「それでおまえが私を軽蔑していたというなら仕方ない。だっておまえが私を嫌っている以上に、私自身が私自身を軽蔑し嫌悪しているのだから。なぜあんな女たらしの言いなりになって簡単に貫通させられてしまったのか? 思い出すたびに死にたくなる」
「つらい気持ちは分かるけど、死ぬほどのことじゃないと思う。次は君を大切にしてくれる真面目な人と交際すればいいんだよ」
同じクラスのリョータが君とつきあいたいと言ってるよ。リョータなら君を幸せにしてくれるよ。
そう言いたかったが、僕と同じくパンピーでしかないリョータがメンヘラの彼女を幸せにできるイメージが持てなかったので黙っていた。
「おまえは童貞か?」
「そうだけど」
「だろうな」
なぜか鼻で笑われた。
「チャラ男相手に処女を捨ててさんざん性欲処理の道具として使われて、それで飽きたらあっさりと捨てられた。しかもそのことを言い触らされた。おまえみたいな陰キャの童貞でも知ってるくらいだから、校内でそれを知らない生徒はほとんどいないんじゃないか? もうまともな男はこんな汚れた女を恋人にしようなんて思ってくれない。せいぜいリクのような遊び人が遊び相手としてちょうどいいと近づいてくるくらいだろう。死ぬほどのことじゃない? 次は真面目な相手と交際すればいい? 見え透いた気休めを言うな! じゃあ、おまえはそんな私と交際できるのか? できないだろう? だからやっぱり私は死ぬしかない」
彼女がガシガシとフェンスを登り始めた。フェンスの向こうはただの虚空。ここは五階建ての校舎の屋上。飛び降りれば間違いなく死ぬだろう。