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やばいです本当に好きすぎました、、、みてる方もドキドキしたし小説書くのうますぎます!!! このロシ中の関係好きすぎます😭✨ほんとに最高です!!!
頑張れ★加油★
内心すごく焦っていてこんなに初々しいロシアを見たことがなかったのでこの小説で一気に印象が変わりました…!こんな可愛らしいロシアも良きですね!
中国から「風邪をひいた」と連絡が来たのは早朝のことだった
「風邪?お前の家、別に経済には問題なかっただろ?」
そうメッセージを送ると、すぐに既読がついた。少し待っていると、返事が返ってきた。
『今回は国としてじゃなくてヒトとしての風邪アル』
最近また寒くなってきたから無理もない。
俺たちカントリーヒューマンズには国としての不調、そしてヒトとしての不調がある。世界恐慌の時には親父曰く皆「風邪」で倒れてそれはもう大騒ぎだったそうだ。
「お前、今家でヒトリか?マカオらは?」
『マカオはポルトガル、香港はイギリスのところに昨日から泊まってるアル。家にいるのは我とパンダぐらいアル』
「なら、今からお前ん家行くから食いたいもんかなんかあれば言え」
『それなら…蜜柑とリンゴ欲しいアル』
「分かった。買ってから行く」
『謝謝』
メッセージを終え、とスマホをポケットにしまう。今日は前々から中国と外でご飯を食べようと言っていたのだが…風邪ならしょうがない。また今度行くとしよう。
身支度を終わらせ、中国のスーパーマーケットに足を運ぶ。俺はカントリーヒューマンズだからパスポートやビザはいらない。外は寒いようだ。寒さに慣れている俺には大丈夫だが、人間の女2人が随分と寒がっている。
白い息で遊びつつ、そこにあった自販機でコンポタージュを買う。それを飲まずに手を温める温める。早く中国の元に行ってやらないとな
少し足をはやめ、しばらく歩いているとスーパーマーケットについた。
(確か蜜柑とリンゴだったな)
おそらく焼き蜜柑とリンゴの甘煮でも作れとでも言われるのだろう。簡単なものだからいいが。
果物コーナーに行き、リンゴ2つと蜜柑3つを手に取る。
ついでに牛乳と蜂蜜を買っていこう。
ここから中国の家まで何分だろう。15分でつくだろうか。
そんな考え事をしていると無意識のうちに牛乳と蜂蜜を手に取っていた。体とは優秀なものだ。
手にカゴを持ちレジへと進む。幸い人は並んでいないようだった。
カゴを台に乗せると店員はバーコードを読み込んでいく。
「会員ですか?」
「いえ、違います」
「レシートは印刷しますか?」
ふく
「お願いします」
昔はここのスーパーマーケットのレシートには宝くじが印刷されていたのだが今では廃止されているようだった。当たったことはないが地味に好きだったから悲しいものだ。
…そういえば、中国のスーパーはレジ袋ないんだったな。買い物袋持ってきてねぇ
「すみません、買い物袋を忘れてしまったんですがこの店は袋を取り扱ってたりしますか?」
「袋でしたら2番の棚の手前にあります」
「今取ってきても大丈夫ですか?」
「はい、大丈夫ですよ」
「ありがとうございます」
他に利用客がいなくてよかった。この時間帯だと当たり前ではあるが。
「すみません。お待たせしました」
「大丈夫ですよ。それではお会計──元となります」
「はい」
「お預かり致します。お値段ちょうどですね。」
「こちら商品とお品物です。ありがとうございました」
会計を終わらせ、その場で袋にいれる。袋に入れ終わると自動ドアへと向かう。
自動ドアが開いた瞬間外の冷気がぶわっと入ってきた。
さっき買ったコンポタージュは、まだ温かさを保っているものの手を温めるには物足りなかった。 これなら首で温めた方がマシかもしれない。
突然、ピロピロと電話が鳴った。
中国からだった
「どうした?中国。もしかして体調が悪くなったのか?」
「おい?中国?」
返事が返ってこない
「おい!中国!!返事しろ!」
強く呼びかけても沈黙が続くだけだ。
もしかしてマズイやつか…?
「クソっ…悠長にするんじゃなかった…!」
俺は中国の家へと駆け出した。
アイツは強いから大丈夫だと油断していた。少し考えれば急いだ方がいいのは分かりきっていたはずなのに…!
冬の冷たい風が頬を切り裂く。
クソっ…向かい風が鬱陶しい…!
全力で走りながら歯を食いしばった。
ふと、アイツの顔が頭に浮かんだ。あの冬の日、お前は寒いからと言って俺から無理やり上着を奪ってイタズラな笑顔を浮かべていたな。中国が俺から奪った上着を身に纏った瞬間、風が中国の匂いをふんわりと運び変に落ち着く匂いがした。 妙に心臓がうるさくて、落ち着かなくて、何も言えなかった。今も抱いている感情の名前はなんというのだろうか。
道行く人が奇妙な目でこちらを見るが、知ったことか。中国が俺のことを待ってるんだぞ。身長190超えの成人男性の全力疾走を生で見れるなんてそうそうないんだから目に焼き付けておけ。
中国の家まであと何分だ?足が重い、息が上がって、脳が焼ける。でも、1秒でも遅れたらもう間に合わない気がする。
そう考えると限界を超え、足が加速する。明日は確実に筋肉痛だな。
だけどそれでもいいんだ。
全力で走っていると、いつのまにか中国の家の目の前にたどり着いていた。
まるでワープしたみたいだが肺が酸素を求めてヒリヒリするし、足が痛くてたまらない。
ワープなんてしてるはずがない。
「鍵…空いてるのか?」
空いてなかったらどこかから侵入するしかない。窓でもぶち破るか?いや、それこそ道行く人に通報される。さすがにそれは避けたい。
インターホンを押すも返答はなし。
恐る恐るドアノブに手をかけると、呆気なく開いた。
「アイツのセキュリティどうなってるんだよ」
呆れと不安が混じって無意識のうちに声が出た。
「中国!来たぞ!!」
急いで靴を脱ぎ捨て、閉まっているドアを片っ端から開ける。廊下を抜けた先、リビングの床に倒れている中国を見つけた瞬間、心臓が跳ね上がった。
「中国!」
俺は一瞬で駆け寄り、声を張り上げた。
アイツの横にスマホが転がっている。電話アプリを起動したままだ。着信履歴の1番上には俺が表示されている。おそらく水を飲もうとして途中で力尽きたのだろう。こんな弱ったアイツを見るのは胸が締め付けられる。
アイツの部屋…
そもそもどこにあるかもしれないが、なんだか勝手に入るのもいけない気がした。
って違う。今こんなことを考えてる場合ではない。
俺は中国をリビングにあるソファにそっと寝かせた。
ソファにブランケットもあったのでブランケットをかけてやった。
窓は…開いていないな。暖房…はアイツ金にうるさいしやめておこう。でも温めた方がいいよな。
ここまで着てきた上着をブランケットの上から重ねて中国にかけてやる。
俺はロシアに住んでいるから中国の気温なんて生ぬるいものだ。
冷えたコンポタージュを1口飲む。それをソファの前にある机に置き、キッチンに立つ。確かコップはここにあったよな…
引き出しを開けると、案の定コップがあった。ストローもあったしこれで水を飲ませよう。
コップに水をいれて、レンジで温める。冷たいままじゃ中国の体がびっくりするだろうしな。俺の家じゃこんなとき温かいスープでも飲ませるところだ 。
キッチンからソファを見るとブランケットと上着にくるまれた中国が小さく息をしている。いつも甲高い、元気な声を響かせているアイツが妙に落ち着いて見える。
俺はストローと温めたコップを持ってソファに近づいた。中国の顔がいつもより少し赤いのは熱のせいか、それともこの部屋が意外と温かいのか。どっちにしろ放って行くわけにはいかない。
「中国、起きろ。少し水のめよ」
小さく声をかけて肩を軽く揺する。アイツの目がうっすら開いて、俺をぼんやり見つめてきた。
「…ん?」
なんて眠そうな声が返ってくる。
…良かった。起きて。
俺はソファの端に腰掛けて、中国の上半身を、そっと起こしてやる。ブランケットと上着がずり落ちないように気をつけながら、ストローをコップに差して中国の口元へと持っていった。
「ほら、飲め。少しずつでいいからな」
中国はまだ半分寝てるみたいにストローを加えて、ちびちびと水を吸う。俺の手がアイツの唇の近くにあるのが妙に気になって、視線を庭にいるパンダに逸らした。さっきまで心配そうにこちらを見ていたパンダは中国が起きたことで安心したのかブランコで遊んでいた。
中国が水を飲んでしばらく経ってから、少し目が覚めたのか、机に目を向ける。
「…コンポタージュ」
「飲みたいのか?」
「飲みたいアル…」
「冷えてるから温めてからな」
「ん」
俺は冷たいコンポタージュの缶を手に持ちまたレンジで温める。
レンジで温まったコーンポタージュの缶を取り出して、熱すぎないか指で軽く確かめる。ちょうどいい温かさだ。スプーンで飲ませるのも考えたが中国が自分で飲めるならその方が楽だろう。
「ほら、飲めよ」
と缶を中国に渡してやる。アイツはブランケットと上着にくるまったまま弱々しく手を伸ばして缶を受け取った。
中国が缶を傾けて、唇をつけて飲み始めた瞬間
――俺の中で何かが引っかかった。
…待てよ。この缶俺がさっき飲んだやつだ。
って ことはこれ、関節キスになるんじゃないか?
