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(俺、幼稚園生活最後のお別れ遠足も、小一の時の初めての遠足も……果ては学校生活の集大成修学旅行もっ! みんなみんな体調不良でことごとくダメになったんじゃったぁぁぁ!)


修学旅行に至っては中学も高校も行けていない。


よくよく考えてみたら――いや考えなくても――大学仲間との卒業旅行も自分だけダウンして行けんかったんじゃった、と気がついた実篤さねあつだ。


そんな、普段は忘れているような黒歴史の数々を思い出してしまったのは、身体が弱っている証拠だろうか。


(あーん、くるみちゃんとの初めてのクリスマス、俺、めちゃくちゃぶちくそ楽しみにしちょったのに!)


やはり、そのことを考えるとソワソワして夜も眠れなくなるぐらい楽しみにしていたのがいけなかったんだろうか。


でも、大好きなくるみとの初めてのクリスマスを楽しみにしないなんて有り得ないではないか。


「はぁ〜」


思わず盛大な溜め息が漏れたのも致し方あるまい。



と、手にしていた携帯が鳴って、病院のスタッフに裏口から中に入るよう指示された実篤だ。


その頃には本格的に体調が悪くなってきていた実篤は、半ば身体を引きずるようにして指示に従った。



***



「お兄ちゃん、インフルでクリスマスのあたり寝込んじょったんて?」


鏡花きょうかが、実家に戻ってくるなり憐れんだ目で実篤さねあつを見つめてきた。


「言うな」


はぁ〜っと大きく吐息を落とすと、情けなさに泣きたくなった実篤だ。


「ちょっと前に電話で話した時、嬉しげに彼女出来たって言いよったじゃん? 彼女、凄いぶち悲しんだじゃろ」


この妹はどこまで傷口に塩を塗り込んでくるつもりなんよ!と思ってしまったけれど、事実なので反論のしようがない。


しかも……。

まだ鏡花には言えていないけれど、その〝彼女〟は鏡花の友人でもあるわけで。


(くるみちゃんに愚痴られたらアウトじゃしな)


くるみはそんな子ではないと分かっていても、ドタキャンの後ろめたさが思考回路を悪い方へ引っ張ってしまう。


それでほいで治ってからちゃんと埋め合わせはしたんじゃろうね?」


心配そうに下から顔を見上げられて、実篤は思わず「え?」とつぶやいていた。


「もしかしてしちょらんの⁉︎」


間近で素っ頓狂な声を上げられた実篤は耳を押さえて思わず後ずさった。


「信じられん! お兄ちゃん、恋愛唐変木とうへんぼくにもほどがあるじゃろ! 八雲やくもにいが聞いたら絶対吹き出すわ」


その八雲やくもももうじき帰ってくることになっている。


もっと言うと、両親も年末年始はこの家で過ごすと打診してきた。


(何でみんな今年はこっちに帰ることにしたんよ。気ぃ休まらんじゃんよ)


くるみを家に呼ぶのもはばかられるではないか。


実篤的には例年通り両親がいる広島に集結!になると踏んでいたのだが。


はぁ〜っと溜め息をついた実篤に、


「お兄ちゃん、いま、何でこの年末年始はみんなして実家ここに集まるようにしたんよ?って思ったじゃろ?」


(ぐっ。鏡花はエスパーか何かじゃろうか?)


思わず言葉に詰まった実篤に、鏡花がニンマリ笑う。


「兄ちゃんに彼女が出来たって私がみんなに言いふらしたけぇよ」


「はぁー⁉︎」


さすがに、その告白には実篤も頓狂な声を上げてしまった。



そこで、過日鏡花きょうかから同窓会に送って行って欲しいと言われた時の電話でのやりとりを思い出した実篤さねあつだ。



***



『可愛い妹のために一肌脱いでくれてもええじゃん⁉︎ どうせお兄ちゃん、仕事しかないんじゃろーけー、年末年始は暇じゃろ?』


馬鹿バッ! 俺じゃって彼女ぐらいおるわ! 正直ぶっちゃけお前送るくらいなら彼女んトコ行くし!」


売り言葉に買い言葉。

言わなくても良いのに彼女が居るとか豪語してしまった。


鏡花から電話があった時は、くるみも「同窓会、どうやって行くん?」と聞いても「友達と相談してから決めようと思うちょる。今日連絡あることになっちょるんよ」という返答だったのだ。


