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「え? ウォルドさんいないんですか?」
「はい。何でも王都に呼ばれたとかで―――」
羽狐たちの里帰りを済ませた翌日……
地穴とやらの討伐報告と、それを
研究素材とするであろうパック夫妻―――
あと鑑定してもらうため、あの老人に
来てもらおうと思っていたのだが、
冒険者ギルド支部に来たのは、パックさんと
シャンタルさんだけで……
そこでウォルドさん不在について知らされた。
「あー、多分アレだろう。
この前シンが解いたとかいう封印の……」
ジャンさんが白髪交じりの頭をガシガシと
かきながら話し、
「封印?」
「それは何でしょうか?」
互いに見事な銀髪を持つ夫妻が、その言葉に
食い付く。
ギルド長は一瞬『しまった』という表情を
見せるが、
「まぁいいか。
しばらくしたら、2人にも話が回って
来るだろうし。
この前、コイツが王都に呼ばれた事が
あっただろ。
そン時に、封印された扉が見つかったとかで、
それをシンが解除したんだ」
それを聞いた夫妻は目を輝かせ、
「ほう……」
「それはそれは……
さぞかし貴重な物が眠っていそうですねえ」
さっそく研究者としての性がうずくようで、
ドス黒いオーラをまとう。
「あの地穴とやらを鑑定してもらうつもり
だったッスか?」
「それはタイミングが悪いと言いますか」
同室にいるレイド夫妻が話を元に戻す。
「いえ、私が鑑定して欲しいと思っていたのは
別のもあって」
そう言って、キクラゲと舞茸らしき物を取り出す。
「何だこりゃあ、キノコか?」
「その一種ですけど、私の世界にあった物と
同じかどうか……
毒が無ければ食べられるんですけど」
ジャンさんの質問に私は答え、
「いやー、でもこれだけじゃわからないッス」
「アタシたちから見ると、ただのヘンな形の
キノコにしか」
褐色肌の夫と丸眼鏡の妻が、それに注目しながら
語り、
「パックさんはわかりませんか?」
「すでに体内に入って発動しているのなら、
わかると思いますけど……」
食中毒前提かあ。
そこまでして食べたくは無いな。
「まあ、これはウォルドさんが帰ってくるまで
待ちましょうか。
地穴の方はどうなんでしょう。
アレ、魔物ですか?」
すると夫婦揃って『んー』と悩む声を出し、
「シャンタルは見た事ある?」
「擬態する魔物の一種だと思うけど……
地面に化けるのは見た事無いです。
まあどちらにしても貴重な研究素材では
ありますのでウヘヘヘヘ」
すでに『無効化』しているとはいえ、
よくアレを調べる気になるなあと感心する。
「えぇ……
結局新しい食材はお預けですか?」
ミリアさんが残念そうに話す。
うーん。
万が一を考えて、パックさんに浄化して
もらえばいいかとも思ったんだけど。
ただいざとなると、そんな事で頼むのもなあ、
と思っていると、
「パック君に浄化してもらえばいいのでは?
