テラーノベル
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透明な放課後
教室にはもう誰もいなかった。
放課後の静けさは好きだった。
夕方の光はどこか黄色くて、
教室の中の机の影が少し長くなる。
窓の外には校庭と
そして先の低い建物が見える。
俺は、教室の最後列、窓際の席に座っていた。
カリ…カリ…。
シャープペンシルの芯の音が
やけに響いて聞こえる
「ねぇ、nakamu。まだ残ってるの?」
ドアの方から声がした。
振り向くと、きんときが立っていた。
黒髪がやや乱れていて、
リュックを背負っている。
いつもより表情が柔らかい。
「うん、ちょっと日記書いてただけ。、
もう帰るよ」
俺はノートのページを閉じた。
そこには誰にも見せたことのないメモがある。
『今日も、四時十五分に時間が止まった。』
「…また、その話?」
きんときは目を細めて笑った。
「どうせ気のせいだって。時計の針が止まるなんて、漫画みたいなこと起きないよ」
「わかってる。でも…本当に止まったんだよ」
俺は自分の腕時計を見せた。
秒針が、まるでバッテリーが切れたみたいに
ピタリと止まっている。
「見て。これ、昨日も止まった時間と同じ
四時十五分。 」
「壊れてるだけでしょ?」
「でも、教室の壁の時計も止まってた。
それに、音が全部きえるんだ。」
俺の声は小さくなっていった。
その瞬間だった。
「カタン」
教室の前の方で、何かが落ちた音がした。
2人はハッとして視線を向ける。
誰もいないはずの教室の前の机、
わずかに揺れていた。
「……風?」
「窓、閉まってるよ?」
きんときが1歩、後ろに下がる。
俺はゆっくりと立ち上がり
前の机に近ずいていった。
そのにあったのは、
1枚の紙切れ。
床に落ちたその紙には
黒いペンでこう書かれていた。
『6人のうち、1人はもういない』
「これ……誰が…?」
「イタズラじゃない?」
きんときは声を低くしたが
その手が震えていた。
俺はその紙を拾って
自分のノートのページに挟んだ。
そして──時計を見た。
四時十五分。
その瞬間、教室の音が全て消えた。
つづく_
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初めてのプロローグ無しでーす!!
毎週日曜日に出します
(覚えてれば)
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《 なんか、クロノスタシス見たい 》