テラーノベル
アプリでサクサク楽しめる
山城の言葉が、冷たい回廊に虚しく響く。
目を閉じ、覚悟を決めた弟分の無防備な首筋。
俺がこの刃を振り下ろせば、志摩は助かり
俺は「黒い百合」の正当な後継者として、この国の闇を統べる力を手にする。
拓海が、かつての面影を残したまま、慈悲深い聖者のような顔で俺に手を差し伸べた。
「さあ、和貴。過去を切り捨て、神になれ。君の親父が成し遂げられなかった、真の支配を君が完成させるんだ」
俺はゆっくりと、脇差を高く振り上げた。
刃が燭台の火を反射し、山城の頬を白く照らす。
「……兄貴、ありがとうございました」
山城の短い呟き。
次の瞬間
俺の刃は空を切り――自分自身の左掌を深く切り裂いた。
「……!?何をしている、和貴!」
拓海の顔が、初めて驚愕に歪む。
俺は滴り落ちる血を山城の顔に振り払い
その熱さで奴の目を覚まさせた。そして、血まみれの拳で、自分の胸元を強く叩いた。
「……拓海。お前が本物だろうが、組織の作った偽物だろうが…そんなことはどうでもいい」
俺の声は、地響きのように低く、揺るぎなかった。
「親父が俺に教えたのは、支配のやり方じゃねえ。……自分自身のケツは、自分で拭くっていう、ただそれだけの筋だ!」
俺は脇差を逆手に持ち替え、山城の足元の鎖を、残った力のすべてを込めて叩き切った。
「山城、立て!死ぬなら、俺を庇って死ぬんじゃねえ。俺の背中を守って、一緒に生き残ってから死ね!」
「……っ、兄貴! はい……はいッ!!」
山城が、涙を拭い、床に落ちていた金属の棒を武器に立ち上がる。
「……愚かな選択だ。和貴、君は今、この国すべてを敵に回したんだよ」
拓海が合図を送ると
回廊の影から、かつての俺と同じような「黒い百合」の暗殺者たちが次々と這い出してきた。
「国が敵?上等だ。……新宿の野良犬はな、檻がデカければデカいほど、噛みつきがいがあるってキャンキャン喜ぶんだよ!」
俺は左手の傷の痛みを怒りに変え、拓海の喉元へと肉薄した。
友情も、過去も、運命も。
すべてを斬り伏せて、俺は自分の道を往く。
最後の反撃が始まった。
コメント
0件
👏 最初のコメントを書いて作者に喜んでもらおう!