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「さ〜て、これで心置きなく寝れるよね〜…ふぁあ…。」
しよりちゃんが部屋から離れていったのを確認してから、寝たふりをやめて体をゆっくりと起こす。
眠いせいか欠伸をしながら、直ぐ側にある窓から外の景色を眺める。
眠いのに寝られない…なんて事を思いながら暫くの間そうしていると、ピコン、と端末から通知が来た事を知らされる。
(嫌な予感がするなぁ…。)
渋々いった様に通知の内容を見ると、すぐに溜息が零れてしまった。同時に、人の縁というか、世界の狭さというか…そういったものも感じた気がした。
再び治療をした人の居る部屋に入り、少し前まで座っていた椅子に腰を下ろす。まだ椅子からは、微かに暖かさが感じられた。
「…にしてもこの人、一体何をしたらあんな怪我を…。少なくとも表社会を生きている人ではなさそうですよね。」
案外その人が目を覚ますのは早く、私がそんな風に一人考えていると、ぱちり、と目を開いた。
「…おはようございます。体の方に異変は感じられますでしょうか?」
目が覚めたその人の顔をひょっこりと覗きながらそう聞いてみる。返事は暫くの間返ってこなかったが、それでも諦めずに待っていると、その人は折れたかの様に返事をした。
「…もう大丈夫だ。迷惑を掛けたのならすまない。」
「いえ、謝罪は必要無いですよ。」
「そうか。」
一度口を開けば案外あっさりしたもので、普通に会話をしてくれた事に安心しつつも、反面びっくりもしてしまった。
普通はあの程度の怪我を負えばどれだけ強力な魔法をかけたとしても、数ヶ月は安静にしていなければここまでの回復はしない筈。
…まぁ、人について無闇に詮索するもの良くないですよね。それに、元気なことに代わりはありませんしね。
「体調が良さそうで何よりです。それでも念のため、数日間は安静にした方が良いかもですね。その数日間で特に変わった異変が無ければ、元通りに生活をしても問題ないでしょう。」
「…分かった。」
何だかこの人に水篶さんと似た何かを感じたので一応そう説明をすると、相手は渋々といった様に返事をした。
(この人、やっぱり無茶するタイプの人だ…伝えといて良かった。…守ってくれるかは置いておいて。)
この系統の人は安静に、と言っても途中で諦めてしまう人が多い。ちゃんと最後まで守ってくれる人は少ない事は、今までの経験から知っている。
「…そうだ。あなたを拾ったのは私では無いんです。あなたさえ良ければリハビリついでに会いに行きますか?」
完全にゆっくりしていて、と言っても守ってくれる確率は少ない。
そこで、だ。
相手に無理をさせない程度で定期的に運動の機会を与えれば、最後まで持つんじゃないだろうか…そんな考えを今から試してみたいと思う。
「僕は大丈夫です。…行きましょうか。」
そう私に返事を返して、すぐにベットから立ち上がった相手。その光景を見て、やっぱり回復速度が早すぎる…と再び感じてしまった今日の私なのであった。