頭の中でその言葉が響いた途端、心臓がなぜかドクンと跳ねて顔が熱くなるのが分かった。
マイナス20度でも平気な俺がこんなことで動揺するなんてありえるはずが…
慌てて今度はキッチンへ目を逸らすし、咳払いをした
「…温かいうちに、ちゃんと飲めよ。冷めたら意味ないからな」
声がちょっと上ずった気がして心の中で舌打ちをした。中国はそんな俺に気づかずコンポタージュをちびちび飲んでいる。アイツの唇が缶に触れる度に俺の頭が変な方向に向かいそうな気がしてたまらなかった。
中国が缶を半分飲み終えた頃、小さく息をつき見上げてきた。
「謝謝。ありがとアル」
風邪でかすれた声に混じる中国語が、妙に耳に残る。アイツの目が少し潤んでるのは熱のせいだろうけど、なんだか胸の奥がざわついた。
「別に礼なんていらねぇよ」
そう言いながら、俺はソファの端から立ち上がって缶を受け取る。指が一瞬中国の手に触れて、また妙な熱が首筋を這うのを感じた。…何だこの気持ち…
コンポタージュの缶をキッチンに置いて戻ると、 中国はブランケットと上着にくるまって目を閉じていた。
寝たのかと思ったが、小さく鼻をすする音が聞こえてきて、まだ起きてるらしい。
窓の外を見ると、冬の白っぽい光が薄く差し込んでいる。早朝に連絡が来て、今まで数時間ぐらいしか経っていないのになんだか一日が長い。
昼頃だろうがこの寒さじゃ時間もあまり関係ない。
「……なぁ、中国」
呼びかけてみる。アイツが目を閉じたまま
「怎么了?」
と小さく返す。いつもならただの癖だと思って流すのに、今日に限ってその声が妙に柔らかく聞こえた。
「早く元気になれよ。飯の約束、果たせないままじゃ嫌だしな」
その言葉は発した俺でも驚くほどの真剣な声だった。中国は少し目を開けてぼんやりと俺を見てからかすかに笑った。
「お前は我ん家の料理大好きアルからな〜…」
「早く治して一緒に行こうアル」
「謝謝」
その笑顔と言葉、そして最後の中国語がいつもならなんでもないはずなのに今日に限って胸に刺さって離れない。
俺は慌てて顔を背けて、また窓の方を見た。昼の光が弱々しく部屋を照らしているが、俺の頭はそれどころではなかった。寒さなんかよりこっちの方がよっぽど厄介だな。
しばらくして、中国がブランケットの中で小さく身じろぎした。
「早上好…お腹すいたアル」
風邪声に混じる中国語がまた耳に引っかかって、俺は思わずアイツの方を見た。熱で弱ってるはずなのに、食欲が出てきたってことは少しマシになったのか?
「さっきコンポタージュ飲んだのに腹減ったのか?…まぁ、コンポタージュだけじゃ足りないか」
中国の大食いっぷりは俺もよく知ってるしな
「リンゴの甘煮と焼き蜜柑作るヨロシ」
案の定リンゴの甘煮と焼き蜜柑だった。
「はいはい」と 俺は立ち上がって、買い物袋を手にキッチンへ向かう。早朝にスーパーで頼まれた蜜柑3つとリンゴ2つ、それと俺が個人的に中国に出してやりたいと思って買ってきた牛乳と蜂蜜が入ってる。ロシアじゃ風邪ひいたときは熱い蜂蜜入りミルクが定番だしな。
まず蜜柑を1つ取り出して、皮を剥いて半分に切る。アルミホイルに並べてオーブントースターで焼けば、焼き蜜柑の出来上がりだ。次にリンゴを1つ剥いて適当に切って、小鍋に蜂蜜と水を少し入れて煮る。甘い匂いがキッチンに広がってきて、俺の腹まで鳴りそうになった。
最後に牛乳を鍋で温めて、蜂蜜をたっぷり溶かし込む。昔親父にやってもらったみたいに熱々にして、中国の喉にも優しくしてやるつもりだ。
全部出来上がってトレーに乗せてソファに戻る。
中国は俺の上着のファーで遊んでいるみたいだった。
「ほら、食えよ。お前ほど料理は上手くないがな」
中国はブランケットから手を伸ばして目を少し大きくした。
「看起来很好吃!謝謝!」
その嬉しそうな声に、俺の胸がまた妙に締め付けられる。アイツが焼き蜜柑を手に持って、熱そうにしながら小さくかじる姿を見てると、さっきの「間接キス」の一件が頭をよぎってまた顔が熱くなった。
「親父にこれいれてもらって風邪治してたからな。 ちゃんと食って元気出せよ」
そう言いながら、俺はトレーを机に置いて、中国がミルクのマグを持つ手が震えないか見守る。アイツが
「好渇」
って呟きながらミルクを飲むのを見て、なぜか俺まで安心したみたいで
一一名前も分からないこの気持ち、ほんと厄介だ。
中国は焼き蜜柑を2切れと林檎の甘煮を半分くらい食べて、ミルクを全部飲み干した。マグをトレーに置いた後、ブランケットにくるまって小さく息をつく。
「…..很饱、満腹アル…」
風邪でかすれた声に中国語が混じって、半分も残すなんてアイツらしくないと思った。次の瞬間、中国の目がゆっくり閉じて、肩が静かに下がっていく。
寝てしまったらしい。
昼の光が窓から薄く差し込んで、ソファの上のアイツをぼんやり照らしてる。鼻をすする音がなくなって、寝息が小さく聞こえてきた。..少しは回復したってことか。
俺はトレーを手に持って立ち上がり、キッチンへ向かう。使った鍋やマグをそっと洗って、残った蜜柑とリンゴを袋に戻す。片付けながら、さっきの「謝謝」や「好吃」の声が頭に浮かんで、妙に落ち着く自分がいた。
ソファに戻ると、中国はブランケットと俺の上着にくるまって完全に寝入ってる。熱で赤かった顔が少し和らいでて、ほっとする反面、胸の奥がまたざわついた。
「……早く治れよ、アイツ」
独り言みたいに呟いて、俺は机の横に座り込ん
過ぎの静かな部屋で、中国の寝息だけが響いている。この温かさが逆に落ち着かないな。
しばらくして、中国が寝たまま小さくうめいた。
眉を寄せて、ブランケットをぎゅっと握ってる。
「いやアル…怖いアル…」
不穏な寝言が漏れてきて、俺は思わずアイツの方を見た。熱のせいか、悪夢でも見てるのか、顔がまた少し赤くなって汗をかいてる 。
「中国、起きろよ。大丈夫か?」
肩を軽く揺すってみると、アイツがびくっと目を覚まして俺を見上げた。
「…你好?…夢、悪い夢アル… 」
まだぼんやりした声でそう言うと、中国は目をこすって小さく震えた。俺は咄嗟にブランケットをかけ直して、額に手を当ててみる。熱は下がってきてるけど、まだ少し高い。
「悪夢か。…まあ、寝すぎるとそういうこともあるだろ。もう夕方だしな」
窓の外を見ると、昼の薄い光がオレンジに変わってきてる。早朝からここにいて、もうこんな時間か。中国は俺の言葉に
「好涼…寒いアル」と呟いて、ブランケットに顔を埋めた。
「暖房つけるか?」
「お願いアル」
俺は立ち上がって暖房のスイッチを探し、部屋を温めることにした。中国が震えているのを見ると、胸のざわめきが増して…
――こいつのために何かしてやりたいという気持ちが、どんどん抑えられなくなっている気がした。
暖房のスイッチを見つけて入れると、しばらくして部屋にじんわり温かい空気が広がり始めた。俺はソファの横に戻って、中国の様子を見る。アイツはブランケットから顔を少し出して、目を閉じたまま小さく息をついた。
「…..舒服、気持ちいいアル…」
風邪でかすれた声に中国語が混じって、また耳にそっと染みてきた。中国の表情が緩み、さっきの悪夢の影が薄れてる。
「熱が下がってきたなら、もう少し寝とけよ」
俺は机の横に腰を下ろしてアイツを見守る。暖房のおかげで部屋が温かくなり、インナーを重ねてたのが暑苦しく感じるほどだ。中国の寝息が穏やかになって、俺の気持ちも一瞬静かになったーーけど、それは錯覚にすぎない。
