TellerNovel

テラーノベル

アプリでサクサク楽しめる

テラーノベル(Teller Novel)

タイトル、作家名、タグで検索

ストーリーを書く

テラーノベルの小説コンテスト 第4回テノコン 2025年1月10日〜3月31日まで
初恋日記

一覧ページ

「初恋日記」のメインビジュアル

初恋日記

1 - あいのおはなし

♥

120

2024年08月14日

シェアするシェアする
報告する

「わたし、貴方の事が好きだったみたい。 」


大好きでした、さようなら。





















4月9日

わたしは今日から「初恋日記」をつけることにした。

理由は簡単、好きな人が出来たから。

今日初めて会ったのに、不思議と惹かれていった。

久しぶりに味わったこの感覚。何年ぶりだろう。

わたし、やっと「普通」になれるのかな。

両思いになれたらこの日記は終わりにする、失恋したら…なんて、失恋なんてする訳ないけど。

わたしが初めて好きになった人の名前は───













脇坂桜華っていうの。






朝、窓を開けた。

太陽が眩しい_なんてことは無く。

そんな漫画のような展開を期待する方が馬鹿だ。

私はベッドから起き上がれなかった。いつもの事だけれど。

身体に力が入らず、もう一度目を瞑る。なにか聞こえた。

いつもの雑音だ。ドンドンドン、と何かを叩く音がする。部屋のドアだ。

もう来ないで。諦めて。

鍵はかけた。もう大丈夫。

私はふとドアを見た。

ドアの前には、 使わなかったランドセルと、未だ1度しか使われていない鞄が置かれている。

もう捨てようかな。あの鞄、きっともう使わないし。

結局ランドセルだって、一度も使わなかった。

晴れ晴れとした青色のランドセルは、埃をかぶって色褪せている。

分かっている、私の時はもう止まっている。

ワクワクしながら選んだランドセル、少し不安な気持ちで寝た前日。

そして、時が止まった「入学式」。

あの日行っていれば、何かが変わっていたのかな。どうなんだろう。

もしかしたら、私があの子の隣にいられる日もきたのかな。

想像しただけで吐き気がする。なぜなら、そんな日は二度と来ないから。

机の上に置かれた日記を見た。ああ、そうだった。

あの子は、世界一優しい。世界一可愛い。

そして、世界一私が好きな人。

その人の名前はね───











5月1日

桜華ちゃんがいない世界は辛い。明日、家に行ってみようかな。

誰か聞けば住所は分かるはず。だって数年前も、そうだったから。

行こう、そうすればきっと何かが変わるはず。

両思いになるまで、この日記は続けなきゃ。


こうしてわたしは、数年ぶりにあの子に会いに行くことにした。






「───」

雑音がした。うるさい。私は起き上がれなかった。

身体が縛り付けられているみたい。今日こそ起き上がろうと思ったのに。

あの子に会いに行けない。最悪だ。

大好きなあの子は、今どうしているんだろう。

私の事なんて覚えてないかな。忘れてるかな。

そりゃそうか。だって私、あの子に会ったのは1回だけだもん。








7月24日

世間は夏休みみたい。でも、わたしは休めない。

でも、桜華ちゃんに会いたいの。

だから、夏休み中に会いに行こうと思う。いけるか分からないけど。

だって、こんな体だし。

桜華ちゃんへの恋物語は、まだまだ続きそう。














窓の外から聞こえる声。

子供は皆遊んでいるんだ。知ってる、私もそうだったから。

会いたい、あの子に会いたい。

そうすれば楽になれるかもしれない。

そう思いながら、今日もベッドで横になる。

いつか、あなたに会えたら。

笑顔で彼処に行くことができるのかもしれない。

笑いながら、毎日を過ごせるのかもしれない。

辛いことなんて何も無い、幸せな日々を───。


「そんなこと、ないよ






何処かで誰かの声がした

















10月20日

 今日は桜華ちゃんの家の前まで行った。インターホンが押せなかった。

怖かった。

また明日、行ってみようかな。

桜華ちゃん、出てくれるかな。

会いたいよ、桜華ちゃん


















1月5日

 桜華ちゃん、今行くよ

また来世でね

ばいばい

貴方と会えて本当に














「あんな事書いておいて、未だに会えてないなんてね」


わたしは日記を閉じた。

わたしが書いていた「初恋日記」は、彼女の自✘‎で終了した。


脇坂桜華、中学一年生

不登校


わたしが桜華ちゃんに会ったのは一度だけ。

小学校の入学式で出会った。すごく気が合った。

でも帰り道、事故で病院に運ばれた。

桜華ちゃんは動けなくなった。

歩くことも、頷くことも出来ない。

わたしはその間も、ずっと「初恋日記」を書き続けた。

小学生から書いていた「初恋日記」は、中学一年生、桜華ちゃんの死によって終わった。

動けなかった桜華ちゃんは、窒息していっちゃった。








そしてわたしは、今その日記を読み返している。









「───、荷物届い、たよ」


誰かの声がする。


「ありがとう、桜華ちゃん」







わたしは桜華ちゃんが大好き。

桜華ちゃんもわたしが大好き。

それが分かったのは、桜華ちゃんの「初恋日記」を読んでから。








しょうがく1ねんせい

わきさかおうか

はつこいにっき


 だいすきだよ

にゅーがくしきであったあの子

なまえはわかんない

でもだいすきなの

わかんないけどすきなの

こういうの あいしてるっていうの?


















そこで日記は終わっている。

でも、あの子っていうのはわたしのこと。

なんで分かるかって?





そりゃあ…




















桜華ちゃんの記憶を見たからだよ。













桜華ちゃんが✘‎んだあと、わたしは必死に考えた。

桜華ちゃんを生き返らせる方法を。

そして思いついたの。桜華ちゃんを機械にすればいい。

そうしてわたしは桜華ちゃんと全く同じロボットを造り上げ、記憶を取り込んだ…

難しいと思うでしょ?

難しかったよ、実際

でも、わたしは中学一年生からずーっと桜華ちゃんを生き返らせるために勉強してきたの。

今わたしは立派な大人。

でも、桜華ちゃんはあのころの桜華ちゃんのまま。




















だから、わたしが成長させてあげるの





「愛」をね。






「桜華ちゃん、愛してるよ」

「私もだよ、スグリ。」














これは、重い重いあいのおはなし。




























𝑭𝒊𝒏.
























表紙➠八月の葬式 製作者 くらむぼん





スグリの花言葉 「あなたの不機嫌が私を苦しめる」「わたしがあなたを喜ばせる」















この作品はいかがでしたか?

120

コメント

5

ユーザー

夏休み中にあと1話ぐらいこういう読み切り出したいな~…何系がいい?

チャット小説はテラーノベルアプリをインストール
テラーノベルのスクリーンショット
テラーノベル

電車の中でも寝る前のベッドの中でもサクサク快適に。
もっと読みたい!がどんどんみつかる。
「読んで」「書いて」毎日が楽しくなる小説アプリをダウンロードしよう。

Apple StoreGoogle Play Store
本棚

ホーム

本棚

検索

ストーリーを書く
本棚

通知

本棚

本棚