突然だが、友達が変だ。
まず朝からずっとぼーっとしてる。普段はそんなことないのに。
そんで急に顔を赤く染めては「いやそんなんじゃないし!」と聞いてもない弁解を始める。
寝不足なのか、授業中も居眠りしている。
さすがにおかしい。
「…なぁ、お前今日どうしたの」
「?な、なにが」
「いやいや、想今日ずっと変だから。絶対なんかあっただろ」
「い、いやなにも…. 」
と想は視線をそらそうとしたが、こう続けた。
「や、友達の話なんだけど。俺じゃなくて。」
「おう」
こいつの話だな。
「憧れてた人と初めて話してから、気づいたらずっとその人の事考えてたり、胸が締め付けられたりする….らしいのな」
「…なるほど?」
“憧れてた人”ってつまり、想が前言ってた迷子助けてた先輩だよな?会えたってことか?
….なんでいってくんないの
「光はこの…友達の気持ち、なんだと思う?」
「いや恋だろ。」
思わず即答してしまった。
「こ、鯉?!」
「恋な。動揺しすぎ」
こいつが先輩への気持ちを恋だと自覚したことは褒めてあげたいし、応援してあげたい。
….けど!!再会できたことくらい教えてくれてもいいだろ!そりゃ拗ねるわ想の馬鹿野郎!!!!
「…なぁ、光なんか怒ってる?」
「別にー。せいぜいがんばれよー」
「ありが…いや俺の話じゃないから!」
俺だってもっと想の話深堀したいけど!!少しくらい冷たくしなきゃわかってくんねぇし!!
「じゃーな、俺体験入部行くから」
「ちょ、待て光!!」
「何」
「こ、これ!きもいかもしんないけど!」
「….ミサンガ?」
「今日バスケ部行くんだろ、部内試合活躍できるように買ったんだ。いつもお世話になってるし」
「…わざわざ?」
「あとな、いっぱい話したいことあったんだ。一番に光に話したいこと。でも話してるうちにミサンガのことも言っちゃいそうで。こういうのはサプライズがいいと思ったから!」
….だから先輩と再会できたことも言えなかったってことか。
「….なんだよ」
「え?」
「お前が当たり障りのない会話ばっかするから、信頼されてねえのかと思ったよ!!」
「いやそんな訳…!」
「くっそ拗ねて損したわ!あとミサンガめちゃくちゃ嬉しいわくそ!!!!ありがとう!!」
「あのさ、明日放課後遊び行こーぜ!話したいこと、ほんとにいっぱいあるんだ」
「もちろん。次は”友達の話”はナシでな?」
「…光おまえ気付いて…?!」
気づかねぇ方が無理あるだろ
「さぁなー笑」
…あー。んだよこのぶきっちょが。
サプライズ隠してたからすぐにでも話したかったであろう先輩のことも話せなかったって..。
俺は、このどうしようもなくバカで不器用で、愛しい親友を心底眩しく思った。
いっちばん近くで応援するしかねぇな。
「試合、頑張るから見に来いよな」
「行くに決まってる」
軽くグータッチした後、俺はひと足早く教室を出た。
(….頑張んなきゃな)
「あ、あの!西垣くん!!」
振り返ると、隣のクラスでかわいいと噂になっている佐伯さんがいた。
「私ずっと、西垣くんのこと気になってて…。連絡先交換しませんか…?!」
(うわまじで可愛いなこの子)
…..
「…めっちゃ嬉しい!ありがとね。でも今は部活に集中したくて。ごめんな〜…」
「そうですか….でもやっぱり諦めきれません!!お願いします友達からでも…! 」
「いや、佐伯さんだっけ?めっちゃ可愛いんだからもっといい人いるよ!ごめんなほんと」
「名前…!覚えててくれたんですね…!」
…なんかやばいかも
「可愛いって有名だから聞いたことあったんだよ」
「でも覚えててくれてるってことは、西垣くんも少しは私に興味あるんじゃ…」
うーん!やばい!逃げられない!
傷つけたくはないし、どうしよ…
部活遅刻する….
「おーい!お前ここにいたのか!!」
遠くから俺を指して走ってくる。誰だ。
「え、いやだr…..」
「な!購買行く約束だろ!早く行こうぜ!」
あ、まさか…。
「な、なんなんですか!今私と西垣くん話してる途中じゃないですか!」
「ん?あぁごめん。西垣クンは俺と予定あるからさ。面倒なのは今度にしてくれ」
そうして先輩に手を引かれ2年フロアまで駆けた。
「あの….助けてくれたんですよね、ほんとありがとうございます…!!」
「ついでだよついで!」
…なんのだよ
「ほんとありがとうございます、、あの、、名前、、」
「あぁ、2年E組 新田だ!!!」
E組って特進…!!すげぇ!!
「新田先輩、まじでありがとうございます! 」
「もーいいって!お前あれだ、俺の後輩にそっくりだよ!」
「あ、あの、まじで仲良くなりたいんで、連絡先交換しませんか?」
「もちろんだよ西垣クン!」
連絡先をもらい、部活の時間が迫っていることに気づいた。
「あ、すいません部活あって!!まじでありがとうございましたまた連絡します!!!」
「おう!頑張れ!!!」
そうして俺と先輩は別れた。
急がなければ。頑張ろうと気合を入れるため、友達欄に追加された先輩の名前を見た。
(新田…圭….)
少しだけ、心臓がうるさかった。