アイツの「舒服」という言葉が、頭の中で反響してる。悪夢で震えてた指先が今は落ち着いて見えて、俺の視線がそこに吸い寄せられた。夕方の薄暗い光が窓から漏れて、中国の顔をほのかに照らしてる。
「ん…」
中国が小さく唸って、ブランケットの中で体を動かした。目がゆっくり開いて、俺の方をぼんやり見つめる。熱で赤くなった頬がまだ残ってるけど、さっきよりは顔色がマシに見えた。
「…ロシア?まだいるアルか?」
中国が起き上がろうとするのを、俺は慌てて手で制した。
「おい、動くなよ。熱下がったばかりなんだから寝とけって言っただろ」
俺は少し強めに言って、アイツをソファに押し戻す。中国は抵抗せず、ブランケットにくるまったまま俺を見上げた。
「…でも、気持ち悪いアル。汗かいてベタベタするアル」
アイツがブランケットを少しずらして、自分の腕をこすりながら呟く。確かに、暖房で部屋が温かくなりすぎて俺も少し汗が滲んでいる。
中国は悪夢を見た時にも汗をかいたせいで、さらに不快そうに眉を寄せてる。
「そうか…」
俺は一瞬考えて、アイツの様子を見ながら口を開く。
「じゃあ、水でも飲むか?それとも…シャワー入るか?」
何気なく言ったつもりだった。が、言葉に出した瞬間、俺の頭に妙な映像が浮かんでくる。アイツがシャワー浴びてるとこなんて想像するつもりはなかったのに、勝手に意識がそっちに引っ張られて、心臓が少し跳ねた。やばい、何考えてんだ俺。
中国は目をぱちぱちさせて、俺の方を見上げてくる。
「シャワー…入るかどうするかアルか?」
アイツが俺の言葉をそのまま繰り返して、ちょっと考えるように首をかしげた。熱でぼーっとしてるのか、いつもより反応が鈍い。それでも、アイツの視線が俺に絡みついてきて、胸のざわめきがまた大きくなった。
「いや、だから…お前がベタベタして気持ち悪いなら、入った方が楽になるかと思ってさ」
俺は慌てて言い訳っぽく付け足して、視線を窓の方に逸らす。夕方のオレンジ色の光が強くなってきて、部屋の中がさらに暖かく感じる。中国はブランケットの中で少しもぞもぞして、それから小さく笑った。
「ロシア、顔赤いアル。暖房のせいアルか?」
アイツのからかうような声に、俺は一瞬言葉に詰まる。
「うるせえ、風邪引いてる奴が調子乗んな」
俺は誤魔化すように返すけど、心臓がバクバクしてるのが自分でも分かる。シャワーの話なんて出すんじゃなかった。――というか、なんで俺そんなに動揺してるんだ?
中国はブランケットの中で少し考え込むように目を細めて、それから小さく頷いた。
「..うん、シャワー入るアル。ベタベタして気持ち悪いし、熱も下がってきたアルし」
中国がブランケットをはね除けて、ゆっくり立ち上がる。まだ動きが少し頼りないけど、さっきよりはしっかりしてるように見えた。俺は慌てて手を差し伸べそうになったけど、中国がリビングのソファの背に手をついてバランスを取るのを見て、動きを止める。
「バスルーム、あっちアルな」
中国がリビングの奥のドアを指して呟く。自分の家なのに、熱でぼーっとしてるのか確認するみたいに俺を見た。
いや、そんな目で見られても知らないが。
そう思いながら立ち上がった。
「お前が言うならそうだろ。お前が入ってる間にまた蜂蜜入りミルクいれるか?」
何だか落ち着かねえ気持ちを隠すように、ぶっきらぼうに言う。中国は小さく笑って、「お願いアル」と手を振った。
アイツがバスルームに向かう背中を見ながら、俺は中国のリビングに突っ立ったまま動けねえ。ドアが閉まる音がして、しばらくするとシャワーの水音が微かに聞こえてきた。俺は深く息を吐いて、ソファの横のテーブルに腰を下ろす。落ち着けよ、ただのシャワーだろ。何でこんなに胸がざわついてんだか分からねえ。
水音が続く中、俺はリビングの窓の外をぼんやり眺めてた。夕方のオレンジ色がだんだん薄れて、
中国の家のカーテン越しに部屋が少し暗くなってくる。静かなリビングにバスルームの方から中国の声が聞こえてきた。
「…舒服…気持ちいいアル…」
シャワーの水音に混じって、アイツの呟きが微かに漏れてくる。風邪でかすれた声が、いつもより柔らかく響いて、俺の耳に直接流れ込んできた。
瞬間、心臓がドクンと跳ねて、俺は思わずテーブルの縁を握り潰しそうになる。
何だよ、それ。わざと聞こえるように言ってんのか?
いや、そんなわけないだろ。ただの独り言だ。けど、アイツの声が頭にこびりついて、胸のざわめきが収まらねえ。俺は立ち上がって、意味もなくリビングの中をうろつき始めた。落ち着け、落ち着けって。
シャワーの音が止まって、少し間が空いた後、バスルームのドアが開く音がした。俺は振り返って、息を呑む。中国がタオルで軽く顔を拭きながらリビングに戻ってきた。普段着てる服じゃなくて、緩いシャツを無造作に織ってる。襟元が緩んで肩が少し見えてて、細い首筋が妙に目立つ。シャワー後の火照った顔が、夕方の薄暗いリビングに映えて、何とも言えねえ雰囲気を出してる。
「ロシア、蜂蜜入りミルク出すヨロシ」
中国がそう言って、リビングのソファにどさっと座る。足を投げ出して、タオルを首に掛けたまま俺を見上げてきた。無防備すぎるだろ、コイツ。大きめのシャツを纏っていて、いつものチャイナ服と違って指先が少し出ている。 熱が少し下がったからか、さっきより顔がスッキリしてて、目が少し潤んでるように見えた。
「気持ちよかったアル。汗も流れてスッキリしたヨロシ」
中国が笑って、頭を軽く振ると、濡れた星から水滴がぽたっと落ちてシャツに染みる。
中国のその姿に目を奪われて、言葉が出てこない。
胸のざわめきがまた大きくなって、何か言わなきゃって思うのに、頭が真っ白だ。
「お、お前..風邪引くぞ、そのままでいると」
やっと絞り出した言葉がそれだった。その言葉と同時に蜂蜜入りミルクを出す。中国は首をかしげて、「暖房あるから大丈夫アル」と呑気に返す。コイツの無防備な仕草と声が、俺の中で何かを引っ掻いてる気がするけど、それが何なのか分からねえ。ただ、放っとけねえって気持ちだけが膨らんでいく。
中国はソファにだらしなく座ったまま、タオルを首に引っかけた状態で顔を軽く拭いてる。シャワー上がりの水滴がシャツに染みて、薄い生地が少し透けてるのが目に入って、俺は慌てて視線を逸らす。何だよ、この状況。アイツ、シャワー上がったばっかりでそんな格好で平気なのか?自分の家だからって 無防備すぎるだろ。
「ロシア、なんか落ち着かないアルか?」
中国がこっちを見上げて、にやっと笑う。シャツの袖をまくろうとしてるけど、だるそうに途中でやめてる。いつもならもっと調子乗った感じで絡んでくるのに、今日はなにか企んでるみたいな目付きが妙だ。俺はアイツのその緩い態度にイラっとする反面、胸のざわめきが止まらない。
「うるせえ。お前がそんな格好でフラフラ してるからだろ。体調悪化するぞ」
ぶっきらぼうに返すけど、心臓が妙にうるさい。
暖房のせいか、リビングが暑すぎるのか、頭がぼんやりしてくる。中国は「ふーん」と呟いて、ソファに背中を預けて伸びをした。シャツの裾が少し上がって、腹がチラッと見えた瞬間、俺は咳払いして目を背けた。やべえ、何でこんなに意識してんだ。
というか、アイツ普段から無防備ではあるがあそこまでは隙を見せないのに何で今日はこんなに無防備なんだ?
