私「今日も仕事?」
丈「おん。お前は?」
私「私が仕事な訳あるか。普通の学生やわ」
丈「ちゃうわ!放課後の予定聞いてんねん!部活とかあるやろ、」
私「あぁ、部活だよ」
丈「…部活の後は、?」
私「なんも無いよ。」
丈「ほんなら家帰ったら連絡してや」
私「え、なんで?」
丈「渡したい物あんねん。」
私「ほう…了解。」
私と この 藤原丈一郎 は、古くからの幼なじみである。
家もお向さんで親も仲もいいし、私達もそれなりに仲良くしている。
ちなみに丈一郎は、某アイドル事務所で働いているためいつも忙しくしている。
学校に来るのも遅かったり、早く来ても早退したり。
この間は単位が足りるのかと心配の声を上げていた。
私「渡したい物…なんやろ」
今日も丈一郎の家に呼びつけられそうだなぁ、と考えながら部活を終え、帰路に着く。
私「うっ、まだ寒いなぁ」
季節は冬終盤。
というかもうすぐ春で、もうすぐ学年もひとつ上がる。
女『ねぇ、やっぱさ…』
女2『うん…あげたいな、藤原先輩にチョコ!』
私「…あぁ、もうそんな時期か」
女『先輩は好きな人にチョコあげないんですか!?』
私「え、私?」
女2『てか、先輩って藤原先輩と幼なじみなんですよね…?チョコ、預かってもらえたりしますか…?』
でた。この展開。
私「自分で渡した方が丈一郎も喜ぶんやない?」
女2『私らがあんな天の上の藤原先輩と直接接触する勇気なんてありませんよ!』
私「なんよそれwほんなら預かるけど、来年は丈一郎も私も高3で卒業やねんから、そん時は渡すなら自分で渡しや〜?」
毎年、毎年、毎年。
丈一郎に渡るチョコの半数は、私を経由して本人に流れている。
丈一郎は “受け取らなくていい” といつも嫌な顔をして私の腕の中にある大量のチョコを見るが、そんな事言われても全てあなた向けなのだから仕方ない。
丈『チョコですか!?全く貰ったことないですね〜ww、俺モテないんですよ、ほんまに。』
私「何がモテないだ。」
テレビでバレンタイン話題をしているので見てみると、丈一郎がたまたま出演していた。
雑誌でもブログでもテレビでもどこでも、自分はモテないと発言している。
私「…なんなのかねコイツは。」
なんかイラつく。モテるくせに
ピコンッ
私「あ、」
“今撮影終わったから帰る。俺ん家で待ってて、おかんおるから。”
私「やっぱ家か…」
帰宅し、連絡を入れたらやはり丈一郎から家に来いと連絡。
私「了解…っと、おかあさーん!丈一郎ん家行ってくるからー!」
母「あら!ほんならこれ持ってってやー!ぎょうさん貰ったんやわぁ、イチゴ♡」
私「え、こんなに?どこで貰ったんよぉ…3パック持ってくで」
母「ええよええよー!今度大橋くんと食べぇ言うといてー!」
母は相変わらず丈一郎の友達、大橋和也くんが大好きである。
私「丈一郎と大橋くんは家遠いやしあんま会わへんやろ」
母「ええのええの!丈くんが家に呼ぶやろぉ!」
私「彼も私のように呼び出されるのか…」
丈一郎は人の家には行かず、何故か自分の家に相手を呼び出すので結構ダルい。
私「よしっ行ってきます」
とりあえず制服から着替え、丈一郎の家へと向かった。
丈「あ、きた」
私「え、なんでおんの?帰ってくんの早ない?」
丈「会場近かってん」
私「そ、あぁさっきお母さんにイチゴー」
丈「おぉ、って3パック?多ない?w」
私「大橋くんと食べって」
丈「なんで大橋なん」
私「うちのおかん大橋くん好きやん。」
丈「あぁほんま?知らんわ」
私「そうなん?よう覚えとき」
そんな会話をしながら、お母さんに挨拶をして彼の部屋へと足を進める。
丈「あ、あげたい物持ってくるから先行ってて」
私「あぁ、分かった」
そういえば渡したい物があるんやった。
なんやろ…誰かからの預かり物かな?
