六魔将リカントは、魔王アリスの後継者が現れたと魔族領全土に知らせた。
これにより、六魔将全員を魔王城に集め、未央の魔王就任に関する会議を開くことを決定する。
未央が魔王城に来てから3日後、その会議は開かれた。
会議は六魔将と未央が円卓のテーブルに座り、取り行われた。
未央が上座に座り、その左手の席にリカント、そして他の六魔将がそれぞれ席に着く。
席は未央の他、6席用意されていたが、1席だけ空席となっている。
あれ?欠席者がいる―――
未央はそう思った。
先代魔王のアリスは、その会議の様子を宙に浮きながら眺める。
「サンドルのヤツ―――、やはり来てないか・・・。」
「えっ―――!?」
アリスはポツリとそう呟いた。
「この度は、お集まり頂き六魔将の方々には深い感謝を示します。」
「数百年間空席となっていた魔王の座を今回新たにこの”未央様”が引き継いだことをお知らせするため、皆様にはお集まり頂きました。」
リカントがお辞儀をし、会議を進行する。
「ご丁寧な挨拶はいいッ!!」
「なんでいきなり、そこの娘を魔王として認めなきゃいけないのか聞きたいッ!!」
リカントの挨拶の後、六魔将の中から声高に物申した者がいた。
そう云い放ったのは、バチバチと電気を散らしている六魔将 アドラメレク。
「そうですね。」
「アドラメレク―――、まずはそこから説明いたしましょう。」
アドラメレクってあの人間の胴と孔雀の体を持つ有名な悪魔の名前じゃん―――
未央の目の前にいたその悪魔は、普通に人間の体をしている筋肉質な金髪の男ではあったが、その魔力はとても高いように感じた。
リカントがアドラメレク含め他の六魔将に説明を始めた。
この説明は、未央とリカントがあらかじめ話すことを決めていた内容である。
実際に未央が先代魔王アリスと話し決めたことや未央が魔王のステータスを引き継いだこと等である。
「以上が先日魔王城であった出来事です。」
「未央様は、先代魔王アリス様の幽霊と話すことができ、そしてなによりこの場にいる誰よりも圧倒的に強いです。」
「それが彼女が魔王として推す理由です。」
「確かにステータスだけなら俺達の誰よりも強いみたいだな。」
「だが、アリス様が最強と謳われていたのはそのステータスだけでなく、その身に纏う覇気のようなものも大きかったハズ。」
「そこの娘にその覇気が真似できるのか!?」
「それは…これから身に着けて頂ければと考えております。」
「ふん!そうかよ―――」
「随分と甘い話だなッ!!」
「そうでしょうか―――?」
「それじゃあ他の六魔将はどう考えているんだ?」
「リカントの意見に賛成か?それとも俺みたいに不満があるのか?」
「私は賛成よ~★だって可愛い子じゃん~★」
「アリス様もカッコよかったけど未央ちゃんは未央ちゃんでいいと思うよ~★」
そう発言したのはサキュバスのエレナだった。
「エレナさん・・・。」
つい未央は嬉しくなった。
エレナさん―――、とっても優しそうな人だな。
この人とは仲良くなれそうだ。
「エレナちゃんでいいわよ~★」
「はい。ありがとうございますエレナちゃん。」
まずは、エレナがリカントの意見に賛成したか―――、ならば私も。
「ならば、私もリカント殿の意見に賛成させてもらおう。」
今度の発言は、頭が羊で首から下が人間の体をしているモレクだった。
「どんな者にも慈悲を―――”愛”を持って接しなければいけない。」
「まずは否定するのではなく、実践してもらう方が我々にとっても有益だと考える。」
「モレクさんありがとうございます。」
後で、あの頭触らせてもらおう。
オカルト好きの未央は、人間の頭ではないモレクの頭に興味を示していた。
「私は、アドレメレクさんに賛成です―――」
アドラメレクに賛成したのは、リッチのハイロンだった。
「ほう?ハイロンはどういった理由ですかね。」
リカントはハイロンの意見に興味を示した。
「新しい魔王候補は、見たところただの人間の娘にしか見えない。」
「いや、そもそも普通の人間の娘だ。」
「それをクラスが魔王でステータスがアリス様の能力を引き継いでいるという理由だけで魔王になるとはいささかどうなのかと思った次第ですね。」
「未央様に魔王を任せたのが先代魔王のアリス様の意思だとしてもですか―――?」
「そうですね。」
「我々のような”魔”を統べるだけの”強さ”を持っていれば話は別ですが―――」
ハイロンの眼が未央を突き刺す。
人外の彼にとって、人の娘など取るに足らない存在。
実力を疑うのも無理はない。
「ねぇリカント、他の六魔将の皆聞いてもらえるかな。」
ここで未央が割って入った。
「私のことだから、私の意見を言わせてもらうね―――」
「私は確かに人間、他の魔族を統率できるのかって疑問を持つのは当然だと思う。」
「でも私は私なりの信念があるッ!!」
「それは誰にも死んでほしくないってこと。」
「それはここに居る六魔将の人たちだったり、人間や魔族、他の種族の人たちだったりね―――」
「先代の魔王アリスに聞いたわ。」
「今この世界では戦争が絶えず、魔族や人間、他の種族の子供たちが飢えや病気で亡くなっていると、だから私はこの世界を統一して、争いを完全になくすわ。」
「そして、絶対に全ての種族の人たちを幸せにして見せる!!」
「そのために私は魔王になる!」
未央はハッキリと宣言した。
少し力を解放しただけで人の命をろうそくの火を消すくらい簡単に消せる悪魔達を前にだ。
その場にいた六魔将たちには、その瞬間未央の周りが一瞬光ったように感じた。
「そのために六魔将のみんなには力を貸してもらいたいの!」
「具体的な方法については、追って説明するわ。」
「アドラメレク、ハイロンどうかな?」
リカントは得意げに回答を求めた。
「ふん!まぁ目的は分かった。手を貸してやらんでもない。」
「そうですね。やる前からできないと決めつけていては進歩がありませんからね。できることは協力しましょう。」
「今日はサンドルが不在なので、とりあえず5人の承諾は得たということでよろしいでしょうか?」
六魔将たちは、顔をお互いに見合わせ、反対意見がないことを確認する。
「よろしい!では本日より魔王アリス様に代わり、我々魔族の王は未央様で決定いたします!」
何とか、会議は未央が魔王ということで決定した。
「ふぅ・・・やっと終わったよ~。」
会議が終わり、未央は一人自室で疲れていた。
これからのことは明日以降決めていこう。
そう心に決め、未央は眠りについた。