「その子がね、送ってくれる人にあてが有るって言いよったけん、多分うちもその人に送ってもらうことになるんじゃないかなって思うちょる」


言われて、実篤は即座に(その「あて」は男なん? 女なん?)と思ったのだ。(まぁ、結局は自分だったのだが……)


あの時はそんな事を言うんは嫉妬心が強すぎて嫌がられるかも知れんよなと思って。

当たり障りなく「もしあてが外れたら言うて? 俺、くるみちゃんのためなら何ぼでも車出すけん。あれじゃったらその友達も一緒に乗してもええし」とか何とか言ったんだっけ。


(これ、よぉ考えてみたら結局鏡花きょうかを送るんもどのみち決定事項だったっちゅうフラグじゃったわ)




『はぁ⁉︎ 恋愛偏差値男子中学生止まりのお兄ちゃんに彼女⁉︎ まぁ〜たそんな見栄張ってからに』


「見栄じゃねぇわ! ホンマにおるんじゃっちゃ! 嘘じゃと思うんなら今度会わしちゃるけん覚悟しとけ!」


(何を覚悟させるつもりだったんか、よぉ分からんけど)



あの時の会話を頭の中で思い出して、自分の馬鹿さ加減を呪いたくなった実篤だ。


(いや、あれはホンマ、クリスマス前で浮かれちょったし)



『その言葉忘れんさんなよ⁉︎』


そう。

そうして鏡花は、あの時そんな実篤さねあつに対して、まるでアニメか漫画のモブ的悪役ザコキャラみたいな捨て台詞を吐いて……。


『ほいじゃけど、送って行くんはお願いしたけんね⁉︎ うちの友達も凄くぶっ可愛いけん、彼女おるくせに目移りしんさんなよ? バカにい!』


「はぁ⁉︎ お前俺の彼女の可愛さ知らんけん、そんなアホなこと言――」


惚気のろけは聞きとぉないけぇ、切りまぁ〜す! じゃぁーね! バイバイ!』


そんな付け加えまでして、鏡花は実篤の言葉をさえぎるように一方的に電話を切ったのだ。


実篤としては「俺の彼女の方が絶対可愛いけぇ死んでも目移りなんかせん!」と断言した後で電話を切られたかったのを覚えている。


(結局俺、あのあと年末年始のドタバタで鏡花に連絡するん、すっかり忘れちょって……。オマケにインフルまでやらかしたけん、何だかんだでアイツの頼み、突っぱね損ねたんよなぁ)


そこまで思って、


(いや、マジな話、死んでも目移りなんかせん!って思うたけど、インフルで死にかけたわ……)


なんて、頭の中が忙しいことこの上ない。


とは言え、基本妹に甘々な実篤だ。

忙しくなかろうが、寝込まないでいようが、きっと何だかんだで押し切られていたとは思うのだが――。


それはさておき、鏡花の言った〝凄くぶっ可愛い〟友達がくるみだったのは嬉しい誤算だった。


(そりゃ〜俺の彼女のくるみちゃんが〝死ぬほど可愛い〟ことを知らんじゃった鏡花が、友人のくるみちゃんの余りの可愛さに「目移りするな」と釘を刺したくなったんも無理はないよな。くるみちゃん、ホンマ凄くぶっ可愛いけん♡)


と、くるみにベタ惚れな実篤はある意味矛盾だらけなことを思って、ひとりニマニマして。



「お兄ちゃんをそんなにする彼女に会えるん、楽しみじゃわぁー」


直後、自分のそういうくるみ大好き・彼女自慢しまくりたい症候群な状態が、今回の家族大集合をもたらす羽目になったんじゃったと、鏡花の〝珍獣〟でも見るような目を見て思い出して、溜め息祭りに変わったのだった。

社長さんの溺愛は、可愛いパン屋さんのチョココロネのお味!?

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