それなら安心ですし」
「そうだね。
それに、シンさんの持ってきた食材にも
興味がありますから。
それに以前の大根おろしや刻みネギも
美味しかったですし」
パック夫妻の申し出に、渡りに船とばかり
私は頭を下げ、
「そうですね。
まだ食べられるかどうか決まったわけでも
無いので。
身内だけでいったん試食してみますか。
ギルド長、支部の厨房を使っても?」
「おう、そういう事ならバンバン使えや」
組織のトップの許可を得て―――
解体場にいるメルとアルテリーゼ、そして
職員に預かってもらったラッチを呼んで、
移動する事にした。
「コリコリしてる。
面白い食感だね」
「だが、この歯応えは麺類や汁物には
ちょうど良い」
「ピュー」
厨房でさっそくそれらを調理し、食堂で家族、
そして限られた身内に振る舞い―――
まずメルとアルテリーゼ、ラッチが食べて
感想を口にする。
キクラゲはラーメンやお味噌汁に、
そして舞茸は天ぷらにして、ソバ・ウドンに
入れてみた。
「キノコの天ぷらが、こんな味になるなんて」
「味も食感も新感覚ですね、パック君」
パック夫妻は舞茸を天ぷらにした天ソバを味わい、
「ラーメンの具として定着しそうだな、
このキクラゲとやらは」
「舞茸の天丼もなかなかいけるッス!」
「あぁ、お味噌汁は何でも合いますねぇ……」
と、ギルド組にも好評のようだ。
「あとはこれが無毒であると証明出来れば、
定期的に採取出来るんですけどね」
「栽培は出来ないの?」
私の言葉に、人間の方の黒髪黒目の妻が聞き返す。
「出来なくはないと思うけど……
キノコだからなあ。
やり方がわからないし、採ってきた方が
早いかな」
「そうだのう。
あの山も広かったし、適度に採ってくれば
よかろう」
「ピュ~」
と、ドラゴンの方の妻がその長い黒髪を揺らし、
私に同調する。
こうして、キクラゲ・舞茸の試食はひとまず
終わり―――
いったんウォルドさんの帰りを待つ事になった。
「う~む……」
「どうしました、ウォルドさん」
その頃、王都・フォルロワでは……
すっかり髪の無くなった頭をかきながら、
老人が本職の『鑑定』を行っていた。
ウィンベル王国・王宮―――
その直属研究機関の一室で、彼は依頼された物の
『鑑定』作業をしていたのだが、
ある金属製の箱を前にうなっているのを、
他の研究員が心配して声をかけたのだ。
「いや、今回発見されたという品々じゃがな。
どれもこれも、『魔法解除済み』『解呪済み』
となっているのは何でじゃろうかと」
「そうなんですか?
でもそれなら一応、安全って事ですよね?」
「それはそうなのじゃがなあ」
実際はシンが扉の封印を『無効化』した時、
部屋の中身までその効果が及んだのだろうが……
彼や研究員まで、その事を知らされている
わけではなく。
(■155話 はじめての そつぎょうしき参照)
「しかし、どれもこれも古い物じゃ。
公都『ヤマト』で鑑定したドラゴンの物も
相当古かったが」
「研究所の見解では、おおよそ150年前の物と
見られているらしいですけど」
「そうじゃな。
ウィンベル王国の……多分、二代目から
四代目の時期の物じゃろう。
さて、この箱はいったい」
と、ウォルドが箱に手をかけると―――
カチリ、という音と共にフタがゆっくりと
わずかに口を開いた。
「ふぅむ、これは……」
「本ですね。
これも150年前の物だとしたら―――」
「解読はワシの鑑定魔法じゃどうにもならん。
専門家を呼んでくれ」
「ですね」
こうして鑑定により、封印されていた部屋の物の
調査は進んでいった。
「150年前に先祖が残した物……
いったい、どのような意味があるのか―――」
王宮の執務室らしき部屋で、三十代と思われる
金髪の青年が、事務処理をしながら独り言の
ようにつぶやく。
彼の名はラーシュ・ウィンベル。
ウィンベル王国の現国王。
今はランドルフ帝国の脅威、最恵国待遇の
ライシェ国の対応、内政にと……
様々な政務を執り行っていた。
そこへノックの音がし、
「入れ」
「失礼します!」
軍服に身を包んだ男が、いかにも緊急事態という
面持ちで入ってくる。
「何事だ?」
「ハッ!
我が国のワイバーン騎士隊―――
早期警戒していた一騎が、東側の海上に
二艘の大型船を発見!
また、小型の船が海岸に接岸しており、
範囲索敵によるとすでに10人前後が
上陸している模様。
沖合の大型船から来たものと思われます!」
ラーシュはその報告を聞きながら、
指先でトントンとテーブルを叩き、
「上陸地点はどの国の領地だ?」
「ハッ!
