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16エピローグ

 

 

 

 

──あれから、3年後

 

未央は高台に建てた家の庭で、洗濯物を干していた。天気は快晴。風が気持ちよく吹いて、よく乾きそうだ。

 

「あうー! あう!!」

「おーい、あんまりそっちいくと落ちるぞ!」

 

縁側に向かって、勢いよくハイハイしてきたのは、一年ほど前に生まれた息子、|康介《こうすけ》。パッと後ろから亮介に抱き上げられて、高い高いをしてもらってよろこんでいる。

 

「こーちゃんは、お父さん大好きだね」

 

にこりと微笑む未央は36歳になった。妊娠中はつわりがひどく、立ち仕事のスタジオでの勤務が難しくなり、悩んだ末に一度退職した。いまはのんびり子育てを楽しんでいる。

 

ピンポーン──

 

インターホンが鳴って、元気な声が聞こえてきた。

 

「未央ー! 母さんとあきらきたよ! 準備していこう」

 

きょうは結婚記念日。未央の誕生日だ。亮介の母と、姉のあきに康介を頼んで、久しぶりに、ふたりでデートに出かけようということになっていた。

 

「未央ちゃん、やっほー」

「おじゃまするわね」

 

あきが元気よくリビングに入ってきた。

お母さんも元気そう。

家を建ててから、ちょくちょく遊びに来てくれている。

亮介の母は未央の産後、毎日鎌倉から通って家事を手伝ってくれたので、ものすごく助かった。

 

あきには落ち着いたら、またぜひ一緒に仕事をしようと言われているが、いまはまだその踏ん切りがつかない。「お母さん、あきさん、きょうはよろしくお願いします。サクラ元気ですか?」

 

サクラはいま、あきのところに住んでいる。3年前のクリスマス、あきの家にサクラを預けたところ、あきの家のネコ──オスの黒猫・アスカ──と意気投合したのか、一目惚れしたのか。

連れて帰ろうとしても、ものすごく拒否して暴れまくり、アスカに寄り添うものだから、離すのもかわいそうだということになって、そのままあきの家に居着いてしまったのだ。

 

あきと母親に、離乳食はこれで、泣いたときはこのおやつとおもちゃで、オムツはここで……と未央はひとしきり説明をする。

 

「お母さんと私にまかせて。久しぶりなんだから、ゆっくりしてきなよ」

 

あきは相変わらずの美魔女だ。年齢を重ねているのに、さらに美しくなっている。

 

「ありがとうございます、なるべく早く帰ります」

「ふたりともよろしく頼むね。何かあったら連絡してよ」

 

康介があきと遊びに夢中になっているうちに、そっと出かける。

 

家を出ると、となりのシェアハウスに住む女の子とすれ違った。

 

「大家さんこんにちは、きょうはおふたりでおでかけですか?」

 

亮介の提案で、家のとなりにシェアハウスも一緒に建てていた。土地は家を一軒建てるだけでは余るほどだったので、家賃収入も得られるからと、そうすることにしたのだった。

 

シェアハウスブームも追い風となり、またたくまに満室となって、安定した経営ができていた。

 

「こんにちは、うん、久しぶりにね。花ちゃん今日はお仕事おやすみ?」

 

「いえ、昼からです。あしたのお料理教室、楽しみにしてますね」

 

未央は借家の大家にしてもらっていたように、シェアハウスによく差し入れをしていた。それが評判となり、数人で集まって、はじめて料理教室を自宅ですることになったのだ。「うん、子どももいるから落ち着かないかもしれないけど、よろしくね」

 

「大丈夫です。こーちゃん、慣れてますし。泣いちゃったら抱っこしますよ」

 

「助かります、ありがとう」

 

あいさつをして駅へ向かって歩きはじめた。

 

「未央。手、つなご?」

 

最近手をつなぐ余裕もなかった。未央はそっと亮介の手をとって歩いていく。

 

「ほんと、どれくらいぶりかな。亮介とこうやって出かけるの」

「去年は出産でそれどころじゃなかったもんね」

「ほんと。一年あっという間だった。きょうは亮介の出世祝いもしようね」

「ありがとう、うれしい」

 

亮介は先月、副社長に就任したばかり。お父さんはもうずいぶん手を引いていて、実質は亮介が社長のようなものだった。バタバタと忙しくてゆっくり話すのも久しぶり。

 

「未央ご所望の、ホテルのクリスマスランチ、予約してあります」

「やったー!! 食べ放題?」

「食べ放題って……お望み通りブッフェですよ」

「楽しみ! ありがとう」

 

子どもが生まれると、しかたのないことだが、生活リズムはふたりだけの時とはかわった。

それでも落ちこんだときは亮介が励ましてくれるし、子どもの面倒もよくみてくれて、家事も進んでしてくれる。

亮介のやさしさは、家族が増えても変わらなかった。

 

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