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#ワンナイトラブ
「……必死ですね」
甘ったるい声が耳元で聞こえると、そこに小さなキスが落ちる。
「っ、なに、なにが」
「俺のこと、好きになんないようにって、必死」
「……か、からかわ、な…っ…」
強引に息を飲んで、それをとめた。
固い舌先が耳朶を舐めると、くちゅ、飛沫の音が鼓膜を震わせる。舌先が私を攻める度に、耳と下腹部と直結したみたいに甘く疼く。
服の上で私を解していた手は裾の隙間から侵入して、お腹をなぞって元いた場所に舞い戻る。
布の隙間に指を入れると、輪郭を撫でるように這い、それをずらして露わにした。もう片方も、同じように誘い出すと片手で簡単に寄せて優しく揉み扱かれる。
服の上からもぞもぞと、私を弄ぶ手の形が浮かび上がって、それが堪らなくいやらしくて目を閉じた。
片手で口を覆い隠して、快楽に耐えようと歯を食いしばると、短い息だけが指の隙間から漏れる。
真っ暗な世界で「舌」とだけ命令みたいに言われ、素直に出すとすぐにそれは吸い取られた。
舌先で口の中を掻き回されると、頭の奥の思考までもがぐるぐるにかき乱される。
「ふ、あ、や、やめてよぉ、」
「あんま、煽んないで下さいね」
「……っ、や、あ、」
「…また距離、置かれたら、たまったもんじゃねぇし」
っ、なんの事、何を、言ってるの。
聞きたいのに、思考が散らばって上手く言葉が出ない。
いつの間にか服は脱がされて、胸と、耳と、首筋の三点を執拗に責められ続ければもう感覚がおかしくなる。胸の先端をきゅっと詰まれると顎が上を向いて、勝手に背中は反り返る。
逃げようとしたら膝の上に乗せられて、背後からがっちりとホールドされて逃げられない。
「ここだっけ」と、指先は身体を滑る。鎖骨、足の付け根、胸の中央、お臍の少し下。私の弱い所を、なんでか常葉くんはもう知っている。
回らない頭で呼吸だけを必死にしていれば、喉の奥が張り付いて、乾いて仕方ない。だけど常葉くんはまた私の口を塞いで濡らして溶かす。
「………そろそろ飽きたんじゃないですか」
「な、にが……」
「寝袋」
「っ、え、」
「……俺の部屋で寝ます?」
部屋って、ここ、常葉くんの家だから
どこも、常葉くんの、部屋じゃ、
脳まで蕩けるような甘い声が耳元で聞こえれば、頭は考えるのを放棄する。
だけど返事を返さずに肩で息をしていると、ピン、と先端を弾かれるので、「ひゃぁ」と、間の抜けた声が勝手に出た。
「このソファー、狭いし、硬いし、ベッドにはなんないし」
それに、と言葉を続けながら、常葉くんの手は私の身体を伝うように下へ落ちる。後ろからそうされているからされるがままの身体が全部が見えて、その都度ぞくぞくと背筋が粟立ち下腹部の奥が震えた。
スカートの裾から股の間に手が入れば、布の上から割れ目に沿うように指を動かされる。たったそれだけでペタリと張り付いてくるから、そこがどうなっているのかすぐに分かった。
「あの日のこと、思い出すかもしれませんよ」
薄い布の上からそれを確認するように撫でて、耳元では更に低く、心地良い声が、私の感覚を麻痺させる。
「ふ、あ、やめて、」
「……何回したと、思いますか?」
「〜っ、だ、だから、からかわないで」
「からかってないですよ、最初から」
「うそ、ばっかり」
「穂波さんがここに来て、俺、嘘なんか1個も言ってませんよ」
「言ってる、嘘ばっかり、」
「そんなの信じてるんですか?」
信じてる……?ということは、嘘の、嘘?どっちが本当なの。
会社でよく見る、天使みたいな笑顔を振り撒く常葉くんと、家で見る、悪魔みたいな言葉を投げつける常葉くん。