それが、未開拓地のようでして。
それで発見が遅れたようです。
今はもう一騎、早期警戒用の騎士団員が
張り付いておりますが……
どうも我が国とライシェ国の未開拓地を
抜けて、新生『アノーミア』連邦方面へ
向かっているのではないかと」
報告を聞いていた国王は、しばらく両目を
閉じていたが、
「戦力としては少な過ぎる。
10人前後という人数も、偵察もしくは
何らかの工作がせいぜいだろう。
意図的に未開拓地を通っているのであれば、
こちらを刺激しない意図であるとも考えられる」
「やはり、ランドルフ帝国の人間でしょうか」
「恐らくそうだろう。
そして多分、行先は新生『アノーミア』連邦。
ランドルフ帝国はあの国が帝国であった頃から
国交があったからな」
指示を待つ彼に対し、ラーシュは国のトップとして
発言する。
「監視は続けよ。
恐らく沖合の船は動かないだろうが―――
上陸した者たちとも合わせ、逐一報告しろ。
それと叔父上にもこの一報を入れるように」
「ハッ!
ただちに!!」
軍人は一礼すると、執務室を出ていった。
「さて……
多分、『使者』の役割も兼ねているだろうが。
友好的なものならいいのだが、な」
一人残った部屋の主は、思考の中に自分を
沈めていった―――
「まったく!
新生『アノーミア』連邦など、もう数十年前に
国交を最低限にした国ではないか!
もはや無関係も同然……
そんな国に、なぜワシ自らが出向かなくては
ならんのだ!」
チョビヒゲ、スキンヘッド、でっぷりした
体形の、いかにも身分だけは高そうな男が―――
悪態をつきながら歩く。
「ブラン副大臣。
今回はあくまでも亡命者に対する説明、
そして敵対意思が無い事を示しに行くのが
目的です。
決して挑発やうかつな態度は取らないよう
お願いします」
眉毛の上で紫の髪を綺麗にそろえた、
王族の女性がたしなめるように語る。
「フン!
ティエラ王女様、ワシはこの目で見た事しか
信じません。
貴女が何を見て騙されたかは知りませんが、
本国にはこのワシが『見た事』を、しっかりと
報告させて頂きますからな!」
「……どうぞ。
それと、急ぐ旅ではありませんから、
はぐれないように―――」
ため息が出そうになるのを抑え、彼女は
受け流すように答えるが、
身体強化を使っているのか、ブランはズンズンと
ティエラの言葉を無視して先頭を進む。
それを見ていた一行の一人がティエラ王女に
近付き、
「申し訳ございません、王女様」
そのブラウンの―――
ほとんど丸刈りと言ってもいいほどの短髪をした
中年の男性は、深々と頭を下げる。
「貴方が謝る事では無いわ、ティグレ。
……あのような方々を相手取り、御前会議にまで
わたくしの報告を上げてくださった事、心より
感謝しております」
彼はランドルフ帝国で最初にティエラ王女の報告を
受け取った人物で、上層部に掛け合うよう尽力した
軍部の人間である。
(■153話
はじめての ちょうさ(やかん)参照)
「そうそう、魔戦団副隊長。
お気になさらず。
正直なところ、ありゃ見た者じゃなければ
わからないってのもありますからな」
「それより……
見た後、アイツがどうなるかが見物ですよ」
アラフィフとアラフォーの従者、カバーンと
セオレムが、小声で話すと―――
王女と軍人は苦笑し、一行は道なき道を
歩き続けた。
「「「行ってきまーす!!」」」
早朝、獣人族やラミア族、魔狼やワイバーン、
ハーピーが入り混じった黄色い声が響く。
人間・亜人混合の子供たちが、アルテリーゼの
『乗客箱』に乗って王都へと発つ事になり……
その見送りに、公都のみんなが集まっていた。
「しかし―――
演奏メンバーを呼んだという事は」
私は上空へ飛び立つアルテリーゼと一行を見て、
隣りのギルド長につぶやく。
「何か『動き』があったんだろうな。
いきなり攻め込んで来たわけじゃねぇのは
わかるけど」
キクラゲ・舞茸の調理から二日ほどして……
王都フォルロワからワイバーンの定期便で、
ランドルフ帝国の使者を出迎えるために練習
させていた、子供たちを寄越して欲しいとの
一報が入ったのだ。
ただ日時などの詳細は無く、ランドルフ帝国の
ラの字も無かった事から―――
非公式もしくはおしのびの使者なのだろう。
または正式な使者が来る前の報せかも
知れないが……
ジャンさんの言う通り、何らかの動きが
あったであろう事は想像がつく。
「で? 今日はどうすんだ、シン」
「魔物鳥『プルラン』の、生息地の巡回と
回収でもしようかな、と」
「おー、じゃあ今日は鳥肉三昧だな!」
私の答えに、ギルド長は今夜の夕飯を考え始めた。
「ブラン様!
