テラーノベル
アプリでサクサク楽しめる
2,982
#BL
kaede🍁
52,697
嘔吐表現が含まれます。
(深澤視点)
頭、痛えな……
今日も、倉庫の裏口からの帰宅。
なんか…今日はしつこかったな…
なんとなく、長いだろうなっては覚悟してたけどさ……
昼過ぎに来たはずなのに、もう太陽が沈んでる…
身体中が痛い…
もう、さっきまで何してたかすら曖昧だ。
「……うぅ…」
駄目だ…
めっちゃ気持ち悪い……
その場にうずくまって、立てない…
やばい…頭ん中ぐちゃぐちゃする……
これ、大丈夫なやつ…?
まじで、やばいやつなんじゃ……
『可愛いねぇ…』
『ねぇ、ここ、好きなんでしょ?』
『もっと欲張れよ』
『なぁ、聞いてんのかよ?』
『お前は、俺のものだろ?』
「……う゛えぇ…っ…んんん…んぇ……はぁっ……」
いや、だ……
こんな道端では、吐きたくない……
でも、ここから歩ける気、しない…
「……え?ふっか!?」
後ろから、聞き馴染みのある声が聞こえる。
後ろ、振り返りたいけど……
あ……やばいかも……
「しょ、た……ちょ、……っ…ぇ…ぉねがっ…こっち、見ないで……っう……ぅえっ……」
やばい、やばいやばいやばいやばいやばいやばい………
後ろにいるのは翔太だ。
駄目だ、翔太の前で吐きたくない。
お願い、こっち来ないで。
俺のこと見ないで……!!!!
「おい、ふっか!どうしたんだよ?!」
翔太が、近づいてきてる…!
やだ、や、なのに………
「……気持ち、悪いのか?吐きそう?」
「……っ、んぅ……ぅ……っ」
「ほら、俺が隠すから……え、っと……袋!!ほら、これに出せよ!」
翔太が差し出してきたのは、コンビニのビニール袋。
周りには誰もいないし、翔太も、俺のこと隠してくれてる…
でも、翔太の前で………
「俺も、見ないからさ…しんどいんだろ?ほら、早く気持ち悪いのだせよ。」
「………ぅ…あ……ゲホッうえぇぇ…カハッう゛え゛…」
「ん、ほら、大丈夫だからさ…」
結局、我慢できなくなった俺は、翔太に背中をさすられながら我慢してたものを吐き出した。
「落ち着いた?」
「………ん……ほんと、ごめん………」
吐き終わった後、確かに少しはスッキリしたと思う。
でも……同時に翔太への申し訳なさと、隠しきれなかった、バレたかもしれない焦りが襲ってくる。
もう、隠しきれない…?
みんなに、言わないわけないよね…
どうしよう…なんて、誤魔化せば……
………あ…そう、だ……
「……なぁ、ふっか。お前、最近…」
翔太に、絶対何があったか聞かれる。
俺は翔太の心配の声を遮る。
「いやぁ…最近外暑くなってきたじゃん?それに、俺暑いの苦手なの忘れててさ〜!わら、そんでせっかくのオフだから、最近仕事いっぱいで疲れちゃったし、散歩行くか〜って思ったんだよ。そんで、美味しいご飯食べてさぁ、そういうことしてたらずっと外にいたのもあって、さっきの様!わら!熱中症には気をつけないとだよね〜!あ、ほんとにありがとね!俺、危うく死ぬとこだった!わら!みんなに伝えるのはちょっと待ってほしいなぁ!だって、自分から外出て、それが理由で死にかけるとか恥ずすぎるじゃん?とりあえず、まじ助かった!じゃ、また明日〜!!翔太も熱中症気をつけろよ〜」
「……おい!ふっか!!!!」
一気に早口で伝えたのもあって、自分で何言ってるのかわかんない。
でも、翔太に喋らせないのが唯一に逃げ口。
翔太には悪いけど、一方的にしゃべって逃げる。
翔太に追いつかれる前に、早く家に帰らないと…
次の日、俺は冠番組の撮影があった。
内心、ビクビクしてる。
昨日あんなことがあったんだもん。
翔太と会ったら、気まずくなるかも知んない…
もしかしたら、みんなもう知ってるかもしれない……
憂鬱な気分で、恐る恐る楽屋のドアを開ける。
「……まだ、誰も来てない……?」
ドアを開けてみたけど、中には誰もいなかった。
はぁ…よかったぁぁ!!!!