どっちが本当の常葉くんなの。
優しいのも、意地悪なのも、
どれが本当の…………。
指先が、滑らかに湿るそこを行き来して、入口を見付けては先端でぐるぐると円を描くように蜜を絡める。
「っあ、や、やだ、や、やめ……」
背後にある肩を掴んで、必死で首を横に振るけれど、それを許してくれるはずも無かった。
「……っ。い、あっ……」
一気に指の全部を押し込まれて、思わず仰け反り、一度、息が詰まった。
少し硬めのクッションは、つま先を上手く沈めないのにしっかりと支えてくれる。
「やっ、あ。ぬ、抜いて、やだ、」
羞恥を厭わない声に紛れて、ある機械音が流れる。テーブルを震わす小刻みな振動。
「…んっ、で、電っ、話、」
「聞こえません」
「と、きわ、くん、」
「早く、はいって言って」
「や、だ、やだ」
「早く」
指先を動かしながら、唇は簡単に私を塞ぐ。
「〜っ、ん、わ、かった、からぁ……」
涙を溜めて必死に頷くと、深く埋まる指先でソコをグリグリと刺激した。
なんで、そこ、
疑問を持つ前に、喉の奥から叫びみたいな短い息が漏れて、与えられる快楽で腰が浮く。
も、だめ…、だ、
溢れた涙が零れようとした時、常葉くんは指を引き抜いた。
「ほんと、従順ですね」
必死で息を整える私の肩に顎を乗せて、常葉くんは意地悪な声で擽る。
「っ、ば、馬鹿にしてるでしょ、年上からかって」
「全然?可愛いですよ」
うそ、ばっかり。
絶対言い慣れてるし、キスも、さっきの、酷く優しい扱い方だってそう。常葉くんは、旺くんより信用ならない。
「でも、あんま可愛くなる必要ないですよ」
「……どうして?」
「変に男寄ってくるでしょ」
男の人?
別に寄ってきてないし、大体、私の結婚願望知っているのは常葉くんなのに。「それが、どうして?」と確認するけれど、常葉くんは返事を返してはくれなかった。
「それより、今日こっちで寝るんですよね」
頷いた事に、少しだけ後悔する。
同じ部屋で寝ようものなら、心が幾つあっても足りはしないだろう。
常葉くんの膝から降りて、自分の服を簡単に着ると、目に力を込めて向き合う。
「それは、寝袋に飽きたら、ですっ」
「は?」
「ま、まだ飽きてないので、寧ろ十分すぎますから、と、常葉くんと一緒には、寝ません」
「……捨てようかな…」
「は?」まさかの言葉に息とともに短い言葉が漏れると、常葉くんは再び私の肩を掴んで引き寄せた。
既に抵抗力の弱い私の唇を、常葉くんははじめから貪るみたいに覆う。
もう、さっきので蕩けてしまっているのに、深く柔らかくなぞられて、吐息も全部、溶けてなくなってしまいそうなのに、熱だけは溶けきれない。
離れると、透明の糸がたらりと垂れて、それすら常葉くんは舐めて、再び唇をかるく覆う。
「とりあえずは言うこと聞きますけど、」
ちゅ、と、消え入りそうなリップノイズを聞かせて離れると、目の前にいるのは男の目をしたその人で
「逃げたら容赦しないですからね」
言葉ひとつで簡単に、私の心は囚われそうになる。
……なんでそんな事を、
…………余裕もない、私に、言うの。
あの日、プライベートも殆ど喋ったのなら、私が頼る人も居ないし、行く宛ても無いこと知っているはずなのに。
「……っ、に、逃げません、よ」
常葉くんは、遊んでるだけだ。
私とは違って、若くて、顔も良くて、育ちも良くて……女の人は選び放題の常葉くんだ。
本気になっちゃダメ。常葉くんは、からかいがいのある良い玩具が手に入って、喜んでるだけ。
30パーセントから先はだめ。
真に受けちゃだめ、これ以上真に受けたら、もう……
引き返せなくなる。
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