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ホテルのランチブッフェをおなかいっぱい食べ、映画を見て、帰ってきたのは夕方になっていた。「ただいま、ありがとうござ──」
リビングへいくと、しーっとあきは口に人差し指をあてて微笑む。康介は遊び疲れたのか、ベビーベッドで寝息を立てていた。いま寝たところらしい。
「じゃあ、これで帰るね」
「また来るわね」
せっかくだから晩ご飯でもと誘ったのだが、ふたりとも夜は予定があるとのことで、すぐ帰っていった。
ふたりを見送ったあと、未央はそっと縁側から庭へ進み出て、フェンス越しの景色を眺めた。亮介も追って外へ出てきて、後ろからぎゅっと未央を抱きしめる。
「亮介、ありがとうね」
「きょうのこと?」
「ううん、いままでのことぜんぶ」
「こちらこそ。いつもありがとう」
そっと後ろを向いて、キスをする。だんだん深くなって息が苦しい。
「んっ……んんっ」
あははははっ──
となりのシェアハウスの庭から、女の子たちの元気な声がして、パッと離れる。家とシェアハウスの間には背丈よりも少し高い壁を作った。隣の様子は見えないが、声はよく聞こえる。
「未央、家に入ろう?」
「そうだね、寒いし」
「いまから、しよ?」
「はっ……なっ……ええっ!?」
あまりのことに未央はうろたえる。いやまだ日も出てるし、夜でもいいのでは?
「夜でもいいけど……いましたい。だめ?」ひええっ、うるんだ瞳でそう言われるともう断れない。亮介は未央の手をとって二階の階段を上がる。
「待って、康介は?」
「お昼寝モニターセットしといたから。子機持ってるし。泣いたらすぐわかるよ」
こういうところはちゃっかりしている。さっき寝たのなら、しばらくは起きないだろう。子機があればカメラで様子も見られる。便利な世の中だ。
「セックス、どうやってするかおしえてください。僕、はじめてだから?」
なるほど、きょうはそれでいくんだな。未央が百戦錬磨の年上女性で、亮介は初めてという設定らしい。急なキャラ変に、未央はしどろもどろになるが、なんとかついていく。
「……わかった。いろいろ教えてあげるから、覚悟しなさい」
寝室になだれ込んで、初めて経験するであろうイケメン年下男性に、未央はいろいろ教えてあげた。のみこみがものすごくよくて、結局最後は年下男性に主導権を握られたけど。
いつまでも、こうしてあそんでいたいな。
亮介のぜんぶ、好きだから。
(了)