少し歩く速度を落とされては……
すでにティエラ王女様の一行とも離れて
おります!
いったん待って合流した方が―――」
「あちらにも道案内はおるだろう!
問題は無い!
あんな小娘のたわごとに付き合わされて、
こんな辺境の大陸に来ているのだ!
一刻も早く新生『アノーミア』連邦に行って、
少しは文明らしい生活をさせてもらわねば
割に合わんわ!!」
大陸の各国を刺激しないよう、未開拓地を通って
連邦へ進む彼らは、すでに二泊ほど野営を行い、
ただでさえ質の高い暮らしに慣れていた
帝国の外務副大臣に取って……
それはかなりの苦痛と言えた。
「腐っても『元』帝国だ。
広い風呂くらいはあるだろう。
まったく、こんな事なら船で待っていた方が
まだマシだったわい……ン?」
そこで彼らは、地鳴りのように地面が揺れている
事に気付く。
「な、何だ!?
地震か!?」
「あっ!
よ、避けてください、ブラン様!!」
従者の一人である兵士が叫ぶと同時に、
その揺れの主が姿を現した。
それは、巨大な球体の物が転がってくるように
迫って来て―――
目の前を三十メートルほど通り過ぎたところで
止まる。
彼らは地面に伏せるようにして、それを
確認すると、
「あ、あれは……!
ジャイアント・バイパーか!?」
「し、しかもジャイアント・ボーアに絡みついて
います!
恐らく戦っているのかと」
従者の一人が説明するように、巨大な蛇が
巨大なイノシシに巻きつき―――
そしてイノシシもまた、それを振りほどこうと
暴れ回っていた。
「戦っているのは見ればわかるわい!!
ど、どうすれば……
ワシの『業火魔法』で両方とも燃やせば」
「や、止めてください!
いくら水魔法の使い手がいるからと言って、
大規模な火災を引き起こしかねません!
そうなれば隠密行動がばれてしまうばかりか、
発覚すれば大陸国家との関係が……」
「うるさい!!
緊急事態だ、潰し合っている今がチャンス
なのだ!
決着がついた後では……む?」
と、そこへ―――
複数の話し声が聞こえてきて、
「ケイドさん、ここで大丈夫です」
「わかった!
リリィ、止まってくれ!」
そこへ、巨大な狼らしき魔物に乗った人間たちが
現れた。
「ま、魔狼……!?」
「まさかあれが、魔狼ライダー……」
先頭の赤髪の冒険者らしき男が、馬ほどの大きさの
魔狼に指示を出し、言葉がわかっているかのように
止まる。
彼の後ろに乗っていた黒髪黒目のアラフォーの
男に、少女のように見える若い女性が地面に
降りると、
「じゃあちょっと止めてきます。
お二人は、そこで待っていてください。
メルは援護を頼む」
「あいあいさ♪」
そして散歩にでも出掛けるかのように、
その男女は争い合っている魔物に近付いて行き、
「あ、あれだけで戦うつもりか!?」
ブランや従者はその光景を固唾を飲んで見守る。
いったいどんな強力な魔法、もしくは戦闘能力が
あるというのか……
数秒後―――
そんな彼らの予想とは正反対の出来事が
起こった。
「……んっ?」
「え??」
突然、周囲に静寂が戻ってくる。
それはジャイアント・ボーアに
ジャイアント・バイパー……
二体の巨大な魔物がその動きを止めた事を
意味していた。
しばらくすると、あの男女が手を振りながら
戻って来て、
「ケイドさん、リリィさん。
こっち終わりましたー」
「一応まだ生きているけど、大丈夫だと思うよー」
待機していた二人はそれを聞いて、
「瞬殺ですか……」
「さすがですわね。
でも、魔物鳥『プルラン』はどうしましょう?