心でガッツポーズをしながら、少し軽くなった足取りで楽屋の中に入る。
いつもよりも早く来といてよかった〜!
先に来てたメンバーに問い詰められることはないし、何とかやり過ごせばいいしね!
最悪、撮影ギリギリまでトイレとか別の場所で過ごせばいいし!
よし!早くつなぎに着替えてっと…
「……はい!!!確保ーー!!!!」
「………へ……?」
いつから…?
え?なんで佐久間がいんの?
それに、みんなまで…!?
俺に抱きつく佐久間は笑顔で声も明るい。
………でも、目が笑ってねぇ…
怒ってる、めっちゃ怒ってるじゃん…
ゆっくりみんなにも目を向ける。
真っ先に目に入ったのは、先頭に立つ阿部ちゃんと翔太。
やっべ…特に阿部ちゃん…
向けられてる視線が痛すぎる……
めっちゃ怒ってる…
そんで、その少し後ろにいる康二、めめ、舘さん、ラウ…
こっちは、俺のこと心配してんなぁ…
で、最後に……1番後ろで腕を組んでる照……
まっすぐな目で俺のことを見てる…
怒ってるわけではない…のかな…
ただ、どうして言わなかった?って顔してる。
「………ねぇ、ふっか。俺らに言うことあるよね?」
真っ先に口を開いたのは阿部ちゃん。
ああああ…やっぱりだ…
翔太、何してくれてんだよ…
最悪だ、ほんとに、最悪だ……
本番まで……あと、20分もあんの……!?
どうしよう……
ほんとのこと言っても、黙ってても詰み。
多分、いつもみたいな適当な言い訳も8人全員相手だと通じねぇ…
「最近さ、ふっかは1人で何してるの?」
俺に抱きつく佐久間に、至近距離で詰められる。
こういう時の佐久間が、1番怖い。
「……別に…何も、してない…」
とりあえず曖昧に誤魔化せ。
問い詰められても、絶対に隠し切らないと……!
「ふっかさん、最近忙しそうだよね。」
ラウも、心配そうに、でも鋭く俺を射抜く。
「ちょっと忙しいだけだから…」
「でも、最近!俺の誘いいっつも断るやん!」
「たまたま!たまたま用事が被っちゃってんの!」
確かに、最近康二からいっぱい誘われてたけど、全部断ってたな…
いつ、いつあの人に呼ばれるかがわかんない…
だから、プライベートでは遊びに行かないようにしてた…
「じゃあ、その用事ってなんだよ。」
「……それ、は…打ち合わせとか…」
「嘘つけ。昨日、あそこの近くで打ち合わせなんてやってねえよ。」
「……っ」
翔太に強く言われる。
そう、だよな…
翔太は昨日あの現場にいた。
打ち合わせなんて、してねえんだよな…
「ふっか。」
黙り込む俺の元に、照が近づいてくる。
でも、俺は照の顔をまともに見れない。
俯いたまま、足元に視線を落とす。
俺の視界の端に、照のスニーカーが映る。
これから、何を言われるの?
責められる?怒られる?それとも、何も言われない?
どうやって、ここから逃げよう……
「なんか、1人で抱えてんだろ?」
頭に、照の大きな手の感触がする。
照の声は、ただ優しかった。
「ふっかのこと責めてるわけじゃないんだよ。ただ、心配なんだよ。最近、食べてないんだろ?それに、道端でうずくまるくらい体調も悪いし、今だって顔色悪い。」
「……ちょっと、疲れてるだけだからさ…」
「知ってる。でも、ちょっとじゃないんだろ。それに、仕事の疲れでもねぇよな。」
あっはは…ダメダメだな、俺……
全然、隠せてなかったんだ…
言っても、いいかな…?