「なぁ、ロシア」
中国が突然口を開いて、俺をじっと見つめてくる。
「もう外暗くなってきたヨロシ。帰るの面倒じゃないアルか?」
何気なく言ってる風だけど、アイツの声がいつもより柔らかくて、俺は一瞬固まる。窓の外を見ると、夕方のオレンジ色はすっかり消えて、街灯の光がカーテン越しにぼんやり映ってる。早朝からここにいて、看病してたせいで時間のことなんて頭から抜けてた。
「…まぁ、確かに遠いっちゃ遠いけど」
そもそも国が違うし。俺が曖昧に返すと、中国はソファから体を起こして、膝を立てて座り直す。シャツがさらにずれて、肩が丸見えになってるのに、アイツは気にしていないみたいだ。でも、指でシャツの裾をいじりだして、視線をちょっと落としたのが目に入る。
「じゃあ、泊まればいいアル。我、風邪でまだフラフラだし…」
そこで言葉を切って、中国が何か言いづらそうにモゴモゴした。顔が少し赤くなってきて、俺をチラッと見てから、小さく呟く。
「…ロシアいてくれた方が、安心ヨロシ..」
アイツがそんな照れた感じで言うの、らしくない。
な。何だよ、その目は。風邪で弱ってるせいか知らないが、いつもより素直すぎて、逆に俺が落ち着かなくなってくる。
「泊まる…?」
俺が繰り返すと、中国は顔を赤くしたままコクッと頷く。
「そうアル。客用の布団あるし、リビングで寝てもいいヨロシ。どうせ明日も暇だし、ロシアも楽でいいアルよ」
ソファに寝転がって、足をぶらぶらさせながら言う。シャツがめくれて、また腹が見えてるけど、アイツは隠す気もないみたいだ。さっきの照れた感じが嘘みたいに、すぐ呑気な態度き戻ってる。
俺は目を逸らしながら、頭の中でぐるぐる考える。泊まるって…アイツの家に?確かに帰るの面倒だし、アイツがまだ風邪で弱ってるなら放っとくのも気がかりだ。別に変な話じゃねえよな。
「..分かった。じゃあ、泊まるか」
渋々って感じで言うと、中国が 「やったアル!」 と笑ってソファから飛び起きる。勢い余ってシャツの襟がさらにずれて、鎖骨まで見えてるのに、アイツは平気な顔で立ち上がった。さっきの赤い顔はどこに行ったんだってくらい、いつも通りの調子に戻ってる。
「じゃあ、布団出すアル。ロシア、ちょっと手伝うヨロシ」
中国がリビングの隅の収納の方にフラフラ歩いていく。シャワー後の緩いシャツ姿で、タオルを首に掛けたままふらついてる。アイツの背中見てると、さっきの「安心ヨロシ」って言葉が頭に残ってて、何でか知らねえけど胸がざわつく。でも、放っとけないって気持ちが勝って、俺は仕方なくアイツの後を追った。
中国がリビングの隅の収納から客用の布団を引っ張り出すのを、俺は黙って手伝った。アイツが「ここ持つヨロシ」と呑気に指示してくるから、俺は仕方なく布団を広げてソファの横に敷く。暖房の効いたリビングはまだ暑くて、俺の上着はさっき脱いだままソファに放りっぱなしだ。中国はシャツの襟がずれたまま、布団の上にどさっと座って満足そうに頷いた。
「これでいいアルな。ロシア、今日はここで寝るヨロシ」
アイツがシャツの裾を軽く引っ張って整えるけど、肩が丸見えのままで全然意味がない。俺は目を逸らして、「ああ、分かった」とだけ返す。胸のざわめきが収まらないが、アイツの家に泊まるって決めた以上、落ち着くしかないだろ。
窓の外はすっかり暗くなって、カーテン越しに街灯の光がぼんやり浮かんでる。中国が「腹減ったアル」と呟いて、ソファから立ち上がる。シャワー後の緩いシャツ姿でフラフラキッチンに向かう背中を見て、俺は一瞬考える。風邪引いてる奴が何か食うなら、軽いもんの方がいいだろ。
「おい、動くな。俺が何か作るから座ってろ」
俺が言うと、中国が振り返って目を丸くする。
「ありがとアル〜!じゃあお願いするアルヨ」
アイツがにやっと笑ってソファに戻ってくる。膝を立てて座って、俺をじっと見つめてくる目が妙に落ち着かない。
「お前…最初から俺に作らせるつもりだったな」
俺がそう言えば中国は「なんのことアルか?」とわざとらしく言う。言った手前、俺はキッチンに向かう。
中国の家の冷蔵庫を開けると、卵と少し菱びたネギが目に入った。とりあえず粥でも作ればいいか。風邪なら胃に優しい方がいいだろ。鍋に水を入れて火にかけてると、背後から中国の声が聞こえてきた。
「ロシア、優しいアルな….」
アイツがソファに寝転がって、こっちを見ながら呟く。またシャツがずれて腹が見えてるのに、平気な顔で足をぶらぶらさせてる。俺は鍋をかき混ぜる手を一瞬止めて、振り返る。
「何だよ、急に。風邪引いてる奴が動くなって言ってるだろ」
誤魔化すように言うけど、アイツの「優しい」って言葉が頭に残って、心臓が少し跳ねた。何でだよ、ただ粥作っただけだろ。
粥が出来上がって、俺は丼に盛ってリビングに戻る。中国はソファにだらしなく座ったまま、俺が差し出した丼を見て目を輝かせる。
「美味そうアル!ロシア、ほんとすごいヨロシ!」
アイツが無防備に笑って、丼を受け取る。シャツの袖がずり落ちて腕が丸見えになっても気にせず、スプーンを手に持つ。俺はソファの横に腰を下ろして、アイツが粥を食べるのを見守る。熱が下がったせいか、さっきより元気そうに見えるけど、まだ顔が少し赤い。
「熱いから気をつけろよ」
俺が言うと、中国が「大丈夫アル」と笑って一口食べる。
「…うまいアル。ロシア、謝謝」
アイツが小さく呟いて、俺をチラッと見る。いつもならもっと大げさに騒ぐのに、今日は何か静かで、妙に素直だ。風邪のせいか知らないが、そんな中国を見ると、胸のざわめきがまた大きくなってきて、何か言おうとして言葉に詰まる。
「お前…早く食って寝ろよ。風邪治さないと面倒だぞ」
やっとそれだけ絞り出して、俺は視線を逸らす。
中国は「うん」とだけ頷いて、ゆっくり粥を食べ続けた。リビングに暖房の音とスプーンのカチャカチャいう音だけが響いて、夜が深まっていく。
アイツの無防備な姿と静かな笑顔が、頭に焼き付いて離れねえ。何でこんなに気になるんだろ。
放っとけねえだけだろ、それだけなのに。
俺はソファの横に腰掛けたまま、中国が粥を食べるのを何気なく見てる。アイツはシャツの袖がずり落ちて腕が丸見えのまま、だらしなく座ってて、スプーンをゆっくり口に運んでる。暖房の効いたリビングに、スプーンのカチャカチャいう音と、時折アイツが小さく息をつく音が響いてる。夜が深まって、外は静かで、カーテン越しに街灯の光が薄く差し込んでるだけだ。
粥を食べるアイツの姿が妙に落ち着いてて、いつもなら騒がしく絡んでくる中国とは別人みたいだ。熱が下がったせいか、顔色も少しマシになってきてるけど、まだ風邪声が残ってて、「美味いアル」って呟きが耳に引っかかる。胸のざわめきが収まらねえのは何でだ?ただ看病して、粥を作ってやってるだけなのに、アイツの無防備な姿が頭に焼き付いて離れない。シャツの裾が少し上がって腹がチラッと見えるたび、視線を逸らすのに必死だ。
