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「……お待たせ。重かっただろ、これ」
駆け寄ってきた凌は、紗南の手から重い備品の袋をごく自然に奪い取った。これまでの「気遣う先輩」としての優しさではなく、もっと強引で、けれど頼もしさを感じさせる動作に、紗南は目を丸くする。
「あ……ありがとうございます、凌先輩。あの方、お知り合いだったんですか?」
遠ざかっていく栞の背中を指差すと、凌は一瞬だけ遠い目をして、それからすぐに真っ直ぐ紗南を見つめた。
「うん。……俺に『今の恋に全力になれ』って、背中を押してくれた人」
「えっ……?」
直球すぎる言葉に、紗南は思わず足を止める。凌の言葉には、さっきまであった迷いや、何かを隠すような余裕が消えていた。
「さあ、行こう。……遥、家で荒れてなきゃいいけど」
二人が玄関を開けて家に入ると、リビングのソファで足を投げ出し、不機嫌そうにテレビを眺めていた遥がガバッと起き上がった。
「……遅ぇんだよ。二人で何してたんだよ」
遥の視線が、並んで帰ってきた二人と、凌が持っている紗南の荷物に突き刺さる。
「備品の買い出しだよ。ほら、紗南ちゃんが遥の足のこと心配してたから、これ、冷やすやつ買ってきた」
凌がさらりと言ってのけると、遥は一瞬怯んだように視線を泳がせた。いつもの「余裕のある兄」とは違う、どこか攻めの姿勢を感じさせる凌の雰囲気に、遥の直感が警鐘を鳴らしていた。
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