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"しあわせ"とはなにか。〈創作ズ過去編〉

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"しあわせ"とはなにか。〈創作ズ過去編〉

4 - 報われない、でも.〈メイラスト〉

♥

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2023年05月18日

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ガラ……


「やほー、さっきぶり。」

「ん……」

「珍しいね、教室来いだなんて」

「話があって」


ほんとに珍しい。クロは最近、僕と話す時なんだかぎこちないし。……話。いい話かな。それ、とも……


「で、話ってなに?いい話?告白?」

「……悪い話、かもな」

「…なんかあったの?」



「メイ、俺のことが─」


─好き、なのか?


「……ひゅ、」


一瞬、頭が真っ白になる。なんで知って……るの。


「4月の…同学年として初めて話した日のこと、覚えてるか?……その後、なんとなく向かった屋上で、メイを見た。……俺と付き合えるかな、って言ってたのを」


あー、終わったんだ。終わりなんだ。

この恋は、ここで切れる。……そう確信した。


「…そうだよ。そうだ、その通りだ。……ごめんね、気持ち悪いよね、同性愛者なんて友達にしたくないよね、ごめんなさい、恋なんて、好きになったり、して……」


今まで隠してた感情が、一気に溢れかえる。

ごめんね、あと少しだけ、付き合ってね。クロ。


「え、っあ、……その傷…?」

「これぜんぶ僕がつけた傷だよ。勝手に妄想して、辛くなって…」

「……」

「…無理に言葉かけなくていいよ。どうせ、今日で全部終わる。ぜんぶ、ぜんぶ無くなる。……君への想いと君との思い出、全部消すから。」

「全部消す、って……」

「…やっぱり、忘れて。…あと、もう関わらないで。」

「え?いや、…嫌だ。なんで……俺はメイと……メイのこと…好きになった、のに……」


「そうなんだね。」

……好きになった、か。じゃあ、両片想いで、両方同時に失恋だね。

苦しいけど、やっと解放されるんだ。……だから。


「……ごめん。ごめんね。僕の元好きな人に、迷惑かけたくないんだ。…さようなら。もうしばらく戻らない。」


その言葉だけ残して、僕は教室を飛び出してしまった。





(なんであんなこと言ったんだろ…)


それから二ヶ月後。すっかり不登校になった。

今でも、あの日のことを後悔している。

目の前には─ロープと傷だらけの手。……そう。今から血だらけで死ぬの。

自傷は落ち着く。なんか、生きてる心地がする。今から死ぬけど。


……今日は、クロと初めて出会った日。初めて、授業を寝て過ごして……初めてが多かった日。


ふと、いつかの会話を思い出す。



─ね、くろ。僕ね、自殺するならクロと初めて出会った日にしたいな。

─どうした……?そんな急に。

─思い出の日を、記念日にするの。できれば心中したいな。くろと。

─えぇ…



「う”、っ……!おえ”ッ、げほ、……ふー、っ、ひゅぅ、」


……死のうと思ってるけど、さっきからずっとこの調子だ。吐き気がやばい。

飛び降りの方がいいかな。首吊りは苦しそうだし、体の中のもの全部出るって言うし。ばっちい。


「やっぱ高い……5階だから……」


僕が住んでるのはマンションの5階。飛び降りるのにはぴったりな場所だ。

ベランダに吹き抜ける風が涼しい。僕、この中で死ぬのか。


「…死ねる」


……ねえ、クロ。会話の中でも、いっぱい伏線を貼ったよ。

あの映画の話、覚えてる?あれね、僕の理想の予定そのまんま。

君が助けてくれると思ったから。

…でも、


「……助けてくれなかったね。」


……理想の押し付けすぎかな。

でも、これが最後のわがまま。ごめんね。


手すりに手をかけて、登ろうとした時だった。




「メイ!!!!!」


─振り向くと、真っ直ぐな瞳と目が合った。

走って来てくれたのか、息が上がっている。



「くろ……?」


「はあ、は、っ、間に合った……か?」

「……来てくれたんだ……!きみなら来てくれると思ってた…よ……」


……僕の体が、あたたかい腕に包まれる。

いつもみたいに結んでいない黒い髪が鼻をくすぐった。


「ごめん、ごめん……!何も助けられなくてごめん…!辛いはずなのに、気づいてたのに、助けられなくて…!」


鼻をすする音が聞こえた。クロの声が漏れる。泣いてるんだ……だめ、泣いちゃだめ、もらい泣きしちゃうよ……


「……助けてくれたよ、君は。えへへ、嬉しいなあ。あったかくて…一人の人に、こんなに愛されてるんだって、僕は生きていいんだって、君に気づかせてもらえた。」

「…助けられた、のか……?」

「うん。助けてくれた。ありがとう……!」


それから5分くらい、ずっとクロの腕の中で泣いた。

…今までの気持ち、全部さらけ出すみたいに。


「……あ、ごめん…俺ハグなんかして…」

「あ、ちょっと待って。離さないで……」

「え?」

「……僕、今とっても幸せ。恋が叶ったみたいに。でも、クロとは恋人じゃない。……両想いだけどね、もうそこで止めたいと思うんだ。一線を超えちゃ、いけない気がして。だから、この恋はもう終わり。このハグは、両想いのちょっと可哀想な2人として、最初で最後のハグ。これからは、親友以上恋人未満、ってところで、一旦止める。でも……」


クロと離れて、ベランダの前に立つ。ステージに立つみたいに。

……あるいは、結婚式で新婦を待つ新郎みたいに。

ボロボロのぬいぐるみの目が、夜の光を反射してきらきら輝いている。

2人を結ぶ指輪のように、ね。


「いつか、この恋が普通になるまで待ってて。そしたら、迎えに行くから。それまで待ってて。いつか絶対……約束してくれる、?」


……クロが微笑んだ。ふわり、という表現が一番似合う、優しい笑み。

ああ、この子に恋してよかった。この人を、好きになって、良かった。


「約束、だ。それまで誓いのキスはお預けだな」

「……あはは、そうだね」






「……よし……!合格だ!」

「おめでとう!やったね。……てか、どこだっけ。」

「えと…”蒼ヰ高等学校”ってとこ。」

「え、そこから推薦来たんだけど」

「……え?…ということは……」

「…一緒だ!!やった!!!嬉しい……!!!」


ほんとに嬉しい。これからまた3年間、クロと。初めて少女漫画のような恋をして、初めてあれだけ一緒に泣いた子と。2人でまた過ごせる。

思わずハグをしてしまう。……もちろん、友達としてだけど。

だって、恋人としてのハグはまだお預けだもんね。


「うわ、っ!?」

「やった、やったあ!嬉しいなあ。ほんとに……えへへ…」

「……やったな。」

「これからもよろしくね、……クロ!!」



…普通に恋としては報われなかったけど。

一人の同性愛者が繰り広げる人生の大体…5歩目ぐらいの終盤?

……としては、いい終わり方になった。

きっと、僕はもう1人で寂しがることはない。



「へへ…僕、今とっても─」


─幸せだ!







制作・著作

━━━━━

ⓐⓦⓞ



ENDROLL


如何でした?

私としては結構な力作

はやく同性婚認めないんすかね…

えとまあ、主な出演者は─


〈同性愛者/主人公:メイ〉&〈██に悩まされる青年:クロ〉


でした。

ぜひこの2人に拍手を

88888888888888

では

さよーならー

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