「なぁ、ロシア」
アイツが突然スプーンを丼に置いて、俺をじっと見上げてきた。潤んだ目がこっちを捉えてて、心臓がドクンと跳ねる。何だよ、その目は。風邪のせいか、それとも別の何かか分からねえけど、落ち着かなくなる。
「何だよ、急に。粥まずいのか?」
ぶっきらぼうに返すと、アイツが小さく笑って首を振る。その笑顔が柔らかすぎて、胸が締め付けられる。
「いや、美味いアル。…ただ、ロシアがずっと我のこと見てたから、気になったヨロシ」
そんなこと言いやがって、頭が一瞬真っ白になった。確かにアイツの様子見てたけど、こうやって指摘されると意識しちまうだろ。慌てて視線を逸らして、誤魔化すように咳払いする。
「お前がフラフラしてなけりゃ見ねえよ。早く食え」
言葉が強すぎたかと思ったけど、アイツは「ふーん」と呟いて、またスプーンを手に取った。粥を一口食べて、チラッとこっちを見てくる。その視線に妙な熱があって、俺を試すみたいだ。何だよ、アイツ。分かっててやってんのか?胸のざわめきが収まらねえ。
「ロシア、謝謝。…我、嬉しいアル」
アイツが小さく呟いて、静かに笑った。丼をテーブルに置いて、ソファに背を預ける姿が妙に自然で、シャツの襟がずれた肩が目に入る。嬉しいって何だよ。ただ粥作っただけだろ。それなのに、アイツの声が柔らかすぎて、心臓がうるさくなる。視線を逸らしても、アイツの笑顔が頭にこびりついて離れない。放っておけないだけのはずなのに、アイツが俺を見る目が何か違う気がしてくる。いつもなら調子乗った態度で絡んでくるのに、今日はやけに穏やかで、俺を気遣うみたいな雰囲気が漂ってる。
アイツがまた粥を食べ始めて、スプーンを口に運ぶたび、チラチラこっちを見てくる。まるで俺の反応を楽しんでるみたいだ。熱が下がったせいか、顔に少し元気が戻ってきてるけど、その目には何か企むような光がある。アイツ、何か知ってんのか?俺がこんな気持ちで落ち着かねえのを、分かっててわざと探ってきてるのか?いや、まさかな。そんなわけねえよな…。
「お前、食ったら寝ろよ。風邪治さねえと面倒だぞ」
やっとそれだけ絞り出して、視線を天井に逸らす。アイツの視線が絡みついてくるのが分かるのに、こっちはまだその意味を掴めなち。胸の熱が引かないまま、リビングに暖房の音とスプーンの音だけが響いている。
アイツがまた粥を食べ始めて、スプーンを口に運ぶたび、チラチラこっちを見てくる。まるで俺の反応を楽しんでるみたいで、胸のざわめきが収まらない。粥を半分くらい食ったところで、アイツが丼をテーブルに置いて、ソファに背を預けた。シャツの襟がずれたまま、肩が丸見えで、ブランケットを適当に引き寄せる姿が妙に無防備だ。熱が下がったせいか顔色はだいぶ良くなってきてるけど、まだ風邪声が残ってて、「満足アル」って呟きが耳に引っかかる。
「なぁ、ロシア」
アイツが突然俺をじっと見つめてきて、心臓がまたドクンと跳ねた。潤んだ目がこっちを捉えてて、何か企むような光がある。風邪のせいか、それとも別の何かか分からねえけど、その視線に落ち着かなくなる。
「何だよ、またかよ。腹減ったとか言うなよ」
ぶっきらぼうに返すと、アイツが小さく笑って首を振る。その笑顔が柔らかすぎて、胸が締め付けられる。
「違うアル。…我、眠くなってきたヨロシ。でも、寝るのちょっと怖いアル」
中国がそう呟いて、ブランケットをぎゅっと握った。中国は少しモゴモゴしながら続ける。
「今日、悪い夢見たアルから…ロシアがそばにいてくれたら、安心するヨロシ」
アイツがそんな頼りなげな声で言うもんだから、頭が一瞬真っ白になった。何だよ、その言い方。いつもなら調子乗って絡んでくるくせに、こんな時だけ素直に弱音吐いてくるなんて反則だろ。胸の熱がまた膨らんで、視線を逸らして咳払いする。
「お前…悪夢くらいでビビってんのか?子供じゃないんだから」
誤魔化すように言うけど、アイツは「うん」と小さく頷いて、俺をじっと見つめてくる。その目が妙に柔らかくて、俺を試すみたいだ。アイツ、分かっててやってんのか?俺が放っとけない気持ちでいっぱいなのを、わざと探ってるのか?いや、まさか…そんなわけないよな。
でも、アイツの視線が絡みついてきて、胸のざわめきが抑えきれない。熱で弱ってるアイツを放っとくわけにもいかないし、悪夢に怯えてるならなおさらだ。仕方ないな、と思うのに、心臓がうるさくてたまらない。
「…分かった。寝付くまでそばにいてやるよ。それでいいだろ」
やっとそれだけ絞り出して、俺はソファの横に座り直す。中国は「謝謝」と呟いて、ブランケットにくるまったまま俺の方に少し体を寄せてきた。シャツの袖がずり落ちて腕が丸見えで、アイツの肩が俺の腕に軽く触れる。シャワー後の石鹸の匂いが鼻先をかすめて、心臓がまた跳ねた。やべぇ、近すぎだろ。
「お前、近すぎだ。熱うつす気かよ」
ぶっきらぼうに言うけど、中国は「大丈夫アル」と呑気に返して、目を閉じる。その顔が妙に穏やかで、俺を安心させるみたいに笑ってる気がする。アイツが俺に寄せてくる態度が、ただの風邪の弱気じゃなくて何か深い意味がある気がしてくる。でも、それが何なのか、俺にはまだ分からない。勝手にアイツを意識して、心臓がバクバクしてるだけだ。
アイツの寝息が少しずつ聞こえてきて、俺はそっと息を吐く。寝付くまでそばにいると決めた以上、動くわけにもいかない。暖房の音と中国の寝息がリビングに響いて、夜が深まっていく。胸の熱が収まらないが、アイツが安心して寝てるなら、それでいいか…。そう思うのに、アイツの柔らかい笑顔が頭に焼き付いて離れない。
アイツの寝息が少しずつ穏やかになって、リビングに暖房の音と混じり合って響いてる。俺はソファの横に座ったまま、動くに動けねえ。アイツがブランケットにくるまって、俺の腕に軽く肩を預けてくるもんだから、シャツのずれた襟から見える首筋が目に入っちまう。シャワー後の石鹸の匂いがまだかすかに漂ってて、心臓がうるさくてたまらない。やべぇ、近すぎだろって思うのに、アイツが安心して寝てるなら動かせない。
「お前…ほんと無防備すぎるだろ」
独り言みたいに呟いて、視線を天井に逸らそうとするけど、ついアイツの寝顔に目が吸い寄せられる。熱が下がったせいか、顔色がだいぶ落ち着いてきてて、いつもなら甲高い声で絡んでくるアイツが、今は静かに寝息を立ててる。閉じた目と少し開いた口元が、妙に穏やかで、俺を落ち着かせるみたいだ。でも、その穏やかさが逆に胸のざわめきを大きくしてくるのは何でだ?