みんななら、俺のこと…助けてくれる…?
今、辛いんだよ。
俺、みんなのために頑張ってたんだよ…
言ってもいい?
しんどいって、苦しい、助けてって…
言ってもいいのかな…?
ピロンッ
通知で、俺のポッケの中に入ってたスマホが震えた。
……これ、絶対そうだ…
間違いない、こんな時間に連絡してくるなんてあの人しかいない……!
一気に、頭が冷えてく…
ここでみんなに伝えたらどうなるの?
せっかく専属モデルになれたんだよ?
順調にお仕事だって増えてる。
俺らの引き受けていたお仕事の裏側を、みんなが知ったら…
もう、仕事がなくなるかもしれない…
そもそも、俺が身体を売って手に入れた仕事なんて、みんなは引き受けない…
それに、もし枕してたことが公になったら…?
それこそ、もう手がつけられなくなる…
駄目だ、絶対にばれちゃだめだ…
「……心配かけてごめんね。」
急に、さっきまでの緊張が抜けてく。
自然と、口から言葉が出てくる。
「ほんとに、大丈夫なんだよね、俺自身は。確かに、周りから見たら心配になるかもだけどさ、俺、ほんとに平気なの。」
久しぶりに、自然と笑顔が浮かぶ。
「俺もなるべく休むように意識するよ。昨日みたいなことにもなんないようにするからさ。」
スラスラと、言葉が勝手に出てくる。
「なんか、大事にしちゃってごめんね〜!あ、もう本番だね。」
よかった、もう時間だ。
「みんな、今日は頑張ろうね!」
鏡に映った俺の笑顔は、自分でも驚くほど“いつも通り“だった。
収録後、逃げるように楽屋を出る。
後ろから声をかけられてる気もするけど、全部ガン無視で。
とにかく走る。
もう、周りすら見ずにただただ走る。
大丈夫、俺はまだ大丈夫。
みんなに心配されても、まだ誤魔化せる、笑える。
今日のMCだって、最近の中で1番よかった。
なんでだろう?
今日は、倉庫に向かう足取りもそんなに重くはなかった。
(丸山視点)
今日も深澤くんを呼び出した。
さっきまで番組の収録があったみたいだけど…
今日は時間厳守で来てくれたんだね。
最近は、俺との“約束“、守るようにしてくれてるもんね。
俺のしつけのおかげかな?
どんどん俺の深澤くんになってくれてる。
「今日も、早速始めようか。」
「…………」
いつもならここで笑顔を引き攣らせるけど、今日の深澤くんは、綺麗な笑顔のままだった。
いつも通りの声、いつも通りの行為、いつも通りの言葉…
いつも通りのはずなのに、今日の深澤くんは、反応が少し違ってた。
いつもなら触れると震える身体も、一切反応を示さない。
俺が話しかけても、ただ頷くだけ。
目を見てみれば、どこか遠くを見ているみたいで、まるで、ここには存在していないかのような顔をしてる…
「深澤くん?」
「………」
声をかけてみても、返事は返ってこない。
ただ、ぼんやりと笑うだけ。
すごい、綺麗な笑顔だ……
あれ…?ちょっと様子がおかしいかも……
そう思った瞬間、不意に背筋が冷える。
でも、すぐに思い直す。
いや、大丈夫だ。
むしろ、壊れるくらいがちょうどいい。
余計なことを考えないで、何も感じずに、ただ言うことを聞くだけの深澤くん……
壊れてきてる今が、1番可愛いんだ…
「ねぇ、深澤くん。今日は随分と静かだね。疲れちゃった?」
揶揄うように、わざとらしく笑いながら、反応を示さない深澤くんの髪を撫でる。
この手に、ようやく深澤くんは反応してくれた。
そして、ふっと笑って呟いた。
「……うるさいなぁ………少し、黙っててくんない…………?」
その声は、ほとんど音にならないほどの小さな声。
それでも、その言葉は俺の耳に響いて、空気を切り裂いた。
空気が、一瞬で重くなる。
そうか、俺はこの一瞬…
深澤くんの“内側“に触れてしまったんだ…
そう、直感で感じる。
でも…それでも手を離す気なんてない。
むしろ………
「やっぱり、君が1番可愛いよ。今が1番、いい顔してるよ…」
俺の行動に、ここまで壊れてくれるなんて嬉しい……
何も感じない、それでも俺の言うことは聞いてくれる……完璧じゃん。
(深澤視点)
あぁ…やっぱり、この人はなんもわかってない…
どうせ、俺なんてこの人の都合のいい玩具なんだろ…?