別の獲物を仕留めたら戻すんですよね?」
いつの間にか、ダークブラウンの長髪をした
女性が加わっていて、
「え? あの女、どこにいたのだ?」
「ブラン様、さっきまでいた魔狼の姿がどこにも
見えませんが……」
遠くから身を隠して事の成り行きを見守っている
一行は、その展開の情報量に困惑する。
それに構わず彼らは会話を続け、
「戻す必要は無いかなあ……
結構増えてたし」
「そだねー」
「まあ多くて困る事は無いでしょう。
近隣にもおすそ分けするでしょうし」
「ボーアにバイバー、プルラン―――
2・3日はご馳走ですわね♪」
そこへラミア族の女性、さらに獣人族の男性が
走ってくる。
「シンさん、どうでした?
何だったのでしょうか?」
「あー、ジャイアント・ボーアに
ジャイアント・バイパーでした。
2体で戦っているところに介入して
倒しましたから。
それより、同行していた冒険者たちの
避難は終わりましたか?」
ラミア族の質問に彼は返し、
「それがですね……
一応公都には戻らせたんですけど、
『どうせシンさんが倒すでしょ』って、
緊張感が無いと言いますか」
「まあシンさんが向かったんですからね。
そいつぁ仕方ねぇですよ」
その会話は、遠く離れているブラン一行までは
遠く、詳しくはわからないが―――
とても巨大な魔物二体を倒したばかりの
雰囲気ではなく。
「あ、あの半人半蛇の女性は……
それに獣人族まで」
「まま、まさか―――
ティエラ王女様の言っていた事は……!」
彼女の報告を戯言、騙されたと思っていた
ブランは、目の前の現実に整理が追いつかない。
「どちらにしろ、持ち帰るのに人手が必要だから、
ケイドさん、リリィさん。
公都までひと走りお願い出来ますか?」
魔物を倒したであろう男が、若い男女に
頭を下げる。
「わかりました。
リリィ、頼む」
「はい、あなた。
……でも、気のせいかしら?
他の人間の匂いがするような」
彼女は首を左右に振って周辺を確認する。
「こんな森の中に人が?」
「ここ、未開拓地だけど―――」
人間の男女から否定的な意見が返ってきて、
「気のせいかも知れませんね。
大量の食料が手に入ったから、気が高ぶって
いるのかも」
そう言うとリリィは変化、もとい元の姿に戻る。
それを見たブラン一行は驚きを隠せず、
「う……っ!?
ひ、人が魔狼の姿に!?」
「えぇえ!?
も、もしかして最初に見た魔狼では」
「でも、人を乗せて走って来てましたよね?
という事は……」
そこで彼らは、人が魔狼の姿になったのではなく、
魔狼が人に変化出来る、という事を認識する。
夫であるケイドを乗せたリリィは、疾風のように
その場からいなくなり―――
それらの事実は、ランドルフ帝国でティエラ王女が
報告した情報の裏付けとなっていく。
「い、いったん引き返しましょうブラン様」
「そこでティエラ王女様の一行と合流し、
そして情報の共有を―――」
しばらく茫然と口をパクパクさせていた
副大臣は、従者たちの言葉で我に返り、
「わわ、わかった。
引くぞお前たち!
そしてここは大きく迂回して連邦へ
向かうのだ!」
彼らは這うようにして、その場から離れるために
動き出した。
「いやー、ボーアなんて久しぶりだね、シン」
メルが嬉しそうな顔で、仕留めた獲物を
見下ろす……
もとい見上げる。
横に倒れても二メートルは超えているだろうしな。
本当にこの世界の魔物のサイズは別格だ。
「そうだね。
あ、帰ったら『トンカツ』作ろうか。
大根おろしとめんつゆを混ぜたタレが
良く合うんだよ。
みぞれって言うんだけど―――」
私がこれを使った料理の事を考えていると、
みんなテンションが上がってきたのか、
「本当ですか!?」
「ま、まだ新しい食べ方があるってぇん
ですかい……!
こいつぁ楽しみです!」
ラミア族と獣人族が驚きの声と共に、
ガッツポーズのような姿勢を取り、
「バイパーは!? バイパー!!
その『みぞれ』ってヤツ!!」
妻がさらに食い付いてきて、
「唐揚げにすればいけるんじゃないかなあ。
あとそこにネギをぱらぱらとかけても」
こうして私たちは、運搬用の人員が公都から
来るまで、新たな味付けの話で盛り上がった。
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