アイツが小さく寝返りを打って、俺の腕に頭を軽く乗せてきた。熱で赤かった顔が今は柔らかく見えて、寝てる間に「ん…」って小さく唸る声が漏れてくる。悪夢でも見てるのかと思ったけど、アイツの口元が緩く笑ってるみたいで、安心してるのが分かる。俺がそばにいるからか?そう思うと、胸の熱がまた膨らんでくる。
「ロシアがいてくれたら安心するヨロシ」という言葉が頭に響いて、心臓がドクンと跳ねた。あの時、アイツの目が妙に柔らかくて、俺を試すみたいだった。いつもなら調子乗って絡んでくるくせに、昨日からずっと穏やかで、俺に何か寄せてくる感じがする。粥を作った時も、「謝謝」って呟いて笑った顔が頭に焼き付いて離れねえ。あの笑顔が、ただの感謝じゃなくて何か深い意味がある気がしてくる。でも、それが何なのか、俺にはまだ分からない。
寝顔を見てるうちに、アイツの細い首筋とか、シャツから覗く肩が妙に目立ってきて、慌てて視線を逸らそうとする。でも、やっぱり目が離せないんだよ。ロシアの吹雪の中でも平気な俺が、こんな距離でこんな気持ちになるなんてありえないだろ。胸の熱が収まらないのは、ただアイツを放っとけないからだろ?そう思うのに、頭がそれを否定してくる。本当に何だよ、この気持ち。心臓がこんなにうるさくなるなんて、今までなかったぞ。
またアイツが小さく笑ったような寝息を漏らして、俺の腕に頭をすり寄せてきた。まるで俺がここにいるのを確かめるみたいで、胸の奥が締め付けられる。アイツが俺に寄せてくる態度が、ただの風邪の弱気じゃなくて何か特別なもんに見えてくる。まさか…アイツ、俺のこと…? いや、そんなわけねえよな。俺が勝手に意識してるだけで、アイツはただ安心したいだけだろ。
でも、その考えが頭に浮かんだ瞬間、心臓がバクバクしてきて、顔が熱くなるのが分かった。やべえ、何だよ、これ。アイツの寝顔見てるだけで、こんな気持ちになるなんて…。何か大事なことに気づきそうで、でもそれが何なのか掴めねえ。放っとけない気持ちが膨らんで、アイツが目を覚ますまでそばにいたいって思うのは、ただの心配じゃねえ気がしてきた。でも、その先を考えるのが怖くて、俺は目を閉じて深く息を吐く。
暖房の音とアイツの寝息がリビングに響いて、夜が静かに深まっていく。胸の熱が収まらねえまま、俺はアイツの寝顔から目を離せねえでいる。この気持ちの名前、いつか分かる日が来るのだろうか…
朝日がカーテン越しにリビングに差し込んできて、暖房の効いた部屋が薄明るくなってる。俺はソファの横に座ったまま、目を覚ました。アイツの寝息がまだ小さく聞こえてて、ブランケットにくるまった中国が俺の腕に肩を軽く預けてる。シャツの襟がずれたまま、首筋が薄い光に照らされてて、熱が下がったせいか顔色がだいぶ落ち着いて見える。寝てる姿が妙に穏やかで、心臓がまた少し跳ねちまう。
「お前…ほんと無防備だな」
また昨夜みたいに呟いて、アイツの寝顔をじっと見てしまう。昨夜、アイツが「ロシアがいてくれたら安心するヨロシ」って言って寄せてきたのが頭から離れない。寝付くまでそばにいてやったせいで、アイツの石鹸の匂いと体温がまだ近くに残ってる感じがして、胸の熱が収まらねえ。放っとけねえ気持ちが膨らんだまま、夜が明けてしまった。
アイツが小さく唸って、ブランケットの中で体を動かした。目がゆっくり開いて、俺をぼんやり見つめてくる。熱で赤かった頬が引いてて、風邪声がまだ少し残ってるけど、昨日より元気そうに見えた。
「…早上好、ロシア…まだいるアルか?」
アイツが眠そうな声で呟いて、俺を見上げて小さく笑う。シャツの裾が少し上がって腹がチラッと見えた瞬間、慌てて視線を逸らす。アイツの笑顔が柔らかすぎて、心臓がうるさくなる。
「お、お前…熱下がったみたいだな。もう大丈夫か?」
ぶっきらぼうに返すけど、アイツの視線が絡みついてきて落ち着かない。中国は俺の言葉に目を細めて、ブランケットを肩に掛けたままソファに体を起こす。
「うん、だいぶ楽になったアル。ロシアのおかげヨロシ」
アイツが柔らかく言って、俺をじっと見つめてくる。その目が妙に優しくて、胸が締め付けられる。アイツがそんな目で俺を見るたび、何か大事なことに気づきそうで、でも掴めねえ感覚が頭をぐるぐるする。放っとけねえだけだろ、そう思うのに、アイツの態度がただの感謝じゃねえ気がしてくる。
「なぁ、ロシア」
アイツが突然口を開いて、俺をじっと見つめてきた。ブランケットをぎゅっと握って、少しモゴモゴするみたいに言葉を探してる。心臓がまたドクンと跳ねて、何だよ、急にって思う。
「何だよ。また腹減ったとかか?」
誤魔化すように言うと、アイツが小さく笑って首を振る。その笑顔がやけに穏やかで、俺を試すみたいだ。
「違うアル。…我、ロシアのこと、昨日ずっと考えてたヨロシ」
アイツがそんなこと言い出した瞬間、頭が一瞬真っ白になった。何だよ、それ。考えてたって何をだよ。アイツの目が潤んでて、風邪のせいじゃなくて何か別の感情が混じってる気がする。胸の熱が膨らんで、視線を逸らそうとするけど、アイツの視線に捕まって動けねえ。
「ロシアがそばにいてくれたから、安心したアル。…我、ロシアといると、楽しいヨロシ」
中国が柔らかい声で呟いて、顔が少し赤くなる。シャツの襟がずれた肩が朝日に照らされてて、コイツが俺を見上げる目が妙に熱っぽい。楽しいって何だよ。看病しただけだろ。そう思うのに、コイツの言葉が頭に刺さって、心臓がバクバクしてくる。コイツが俺に寄せてくる態度が、ただの友情や感謝じゃない気がして、でも、それがなんなのか分からない。
「…我、ロシアのこと…」
アイツがそこで言葉を切って、照れたみたいに視線を落とした。顔がもっと赤くなって、ブランケットをぎゅっと握る手が小さく震えてる。俺をチラッと見て、また目を逸らす。アイツ、何か言おうとしてるのか?その先が聞きたいのに、喉が詰まって何も言えない。
「お、お前…何だよ、急に。熱下がったなら飯でも食うか?」
やっとそれだけ絞り出して、立ち上がろうとする。アイツの言葉が頭にこびりついて、胸の熱が収まらねえ。楽しいとか、考えてたとか、そんなこと言われたら意識しちまうだろ。中国は俺の反応を見て、小さく笑って頷いた。
「うん、飯いいアル。…ロシアと一緒に作るヨロシ」
アイツがソファから立ち上がって、シャツの裾を軽く引っ張る。俺を見上げる目がまだ柔らかくて。アイツが俺にだけ見せる態度が、特別なもんに思えてきて、心臓がうるさくて仕方ない。でも、まだその気持ちの名前が分からないまま、俺はキッチンに向かうアイツの背中を追った。
リビングに朝日が差し込んで、暖房の効いた部屋が薄明るくなってる。俺はキッチンに立って、アイツの背中を見てる。中国がシャツの襟をずらしたまま、冷蔵庫から卵を取り出して俺に渡してきた。アイツの動きはまだ少し頼りないけど、熱が下がったせいか昨日より元気そうで、ほっとする反面、胸のざわめきが収まらない。
「ロシア、目玉焼き作るヨロシ。我、粥の残り温めるアル」
中国が呑気に言って、鍋に水を入れる。シャツの裾が上がって腹がチラッと見えた瞬間、慌てて視線を逸らす。さっきのリビングでの言葉が頭にこびりついてて、「ロシアといると楽しいヨロシ」とか「我、ロシアのこと…」って言いかけたアイツの顔が浮かんでくる。心臓がうるさくて、フライパンを手に持つ手が少し震えちまう。
中国が鍋をかき混ぜながら、チラッとこっちを見てくる。朝日がアイツの首筋を照らしてて、風邪声が残る中でも柔らかい笑顔が俺を捉える。胸の熱がまた膨らんで、何だよ、この感じって思う。アイツが俺に寄せてくる態度が、ただの感謝や友情じゃない気がしてくるけど、それが何なのか掴めない。
「なぁ、ロシア」
アイツが鍋から目を離さずに、俺を呼んだ。声が妙に穏やかで、心臓がドクンと跳ねる。
