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夏休み中にあと1話ぐらいこういう読み切り出したいな~…何系がいい?
「わたし、貴方の事が好きだったみたい。 」
大好きでした、さようなら。
4月9日
わたしは今日から「初恋日記」をつけることにした。
理由は簡単、好きな人が出来たから。
今日初めて会ったのに、不思議と惹かれていった。
久しぶりに味わったこの感覚。何年ぶりだろう。
わたし、やっと「普通」になれるのかな。
両思いになれたらこの日記は終わりにする、失恋したら…なんて、失恋なんてする訳ないけど。
わたしが初めて好きになった人の名前は───
脇坂桜華っていうの。
朝、窓を開けた。
太陽が眩しい_なんてことは無く。
そんな漫画のような展開を期待する方が馬鹿だ。
私はベッドから起き上がれなかった。いつもの事だけれど。
身体に力が入らず、もう一度目を瞑る。なにか聞こえた。
いつもの雑音だ。ドンドンドン、と何かを叩く音がする。部屋のドアだ。
もう来ないで。諦めて。
鍵はかけた。もう大丈夫。
私はふとドアを見た。
ドアの前には、 使わなかったランドセルと、未だ1度しか使われていない鞄が置かれている。
もう捨てようかな。あの鞄、きっともう使わないし。
結局ランドセルだって、一度も使わなかった。
晴れ晴れとした青色のランドセルは、埃をかぶって色褪せている。
分かっている、私の時はもう止まっている。
ワクワクしながら選んだランドセル、少し不安な気持ちで寝た前日。
そして、時が止まった「入学式」。
あの日行っていれば、何かが変わっていたのかな。どうなんだろう。
もしかしたら、私があの子の隣にいられる日もきたのかな。
想像しただけで吐き気がする。なぜなら、そんな日は二度と来ないから。
机の上に置かれた日記を見た。ああ、そうだった。
あの子は、世界一優しい。世界一可愛い。
そして、世界一私が好きな人。
その人の名前はね───
5月1日
桜華ちゃんがいない世界は辛い。明日、家に行ってみようかな。
誰か聞けば住所は分かるはず。だって数年前も、そうだったから。
行こう、そうすればきっと何かが変わるはず。
両思いになるまで、この日記は続けなきゃ。
こうしてわたしは、数年ぶりにあの子に会いに行くことにした。
「───」
雑音がした。うるさい。私は起き上がれなかった。
身体が縛り付けられているみたい。今日こそ起き上がろうと思ったのに。
あの子に会いに行けない。最悪だ。
大好きなあの子は、今どうしているんだろう。
私の事なんて覚えてないかな。忘れてるかな。
そりゃそうか。だって私、あの子に会ったのは1回だけだもん。
7月24日
世間は夏休みみたい。でも、わたしは休めない。
でも、桜華ちゃんに会いたいの。
だから、夏休み中に会いに行こうと思う。いけるか分からないけど。
だって、こんな体だし。
桜華ちゃんへの恋物語は、まだまだ続きそう。
窓の外から聞こえる声。
子供は皆遊んでいるんだ。知ってる、私もそうだったから。
会いたい、あの子に会いたい。
そうすれば楽になれるかもしれない。
そう思いながら、今日もベッドで横になる。
いつか、あなたに会えたら。
笑顔で彼処に行くことができるのかもしれない。
笑いながら、毎日を過ごせるのかもしれない。
辛いことなんて何も無い、幸せな日々を───。
「そんなこと、ないよ
何処かで誰かの声がした
10月20日
今日は桜華ちゃんの家の前まで行った。インターホンが押せなかった。
怖かった。
また明日、行ってみようかな。
桜華ちゃん、出てくれるかな。
会いたいよ、桜華ちゃん
1月5日
桜華ちゃん、今行くよ
また来世でね
ばいばい
貴方と会えて本当に
「あんな事書いておいて、未だに会えてないなんてね」
わたしは日記を閉じた。
わたしが書いていた「初恋日記」は、彼女の自✘で終了した。
脇坂桜華、中学一年生
不登校
わたしが桜華ちゃんに会ったのは一度だけ。
小学校の入学式で出会った。すごく気が合った。
でも帰り道、事故で病院に運ばれた。
桜華ちゃんは動けなくなった。
歩くことも、頷くことも出来ない。
わたしはその間も、ずっと「初恋日記」を書き続けた。
小学生から書いていた「初恋日記」は、中学一年生、桜華ちゃんの死によって終わった。
動けなかった桜華ちゃんは、窒息していっちゃった。
そしてわたしは、今その日記を読み返している。
「───、荷物届い、たよ」
誰かの声がする。
「ありがとう、桜華ちゃん」
わたしは桜華ちゃんが大好き。
桜華ちゃんもわたしが大好き。
それが分かったのは、桜華ちゃんの「初恋日記」を読んでから。
しょうがく1ねんせい
わきさかおうか
はつこいにっき
だいすきだよ
にゅーがくしきであったあの子
なまえはわかんない
でもだいすきなの
わかんないけどすきなの
こういうの あいしてるっていうの?
そこで日記は終わっている。
でも、あの子っていうのはわたしのこと。
なんで分かるかって?
そりゃあ…
桜華ちゃんの記憶を見たからだよ。
桜華ちゃんが✘んだあと、わたしは必死に考えた。
桜華ちゃんを生き返らせる方法を。
そして思いついたの。桜華ちゃんを機械にすればいい。
そうしてわたしは桜華ちゃんと全く同じロボットを造り上げ、記憶を取り込んだ…
難しいと思うでしょ?
難しかったよ、実際
でも、わたしは中学一年生からずーっと桜華ちゃんを生き返らせるために勉強してきたの。
今わたしは立派な大人。
でも、桜華ちゃんはあのころの桜華ちゃんのまま。
だから、わたしが成長させてあげるの
「愛」をね。
「桜華ちゃん、愛してるよ」
「私もだよ、スグリ。」
これは、重い重いあいのおはなし。
𝑭𝒊𝒏.
表紙➠八月の葬式 製作者 くらむぼん
スグリの花言葉 「あなたの不機嫌が私を苦しめる」「わたしがあなたを喜ばせる」