私「誰やねんそれ。」
丈「え、知り合いとちゃうん?」
ビンゴだった。
誰かからの預かり物で、私に渡して欲しいと言われたようだが…
私「ホンマに知らん。私男友達とか少ないもん」
丈「いや結構居るやろ。あのメガネの人やで?」
私「う”〜ん…ほんま分からへん」
丈「ほんまかよ…怖」
私「私も見ず知らずの人から貰った物なんか怖いわ…どういう経緯で預かったん?」
丈「えっと…」
話を聞くと、2日前の放課後友達と一緒に帰っていたところある男子生徒に声をかけられたらしい。
そして木で隠れるような場所まで連れて行かれ、袋を私に渡すよう頼まれたそう。
中身は知らないけれど、見た目が綺麗だったので食べ物だと悪いと思いすぐに渡してくれたそう。
私「…開けてみる?」
丈「俺ん家で開けんといてや…爆発とかやったらどうすんねん、」
私「そんなん私になんの恨みがあんのよ!?」
怖いな…見た目も聞いたけどほんとに知らない。
名前だって、苗字しか聞いてないけれど知らない。
私「…開けんで」
丈「…おう」
とにかく中身が重要だと言うことで開けることに。
私「…せーのっ!」
丈「ッ!」
私「…え、」
そこに入っていたのは手作りのクッキー。
それと共に1つの手紙。
丈「どう見ても手作りやな…ちょっと食うてみる?」
私「う、うん…」
手紙を1度置いて、ガサガサとクッキーを取り出してみる。
私「スッ…いい匂い」
丈「ほんまやな、クッキーのええ香り」
私「…いただきm(」
丈「ちょっとまって、」
1度食べようと思い、クッキーを口の目の前で運んだ。
すると突然丈一郎が私の腕をガシッと掴んで止めた。
私「え、なに?」
丈「…それあかん」
私「え、?なんで?」
丈「…それ1個かせ」
そう言われ、手元にあったクッキーを渡す。
私「何…?なんか変?」
丈「…割るで」
私「え、うん」
そして丈一郎がクッキーを2つにパキッと割った。
私「…ひっ!」
丈「あかんわ、、」
そのクッキーの生地には大量に練り込まれた髪の毛が見えた。
私「いや…ぃゃ、」
丈「大丈夫やから、落ち着け、おい」
私「ハッ、いや…私ッ…ぇぇ、?」
丈「おい落ち着け、大丈夫やで、俺がおるから」
気持ち悪い。
その一言に尽きるほどの破壊力だった。
これを口に含んでいたら、飲み込んでいたら。
私「ハッ、ハッ、う”っ…」
丈「大丈夫か、気分悪いな。ここ吐いてええから、」
私「う”っ…は、大丈夫…ッ」
丈「あかんやろ、吐いた方が楽やで?深呼吸しよ。」
呼吸がだんだん荒くなってきて、丈一郎が背中をさすりながら袋を持たせてくれる。
少しだけ吐いてしまったけど、あまり食べておらず胃液だけだった。
私「はぁ…これなんで…私何かしたのかな。」
丈「分からへん…けどこんなもん歪んだ愛やろ。」
私「…手紙、」
丈「読んだらあかん。お前はやめとけ」
私「でも…」
丈「…俺が守ったる」
私「え、?」
丈「俺が、、こいつから守ったる。やから安心しろ」
私「あり…がとう、」
丈「こんなもん捨ててまお。俺が無闇に受け取って渡したんが悪い。」
私「そんな…丈一郎は悪くないやろ。」
丈「俺も悪いねん。お前に確認するべきやった。」
私「そうかもやけど…私バレンタインはいつも丈一郎に確認せんと渡してるやん。」
丈「それとこれとは話がちゃうねん!これはホンマにあかんやつや。お前自分がやばいん分かってるか、?こんな奴に好かれてんねんで、?」
私「分かってるけど、」
丈「俺、お前が危ない目に合うんほんまにいややねん。」
私「丈一郎…」
丈「守るから…俺のそばにおって?」
そう言って私の手をぎゅっと両手で包んだ。
彼の手は暖かくて、一切の震えは無い。
真っ直ぐな瞳で見つめられている。
あぁ、好きなんだ私。
私「…守って」
丈「任せて、」
ギュッと優しく彼の腕に包まれて、この怖い経験をジワジワと緩和してくれているように感じた。
私「これって付き合うって事なん?」
丈「えっ…ええの?」
私「嫌ならええよ」
丈「嫌やないわ!好きでもない女本気で守ろうとせんわ!」
私「ふは、それはそうやな」
丈「…こいつは俺が明日シバいとく。」
私「大丈夫、?なんかあったら、」
丈「なんかあってもお前のためやからええよ。」
私「…かっこぃ、」
丈「せやろ」
私「うわぁ…」
丈「なんでやねん!」
私「なぁ、なんかあったら怖いからキスしといてや、今のうちに。」
丈「死ぬみたいやんけ。」
私「万が一やん。心配やから」
丈「…目瞑って」
初めてのキスは一瞬で、恥ずかしいとかそう言うのより嬉しいが強かった。
1回のキスは2回、3回と続いて、少し呼吸しようと口を開けると向こうも口を開けた。
丈「…深くしてもええ?」
私「そういうの聞くんや。」
丈「さっきあんな事あったんやから怖がられたら嫌やん。」
私「優男だねー、いいよ。丈一郎なら怖くない。」
丈「…好きやで」
そう言ってお互い深く口付けながら、床へと倒れ込んだ。
《守る》
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