「何だよ。目玉焼きの形が汚いとか言うなよ」
ぶっきらぼうに返すけど、アイツは小さく笑って首を振る。その笑顔がやけに優しくて、胸が締め付けられる。
「違うアル。…我、ロシアがこうやって朝飯作ってくれるの、嬉しいヨロシ。なんか、ずっとこうしてたいアル」
アイツがそんなこと呟いて、鍋をかき混ぜる手を一瞬止めた。中国の顔が少し赤くなって、俺をチラッと見てからまた鍋に視線を戻す。ずっとこうしてたいって何だよ。看病した延長で飯作ってるだけだろ。そう思うのに、アイツの言葉が頭に刺さって、心臓がバクバクしてくる。アイツの俺を試すみたいな態度が強くなってる。
俺が卵を焼く手を止めてると、アイツが鍋から粥を丼に盛って、俺の横に近づいてきた。シャツの袖がずり落ちて腕が丸見えで、アイツの肩が俺の腕に軽く触れる。近すぎだろって思うのに、アイツは平気な顔で俺を見上げてくる。
「ロシア、昨日我のことずっと見ててくれたアルね。…我、寝てても分かったヨロシ」
アイツが柔らかい声で言って、目を細める。その目が妙に熱っぽくて、俺の胸の熱が抑えきれねえ。寝てても分かったって何だよ。確かに中国の寝顔見てたけど、そんな風に言われると意識しちまうだろ。コイツが俺に寄せる気持ちが、ただの安心感を超えて何か深いものに変わってる気がする。
「…我、ロシアのこと、ほんと大事アル」
アイツがそこで言葉を切って、照れたみたいに視線を落とした。丼を持った手が小さく震えてて、顔がもっと赤くなる。俺をチラッと見て、また目を逸らす。大事って何だよ。仲間として大事って意味だろ、普通は。でも、アイツの声が震えてるのと、その柔らかい目が俺に絡みついてくるのが、普通じゃない気がしてくる。
「お、お前…何だよ、急に。卵焼けたぞ、食えよ」
やっとそれだけ絞り出して、フライパンをシンクに置く。中国の言葉が頭にこびりついて、胸の熱が収まらない。熱は下がったはずなのにアイツが俺を見る目が、昨日より熱を帯びてて、心臓がうるさくて仕方ない。放っとけない気持ちが膨らむけど、それが何なのか分からねえまま、俺はアイツの横に立ったまま固まってしまった。
アイツが「謝謝」と呟いて、丼と卵をテーブルに運ぶ。俺を見上げる目がまだ柔らかくて、さっきの言葉の余韻が残ってる。アイツが俺にだけ見せる態度が、特別なものに思えてきて、頭がぐちゃぐちゃだ。でも、まだその気持ちの名前が分からないまま、俺はアイツの後を追ってテーブルに座った。
朝日がキッチンに差し込んで、暖房の効いた部屋が薄明るくなってる。俺はテーブルに座って、目の前に置かれた卵と粥を見つめてる。中国が向かいに座って、シャツの襟をずらしたまま丼にスプーンを入れてる。アイツの動きはまだ少し頼りねえけど、熱が下がったせいか昨日より元気そうで、ほっとする反面、胸のざわめきが収まらねえ。
「ロシア、お前も早く食うヨロシ。冷めたら美味しくないアル」
アイツが呑気に言って、俺を見上げてくる。朝日がアイツの首筋を照らしてて、風邪声が残る中でも柔らかい笑顔が俺を捉える。さっきの「ずっとこうしてたいアル」とか「大事アル」って言葉が頭にこびりついてて、心臓がうるさくて仕方ねえ。アイツが俺に何か特別な気持ちを寄せてきてるのは分かる。
卵を一口食べると、アイツがスプーンを置いて、俺をじっと見つめてきた。胸がドクンと跳ねて、何だよ、急にって思う。アイツの目が妙に熱っぽくて、昨日からずっと感じてるその視線が絡みついてくる。
「なぁ、ロシア」
アイツが小さく呟いて、テーブル越しに俺の方に少し体を寄せてきた。シャツの袖がずり落ちて腕が丸見えで、ブランケットを肩に掛けたままの姿が妙に無防備だ。
「何だよ。粥足りねえのか?」
ぶっきらぼうに返すけど、アイツは小さく笑って首を振る。その笑顔が柔らかすぎて、胸が締め付けられる。
「違うアル。…我、ロシアとこうやって朝飯食うの、ほんと嬉しいヨロシ」
アイツがそんなこと言って、顔が少し赤くなる。嬉しいって何だよ。飯一緒に食うくらい普通だろ。そう思うのに、アイツの声が震えてるのが耳に引っかかって、心臓がバクバクしてくる。中国が俺を見る目が、ただの仲間に対するもんじゃねえ気がする。
中国が急にテーブルに手を伸ばしてきて、俺の手をそっと握った。冷たい手が俺の指に触れて、心臓が一瞬止まりそうになった。やべえ、何だよ、これ。中国の細い指が俺の手を包むみたいに握ってて、顔がもっと赤くなって視線を落とす。
「…ロシア、我のこと助けてくれたアルね。昨日からずっとそばにいてくれて、我、ほんと…ありがとアル」
アイツが風邪声で呟いて、俺をチラッと見上げてくる。その目が潤んでて、柔らかくて、俺を試すみたいだ。手握ってくるなんて、アイツらしくない。いつもなら調子乗って絡んでくるくせに、こんな素直な態度で俺に触れてくるのは、ただの感謝じゃない何かがある。胸の熱が膨らんで、頭がぐちゃぐちゃになる。
「お、お前…何だよ、急に。手冷てえぞ、離せよ」
やっとそれだけ絞り出して、手を引き抜こうとするけど、アイツが小さく力を入れて離さねえ。俺を見上げる目が熱っぽくて、心臓がうるさくてたまらない。アイツの好意がハッキリ分かる。俺を大事に思ってて、そばにいてほしいって気持ちが溢れてる。でも、それが恋心なのか、ただの深い友情なのか、俺にはまだ掴めない。
「…我、ロシアのこと、ほんと大事アル。ずっとそばにいてほしいヨロシ」
アイツがそこで言葉を切って、照れたみたいに目を逸らした。手が小さく震えているが、それに相反して俺の手を握る力は強くなる。顔が赤いままで、朝日に照らされた首筋が妙に目立ってる。大事とか、そばにいてほしいとか、そんな言葉が頭に刺さって、胸の熱が収まらない。アイツが俺に特別な気持ちを向けてるのは確かだ。でも、それが恋ってやつなのか、ただアイツが風邪で弱ってて頼りたいだけなのか、分からねえまま俺は固まっちまう。
「…分かった。食ったら寝ろよ。まだ熱下がったばっかだろ」
誤魔化すように言って、アイツの手をそっと振りほどく。アイツは「うん」と頷いて、握ってた手を引っ込めたけど、俺を見上げる目がまだ柔らかい。放っとけない気持ちが膨らむだけで、俺は粥を口に運んで視線を逸らした。
朝食を終えて、キッチンの片付けが一段落した頃、ロシアはソファに座る中国の様子をちらっと見やる。丼とフライパンを洗って手を拭きながら、アイツの顔色が昨日よりだいぶマシになってることに気づいた。熱で赤かった頬も落ち着いてきて、シャツの襟がずれたまま無防備に座ってる姿も、どこか元気そうに見える。ロシアは内心ほっとしながらも、胸のざわめきが収まらないのを誤魔化すように咳払いした。
「なぁ、中国。お前、熱どうだ?測ってみろ」
ロシアがぶっきらぼうに言うと、中国は「ん?」と眠そうな顔でこっちを見上げてくる。ブランケットを肩に掛けたまま、ソファから少し体を起こして
「そうアルな、測るアル」
と呟いた。リビングのテーブルの引き出しから体温計を取り出して、脇に挟む。中国がじっと待ってる間、ロシアはソファの横に立ったまま、アイツの動きを何気なく見つめてた。朝日がカーテン越しに差し込んで、暖房の効いた部屋が薄明るい。静かな空間に、体温計のピピッという音が小さく響いた。
中国が体温計を手に持って、目を細めて数字を確認する。
「37.2度アル。平熱より少し高いぐらいヨロシ」
と呟いて、ロシアにチラッと見せた。ロシアは眉を軽く上げて
「昨日より下がってるな。もう大丈夫そうだろ」
と言うと、ソファに放りっぱなしだった上着を手に取った。アイツが回復してきたなら、そろそろ帰るタイミングだ。ロシアの家まで遠いし、いつまでもここにいる理由もない。そう思って、上着の袖に腕を通しながら
「じゃあ、俺そろそろ帰るか」
と背を向けかけた。
その瞬間、中国がソファから勢いよく体を起こし
