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朝のキャンパスは、いつもと変わらないざわめきに満ちていた。
けれど、すちの目に映る世界は、少しだけ色を失っていた。
(……来るよね。今日も)
講義室の扉が開き、見慣れた姿が視界に入る。
――みこと。
目が合った。
一瞬、みことの目が揺れた。
すちは、ゆっくりと一歩踏み出した。
「みこ――」
「……っ!」
呼びかけた瞬間、みことは小さく肩をすくめるようにして、横を向いた。
まるで、逃げるように別の席に向かう。隣には、こさめとらんがいた。
(……避けた?)
心の奥が、静かに軋んだ。
その様子を見ていたいるまとひまなつが、隣からすちの肩を叩いた。
「お前ら、喧嘩したのか?」
「めっちゃ空気ピリピリしてんぞ……」
すちは小さく息をつき、目を伏せた。
「……俺が、言いすぎたんだ。そしたら、みこちゃんが“嫌い”って言ってきてさ」
「「は?」」
いるまとひまなつが、同時に驚く。
「え、あのみことが?あんなにすちのこと大好きオーラ出してるのに?」
「だから余計にわかんなくなって……俺、怒ったこと、正しかったのか……今でも正直、自信ない」
ひまなつはうーんと唸って腕を組んだ。
「お前さ、独占欲強すぎて、たまに自滅するよな。大事に思うのはわかるけど、言い方ってあるじゃん」
いるまは、静かに笑いながらも優しく言った。
「みことの“嫌い”って、きっと、本気じゃないと思う。でも、本気で傷ついてるかもしれないから、焦らずにちゃんと話せ」
すちは唇を噛んで頷いた。
「……みこちゃん、泣いてた。俺、あんな顔、見たくなかったのに」
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「ねぇ、みこちゃん……大丈夫?」
こさめがそっと声をかけると、みことはぎこちなく笑った。
「うん、平気……」
「ウソ下手すぎか。顔死んでるよ?」
らんが呆れたように言った。
みことは、うつむいてぽつりと呟いた。
「昨日……すちに“嫌い”って言っちゃった」
こさめとらんが、同時に息をのむ。
「……みことが?それは……勇気っていうか暴走っていうか……」
「違うの、怒られて、すごく自分が悪いのわかってて……でも、言われた瞬間に、怖くなって。反射的に……」
言葉にした途端、目頭がじわっと熱くなる。
「本当はね、嫌いなんかじゃない。大好きなのに……謝れなくて……どうしようって」
こさめが、そっと手を握る。
「焦らなくていいよ。でも、その気持ちが本物なら、絶対すちくんもわかってくれる。ちゃんと向き合ってみよ」
「お前の“好き”はちゃんと強いから。絶対、届くよ」
らんも、珍しく真面目な顔で言う。
みことは涙を拭いながら、うなずいた。
「……ありがとう。がんばる、俺」
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