もう、何も返す気もしない…
この人の相手をしても、損をするのは俺だけじゃん…
だったら、もういいよ…
俺は、目を閉じて、ただ静かに呼吸をする。
もう、何も感じてないふりをする。
そうすれば、自分自身が感情から切り離されるみたいだから………
いつもの行為も終わって、倉庫の裏口から出る。
でも、いつも重い空気が、やけに軽く感じた。
今日1日、ずっとそうだった。
みんなから問い詰められた時に浮かんだ、自然の笑顔…
あれは、たしか…そうだ……
そうか…そういうことだったんだ……
頭の中で、何かが静かにプツンって音を立てて切れた気がした。
薄く点滅する街灯の下で、影が二重に伸びる。
いつもなら足取りが重いはずの帰宅路は、不思議と歩きやすかった。
軽くスキップすらできる。
息がしやすい。心が軽い。
そうだ…もう、何も考えなくていいんだ……
そう思うと、唇が自然に上がる。
みんなの前で浮かんだあの笑顔と同じ。
いつも見てる、“アイドルとしての笑顔“と同じ。
でも、もうなんの感情もない。
誰かに何を言われても、どんなふうに扱われても…もう、苦しくなんてない。
気持ち悪いとか辛いとか、そんなマイナスな言葉すら浮かんでこない。
でも、静かな確信だけは胸にある。
この世界で俺を守れるのは、俺だけだ。
だったら、もう何も考えなくていい。
ご機嫌どりも、心配をかけさせない努力だってしなくていい。
ただ、“いつも通り“を演じればいい。
何も考えない、空っぽな中身を笑顔で全部隠しちゃえばいい。
そう考えたら、俺の中にあった何かが完全に切り替わったみたいだ。
目の前に映る景色が、少しだけ変わって見える。
いつもなら、この景色が憂鬱で仕方がないのに……
今は、モノクロ写真みたいに映ってる。
もう、笑うのも泣くのも何もかもが演技でいい。
本当の自分は、奥の奥に隠しておけばいいんだ。
夜風が吹いて、かすかにフードが揺れる。
もう、隠す必要もない。
フードを外して、笑顔のまま歩き出す。
街の明かりが、遠く霞んでくように感じる。
もう、ここには“深澤辰哉“なんていない。
“深澤辰哉“を奥に隠して、俺は、みんなの支えになる“ふっか“と思い通りに動いてくれる“深澤くん“になる。
もう、本当の俺には誰にも触れさせなんかしない。
俺は、俺自身を守るんだ。
こうやって、心の奥に鍵をかけて……
コメント
3件
うわぁぁぁあ……でも分かる…そうなるよね…… とりあえず続き楽しみです。
読んだ……これはめっちゃ重い回だったな。 深澤が「もう何も考えなくていい」って切り替えた瞬間、鳥肌が立った。あの笑顔が全部“演技”になったって自覚するところ、痛いほど伝わってきた。自分を守るために“本当の自分”を奥に閉じ込めるしかないって選択、切なすぎる。 Snow Manのみんなが本気で心配してるのに、深澤がそれを跳ね返し続ける姿が辛い。特に照の優しい声かけに一瞬だけど“言ってもいい?”って揺れたシーンが……あそこが一番胸に来た。俺、ちゃんと見てるからな。次の展開が待ち遠しい。