「待つアル!」
と声を上げた。ロシアが振り返ると、アイツがブランケットを膝に落としたまま、ちょっと慌てた顔でこっちを見てる。シャツの裾が少し上がって腹がチラッと見えたけど、中国は気にする様子もなく、ロシアの腕を咄嗟につかんだ。冷たい指先がロシアの腕に触れて、心臓がドクンと跳ねた。やべえ、何だよ、急にって思うのに、アイツの熱っぽい視線に捕まって動けない。
「我…まだちょっとフラフラするアルから」と中国が言いかけたけど、すぐに言葉を切って、顔が赤くなる。ロシアを見上げる目が潤んでて、さっきの「37.2度」って報告と矛盾してるのがバレバレだ。アイツ、嘘ついてんのか?ロシアが「熱下がったんじゃないのかよ」とツッコもうとした瞬間、中国は照れたみたいに視線を落として、小さく呟いた。
「一緒に散歩にでも行かないアルか?」
その言葉に、ロシアの頭が一瞬真っ白になった。何だよ、散歩?熱下がったばっかなのに、外に出る気か?そう思うのに、アイツが「外の空気吸いたいヨロシ。ロシアと一緒なら安心アル」と付け加えてくるもんだから、胸のざわめきがまた大きくなっちまう。ロシアは上着を握ったまま固まって
「お前…風邪悪化したらどうすんだよ」
とぶっきらぼうに返すけど、中国が
「大丈夫アル。暖かくして行くヨロシ」
と笑って、ソファから立ち上がる。シャツの襟がずれた肩が朝日に照らされてて、アイツの柔らかい表情が妙に眩しく見えた。
中国はリビングの隅に置いてあったコートを手に取って、ちょっと頼りない動きで羽織る。俺を見上げて、「我、昨日から家にこもってて退屈アル。少し歩きたいヨロシ」と言いながら、タオルを首に巻いて準備を始めた。アイツのその無防備な態度と、さっきの手を握ってきた感触が頭に残ってて、俺は「放っとけねえな」と内心呟く。「ロシアと一緒なら安心アル」って言葉が耳にこびりついて、心臓がうるさくて仕方ねえ。仕方ないな、と思うのに、どこかで「アイツと一緒にいたい」って気持ちが膨らんでるのに気づいて、慌てて目を逸らした。
「分かった。少しだけだぞ。フラフラしたらすぐ戻るからな」
渋々言うと、中国が「謝謝!」と目を輝かせて笑った。アイツが玄関に向かう背中を見ながら、上着をちゃんと着直して後を追う。ドアを開けた瞬間、冬の冷たい風が顔に当たって、ロシアの頬を切り裂いた。俺には慣れた寒さだけど、中国が「好涼…寒いアル」と小さく呟いて、コートの襟を立てる姿が目に入る。アイツの横に並んで歩き出すと、中国が
「ロシア、昨日からずっと我のこと助けてくれて…ほんと嬉しいアル」
と柔らかい声で言ってきた。朝日が中国の顔を照らして、風邪声が残る中でも笑顔が穏やかで、胸がまた締め付けられる。
「お前が元気ならそれでいいだろ。礼なんていらねえよ」
またぶっきらぼうに返すと、中国が「ふーん」と小さく笑って、チラッとこっちを見てくる。その視線に何か熱っぽいものが混じってて、俺は慌てて前を向いた。家の近くの道を二人で歩きながら、冷たい風が頬を撫でるたび、中国の横顔が妙に気になって仕方ない。アイツの笑顔とか、さっきの手の感触とか、『大事アル』って言葉が頭に浮かんで、胸の熱が収まらねえ。放っとけないだけだろ、そう思うのに、「もしかして俺も…」って考えが一瞬よぎって、心臓がバクバクしてくる。
中国は「ロシアとこうやって歩くの、楽しいアル」と呟いて、風に揺れるコートを横目に笑った。その笑顔が朝日に映えて、ロシアは言葉に詰まりながら、ただ黙ってアイツの隣を歩き続けた。この気持ちの名前、いつか分かる日が来るのか…いや、もしかしたら、もう分かってるのかもしれねえ。そう思うのに、まだそれを認める勇気がなくて、ロシアは冷たい風の中で小さく息を吐いた。
中国と冷たい風の中を歩いていると、遠くから聞き慣れた声が響いてくる 。
「おい、ロシア!なんで病人をこんな寒い日に歩かせているんだ!?」
と、荒々しい声と共に現れたのはアメリカだ。カジュアルなジャケットを羽織り、手にはコーヒーのカップを持っている。隣にはイギリスがいる。
「中国、熱が下がったばかりなら家で休んでなさい」
とイギリスは冷静にたしなめる。中国が「我、大丈夫アル!ロシアと一緒だからヨロシ」と笑うと、アメリカが
「へぇ、ロシアが看病役かよ。意外と優しいじゃん」
とからかうように肩を叩いてくる。ロシアは「うるせえ」と返すが、内心では中国を他の奴らに見られるのが妙に落ち着かなくて、視線を逸らす。
「香港があなたが体調を崩したと聞いて心配していたのですよ」
イギリスは目を伏せ仕方がないと言った感じで言った。心配の原因を作った張本人は「我のこと心配しすぎアルな」と苦笑い。
「まぁ、家族想いだな。で、ロシア、お前いつまで中国の家に居座るつもりだ?」
とニヤニヤしながらアメリカに聞かれる。一瞬顔が熱くなった気がしたが冬の冷気せいだろう。
「別に居座ってねえ。帰るつもりだ」
ぶっきらぼうに返すが、中国が「我、ロシアにもう少しいてほしいアル」とサラッと言い出して、アメリカが「ほぉ~?」と意味深に笑う。イギリスは静かに紅茶を飲みながら「仲良いんですね」と一言。
俺と中国が仲がいい?
いや、仲がいいのは当たり前だ。自分でも自信を持って言える。だが改めて言われると……。
「お?なんだ?そんなに黙って」
アメリカのウザったらしい声が耳に届く。本当にウザイ。中国は
「どうしたアル?風邪移しちまったアルか…?」
と心配そうにこちらを見ている。風邪を引いている訳ではないと伝えると安心したのか中国は 「ふぅっ」と息をついた。
風邪と思われた原因は2つあるだろう。
1つは急に下を向き黙ったこと。もう1つは…
「ロシア…?でも顔真っ赤アルヨ…?」
「今は顔見ないでくれ…」
そう中国に伝えると一瞬キョトンとしたがすぐににぃと笑顔に変え「分かったアル」と返事した。その間にはアメリカは「へぇ〜〜?ほぉ〜〜ん?」とかウザイ声を出し、イギリスは「あなた達も若いですね」と言ってる。多分老人の戯言だ。
「とりあえず、今日香港はあなたの家に戻りますので」
「分かったアル」
「香港は子供なんだから中国ん家ではサカるなよ〜。グッバーイ!」
そう言い残しイギリスとアメリカは去った。
「ほんと嵐みたいな奴らアルネ…」
「いや、アメリカだけアルか…?」
俺が喋らないから中国はヒトリで喋っている。言葉を発さないと本来は行けないのだが今はそれどころではない。
昨日まで分かっていなかった中国に対する俺の気持ち…それが今分かったのだ。
その気持ちの名前は『恋心』知らない間に中国に対して恋をしていたのだ。あぁ、そうか。そうだったのか。
探していた答えが今見つかり、スッキリした反面動揺している。だって、まさか俺が中国に恋心なんて抱いていると思っていなかったし…
そんな感じで頭をグルグルさせていると中国が「あのベンチに座りたいアル」
と言ったので座ることにした。
中国は隣に座ってぴったりと体をくっつけている。恋心を完全に自覚した俺に最初の試練だろうか。
周りには人っ子一人も見当たらない。ちゅんちゅんと鳥が鳴くのみだ。
俺が黙っていると中国が口を開いた。
「朝…言わなかったこと、言えなかったこと…今。言うアル」
朝、言えなかったこと。
その言葉が意味する中国の朝の発言は…
「『…我、ロシアのこと…』」
「好き…アル。恋愛的な意味で」
中国はコートをギュッと握りしめる己の手を見ながらそう言葉を発した。
その顔は紅く、目は潤んでいた。
「…俺も」
「俺も中国の事が好きだ!」
中国の両肩を掴みこちらに顔を向けさせてからまっすぐとその言葉を伝えた。
しばらくの沈黙の後、中国は大粒の涙を流しながら
「もう…気づくのが遅いアルヨ」
と言い、抱きしめた。
自分より小さな体を壊さぬよう、それでいて強く抱きしめた。
その体はとても暖かかった