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「お前の望みはなんだ?」
「……」
ピピッ……(アラームの音)
またこの夢だ。
もう何回見ただろうか。
この夢を見ると毎回震えと冷汗が止まらない。
僕が教会で跪いている時にその声は現れる。
とても高い所にいるのはわかっているはずなのに強い威圧感にやられてしまう。
気味が悪い。
僕には望みなんてない…いや、僕には何かを望む資格なんかないんだ。
「聖夜〜! そろそろ起きてきなさい〜!今日は修学旅行なんだから、遅刻なんて出来ないわよ〜!」下の階から母さんの声が聞こえる。
そうだった、今日は修学旅行だ。
行きたくない。
みんなで集まる行事は嫌いだ。
支度をし、下の階へ行くととても美味しそうな匂いがした。
「おはよう、聖夜。」
「母さん、おはよう。今日は一段と豪華な朝ご飯だね。」
「そうよ、聖夜の誕生日と修学旅行が被ってしまったから朝ご飯だけでも豪華にしようとお母さん張り切っちゃった!」
ああ…もうそんな時期か……。
僕は12月25日に産まれた。
クリスマスという聖なる夜に産まれ、幸福で満ち溢れて欲しいため聖夜と名付けられた。
僕には勿体ない名前だ。
「ありがとう、母さん。頂きます。」
母さんの料理は世界で一番美味しい。
一口食べるだけでこの疲れた身体によく染みる。幸せだ。
「聖夜、誕生日プレゼントとクリスマスプレゼントのことだけど……」
「いらないよ、僕はもう貰ったよ。この母さんの料理が最高のプレゼントだよ。」
「聖夜…本当にごめんね。」
母さんは涙ぐんでいた。
その理由は僕にもわかる。
母さんのためにももっと努力しないと……。
「あら!いけない!もうこんな時間!学校に遅れちゃうわ!」
あっ、本当だ。
幸せの時間は早すぎる。
「ご馳走様でした。」
母さんが準備してくれた荷物を持って、母さんの見送りと共に学校に行こうとした時だった。
「待って!これを持っていきなさい。」
渡されたのは錆びた手の平サイズの鍵。
何がなんだかわからなかったが、母さんの目は真っ直ぐで真面目な顔をしていた。
こんな顔を見た事が無かったから驚いたが、母さんの”必ず持っていきなさい”という意思がとても伝わってくる。
「わかった、行ってきます。」
「行ってらっしゃい!」
学校に行く途中、空を見上げた。
青空の中に黒い雲。
何か嫌な予感がする。