語りかける。
「これが落ち着いていられるか!! いったい何者なんだよ、君たちは!!」
シンカがそう怒鳴りつけてくる。
「イリスの姿を改めて見てみよ。華麗な赤い瞳に、黒き髪と翼……。聞いたことはないか?」
余はそう問いかける。
2人は顔を見合わせる。
「……まさか」
「ええ。そのまさかです」
イリスが微笑む。
「レッドアイズ・ブラックドラゴン。それがわたしの種族名です」
「「…………」」
余の言葉を聞いて、2人が固まる。
「どうした? 固まってしまったぞ」
「仕方ありません。言葉を失うほどの衝撃だったのでしょう」
イリスが苦笑する。
「そういうことだ。まぁ、仲良くやっていこうではないか」
余はそう言う。
「え、えっと、その前に1つだけ聞かせてくれないか?」
シンカが恐る恐る手を挙げる。
「なんだ? 言ってみろ」
「僕たち、これからどうなるのかな? 命とか取られないよね? ねえ、フレアさん……」
「そ、そうね……。なにせ、あの伝説のドラゴンを見てしまったわけだし……」
怯えた様子を見せる2人。
「安心しろ。お前たちを害するつもりはない。イリスがこの姿を見せたのは、お前たちを信用したからだ。そうだったな? イリスよ」
余はそう言ってイリスに目配せをした。
「ええ。その通りです。わたしは、あなた方に危害を加えるつもりはありません」
「ほっ……」
「よかった……」
シンカとフレアが胸を撫で下ろす。
「ただし、ディノス陛下の命令があった場合には、話は別になります」
イリスが釘をさす。
「うむ。それは当然だな」
「はい」
イリスがうなずく。
「……ええっと。ディノス君の正体も気になるな……」
「そうね。古代種族のイリスを従えるなんてただ者じゃないわ」
シンカとフレアがそんなことを言う。
「ふむ。正体か。どうしても知りたいのであれば、教えてやらぬでもないが……」
余の正体は魔王である。
歴代魔王の中でも、竜種を従えている者など、余ぐらいだろうがな。
「お待ちください。その前に、わたしに考えがあります」
イリスがそう言うと、彼女はシンカとフレアに向かって歩み寄った。
ふむ?
「な、なんだよ? 何を考えているんだ?」
「ちょ、ちょっと怖いんだけど……」
イリスの迫力に気圧されて後ずさりする2人。
「ご心配なく。わたしに敵意はありません」
イリスが笑顔で語りかける。
「「ひいっ!」」
しかし、逆にシンカとフレアの恐怖を煽ってしまったようだ。
「おい、イリスよ。あまり脅かすでない」
「申し訳ありませんでした。つい……癖のようなものなのです」
イリスが謝る。
「脅える必要なんてありませんよ、2人とも……。さあ、わたしの目を見るのです……」
イリスの目が怪しく光り輝く。
彼女の魔眼を発動させたのだ。
余も魔眼は持っているが、また少し違った効力を発揮する。
「「……」」
シンカとフレアは虚ろな表情を浮かべながら、ぼーっとして動かない。
無事に効いたようである。
「これで大丈夫ですね」
イリスが微笑む。
「いいですか? あなたたちは、今晩あそこがうずいて我慢できなくなります」
おい。
なんてことを刷り込んでいるんだ。
「そうなの……? 確かに、何だか急に体が熱くなってきた気がするわ……」
「あはは。僕もそうだね」
シンカとフレアが頬を赤らめている。
これはまずい展開だぞ。
「さらにもう一つ刷り込んでおきましょうか。お二人はディノス陛下から名前を呼ばれると、一気に快感が増していき、やがて絶頂を迎えてしまいます……」
イリスがそう言う。
フレアとシンカはぼんやりとした顔のまま、こくりとうなずく。
「さあ、最後の仕上げです。主の名前を呼びなさい。あなたたちの主は誰なのか、その体にしっかりと刻み込むのです……。そして、その身に溢れる快楽を受け入れ、自ら求めてみせなさい……」
イリスが命令口調で言う。
「ディノス……。私の主様……」
「ディノス君……。僕だけのご主人様……」
2人が余の名を呼ぶ。
「ふむ……。イリスの魔眼の効力は破格だな。優秀な2人をこうもたやすく操るとは」
余は腕組みしながら言う。
「いえ。わたしの魔眼は、万能ではありません。これは、もともとお二方がディノス陛下に惹かれていた影響でしょう」
「なるほど。余のリア充計画はそれなりにうまくいっておったということか」
余が身分を隠して学園に通っていたのは、真の愛を見つけリア充になるためだ。
魔王という身分を明かしたり、財力に物を言わせたり、魔眼で催眠状態に陥れて従えるのは余の本意ではなかったが……。
この状況を少しぐらい利用するのはありか。
催眠を仕込まれたフレアとシンカをどのように誘導していくか、魔王としての余の腕の見せどころである。
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