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しかし銚子にそんな嘘は通用しなかったようで、銚子は腕を組みながら
「そんな嘘で私を騙せると思ったの?
明らかに霊じゃないのよ!」
鋭い視線を向ける銚子に、信愛は肩を震わせた。
「ご、ごめんなさい!
祓った筈だったんだけど・・・」
頭を下げか細い声で続けた信愛に、銚子はため息を漏らした。
「また佳苗ちゃんと同じになったって事?」
「は、はい・・・」
「はぁ~・・あんたってば本当にもう」
銚子は呆れたように額へ手を当てる。
「霊を祓うたびに特異な
存在を生み出してどうするのよ?」
「は、はい・・ごめんなさい・・・」
小さく縮こまる信愛を見かねたように、千歳がおずおずと口を開いた。
「あ、あの・・あまり信愛を
責めないであげてください
悪いのは私なんです」
銚子は静かに千歳を見据えた。
「あなたは確か・・古海商店街の交差点の霊よね?」
「は、はい・・・」
「悪いけどね、あなたみたいに
危害を加える可能性がゼロではない霊が
自由に行き来できる状況は非常にまずいの
私が言ってる言葉の意味、分かるわよね?」
千歳は唇を噛み締め、小さくうなずく。
「はい・・・」
「でも今のあなたからは怨念は感じられない」
銚子は一拍置いて続けた。
「おそらく信愛に救われた事が理由でしょうね」
その言葉に千歳は目を伏せた。
「けど、だからと言ってあなたが
危険な存在だという事実は変わらない」
部屋に重苦しい沈黙が落ちる。
「元は信愛の霊気が霊圧を拒否
するほどに強力な霊だった訳だしね」
「はい・・・」
「その事を肝に銘じて、もうこっちの
世界には来ないでちょうだい、いいわね?」
「はい・・・分かりました」
桃子は今度は信愛へ視線を移した。
「信愛! あんたもよ?」
「はい・・・」
「当分は除霊、そして
魂に刻まれた記憶を見る事を禁止します」
信愛は一瞬だけ目を見開いたが、やがて観念したようにうつむく。
「わかったの?」
「は、はい・・分かりました」
すると遠慮がちに千歳が口を開く。
「あ、あの・・・」
「ん? どうかした?」
銚子が視線を向けると、千歳は一度息をのみ、覚悟を決めたように顔を上げた。
「私が危険な存在だという事は理解できました」
その声は静かだったが、決意が滲んでいた。
「祓われたはずの私がこの世界にいる
危険性も十分に理解できました」
一呼吸置き、千歳は言葉を続ける。
「でも──」
部屋の空気が張り詰める。
「ひとつだけ、私のわがままを聞いてくれませんか?」
銚子は首をかしげた。
「わがまま?」
千歳は目を伏せ、小さく呟く。
「お母さんに──」
そして、震える唇で願いを口にした。
「お母さんに会いたい」
その一言に、信愛は思わず千歳を見つめる。
「千歳さん・・・」
千歳は涙を浮かべながら続けた。
「お母さんに会って謝りたい・・・
女手ひとつで私を育ててくれたお母さんに」
声が詰まり、それでも言葉を絞り出す。
「親より先に死んだ親不孝を詫びたい」
部屋は静まり返った。
桃子は何も言わず、ただ千歳を見つめている。
「どうか──」
千歳は深く頭を下げた。
「どうかお願いします」
床につくほど深く頭を垂れるその姿に、誰もすぐには言葉を返せなかった。
やがて銚子が静かに口を開く。
「申し訳ないけど、それを簡単に認める事は出来ない」
千歳の肩が小さく震えた。
「既に亡くなっている貴方を不用意に
親御さんに会わせるわけにはいかない」
厳しい現実を突きつける言葉。
しかし銚子は、そこで言葉を切った。
「──と言いたい所だけど」
千歳がゆっくりと顔を上げる。
銚子は穏やかな眼差しで微笑んだ。
「私も一人の母親」
その表情には、一人の母としての優しさが宿っていた。
「娘を亡くした親御さんの
悲しみを考えたら、居た堪れなく思う」
静かに息をつき、銚子は決断を告げる。
「だから一度だけ、一度だけ許可するわ」
信愛の表情がぱっと明るくなる。
「お母さん♬」
千歳は涙をこぼしながら、震える声で頭を下げた。
「あ、ありがとうございます」
銚子は優しく微笑み返す。
「親御さんに会ってあげて、むしろ私からお願いするわ
貴方の声で想いを伝えてあげてちょうだい」
千歳は力強くうなずいた。
「は、はい!」
コメント
1件
いやあ、もうこのエピソード、胸にグッときました。千歳さんが「お母さんに会いたい」って震える声で言ったところ、本当に切なくて…。それに対して銚子さんが「私も一人の母親」と許可を出す流れ、設定の厳しさ(危険な存在であること)をちゃんと踏まえた上での決断だからこそ、温かさが際立ちますね。信愛の除霊の失敗がまた新たな縁を生む構造、素敵だなと思いました。
#普通
野々さくら
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ありあ
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