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顔に飛び散った雫がぽたぽたと垂れる。
それがたまたまされた行為で、しかも夏だったのなら笑い飛ばせるだろうけど、
夏が終わり、涼しくなってきた頃にしてきた行為だと考えると、悪意しか見当たらない。
しかも、目の前には校則ギリギリな長さのスカートをはき、水滴が垂れているバケツを持ちながら仁王立ちをしている派手な女子生徒。
いわゆるいじめの現場だがけど、被害者は私ではなく、加害者側が取り巻くお姫様だという人が多いだろうな。
『私たちは悪者を成敗しているだけだ』と正義を語って、証拠もないのにお姫様のツラツラと並べる嘘を信じ込み、利用されている。
そんな皮肉のような言葉が脳内を駆け巡るけど、実際の私は、足をプルプルと振るわせて、泣かないように歯が食い込むくらい力を入れて唇をかんで、引きつらせた笑顔で笑っている。
私は雑巾をもってきて、片付けを始める。
見っともないけれど、笑顔だけは忘れない。
私に味方はいない。けれど、いつも夢に出てくる男の子が、いつも言ってくれる言葉。
『僕は君の笑顔を見ていると力が湧いてくるんだ。だから、ずっと笑顔でいてよ。』
遠い記憶の中にいる男の子の姿が、脳に染みついている。
空の色みたいで綺麗な瞳に、お日様みたいな金色のサラサラした髪の男の子。
霞んでいるところもあるけど、大事な思い出。
「は、本当生意気」
「その態度ムカつく」
そう言って、彼女たちは自分の席に戻っていった。
良かった、今日はあの人たちが来るのが遅い日で。
そう、仲が良かった友だちに思ってしまう自分に、少し胸が痛くなった。