あれは2年前の夏の終わりごろの出来事だった。
授業の終わり、クラスの友人と都市伝説とか言う馬鹿げた話をしていた
「なぁ!ナリセ。ゴミ箱事件知ってっか?」
「あーはいはい。それ昨日も聞いたよ。お前ニワトリかよ」
こいつは、椎名竜樹【シイナ タツキ】。記憶力の悪い金欠男だ。
「そのゴミ箱の中に少女の生首が入ってたんだろ?何回も聞いた。」
恐らく10回以上は聞いただろう。そろそろ聞き飽きた頃だ。
「そんな与太話は置いといて。腹減ったから食堂行くぞ」
と無理矢理話を断ち切り、俺達は食堂へと向かった。
「なぁなぁ。ナリセの好きなカボチャコロッケとコッペパンあるよ」
「えまじか。ぜってぇ食う」
と後先考えずに、好きな物を好きなだけ取り気付いた。
「うん。俺の胃袋じゃ収まりきれねぇ」
「ナリセ。がんば」
俺達はテーブルに座り、ご飯を食べ始めた。
俺はガボチャコロッケとコッペパンを頬張った。やっぱり美味い。
ワンチャン食えるんじゃね?
「やっぱり無理だ。タツキ手伝ってくれ。お願いします」
2人で力を合わせ、なんとか食切った。これで改めて思った。
これからは後先考えてから行動しようと。
そうして午後の授業も終わり、帰る準備をし終え、
教室から出ようとした時だった。
「ナリセパイセン!この後って予定ありませんよね?」
「ある。だからそこを退け。めっちゃ近いし邪魔。」
やっぱり距離感がバグっている。水速遼葉16歳【ミハヤ リョウバ】
こいつとは中学時代からの腐れ縁で、昔っからこんな芸風である。
大雑把に言うと、裏表のない性格で、嘘もつけない不器用者だ。
つまりマキシマム善人。こういう奴マジで扱いに困る。
そしてアイツが急に俺の手を引いた。
「まぁいいでしょう!私お腹空いたんでご飯行きましょう!」
「話聞いてたか?てか俺腹一杯なんだけど」
「じゃあ食後のデザートですね!」
そういう問題じゃねーよボケ。と言いたい所だが、
こいつを相手にするのも面倒なので大人しく着いていくことにした。
「…ナリセ。今日は俺と帰る予定だったろ…?
しかも可愛い女の子と一緒なんて…許せねぇ!俺はまだ童貞だってのに」
「ナリセパイセン!ここです!」
そこはただの居酒屋だった。えこいつ酒飲む気?未成年は駄目だぞ?
「もしかしてお前さ酒飲もうとしてる?」
「違いますよぉ。お酒以外の食べ物とか飲み物頼みましょう!」
居酒屋って酒を取り柄にしてる店なんだけど。
どうせならファミレス行きたかった。高いやつの。勿論アイツの奢りで
そして俺達は店内へと入っていく。
「居酒屋なのに店内めちゃくちゃお洒落じゃねーかよ。」
「そうなんですよ!ここお洒落だし美味しいって評判っす!」
こんな事言うのもあれだが、居酒屋が洒落るな。
もはや喫茶店と言ってもいいぐらいだ。
「お客様、2名ですね。今満席でして相席でも宜しいでしょうか…?」
店員が申し訳なさそうに問いをする。答えは決まっている。勿論YES。
アイツの奢りならな。今俺金欠だから。
「はい!大丈夫っす!ですよねナリセパイセン」
「あぁ大丈夫だ。案内してくれ」
店員がそこの席へと案内する。そこに居たのは、
顔が傷だらけの30代くらいのおっさん1人だった。とても薄気味悪い…
「あっ…失礼しますっす!」
そして急に店員が俺達に小声で話しかけてきた。
「あの人、悪魔がどうとかうるさいので全然無視しちゃってください」
そう告げると、店員は去っていった。
「ナリセパイセン。とりあえず座りましょうっす」
「そうだな、喉乾いたし」
立ってるのも疲れたんで座る。やっぱり喫茶店だ。
こんなの居酒屋じゃない。居酒屋ガチ勢を舐めるなよ!
「ナリセパイセン、何頼みますぅ?」
俺はメニューのメロンソーダを指差した。
「メロンソーダっすね。じゃあ私はでか盛りスタミナラーメンにしよ」
まじでこいつ胃袋ブラックホールかよ。しかもそれ高いし。
金満少女め。欲しいものは欲しい、食べたいものは食べるという
我慢のきかない典型的な現代っ子である。ブタになれ
「あっ!メロンソーダ届きましたよぉ!私のも来た!」
俺達が飲食を嗜んでいると、おっさんが話しかけていきた。
「お前達…悪魔を知っちょるか…?」
店員の言う通り話しかけてきた。悪魔とか胡散臭い。なので無視した
だが、おっさんは話を続ける
「悪魔ってのはな…残虐非道で人に災いをもたらすんだ…
精神の弱い人にしか訪れない。悪魔は恐ろしい恐ろしい」
その後もおっさんは話を続けた。まぁそれは全部悪魔の話だったが。
「あーそう。なんて恐ろしいんだーいやだなー」
「そうっすね…悪魔っすか。めちゃくちゃ怖い…」
この感じ、水速は信じているな…こいつまじ単純
「水速、行くぞ。そろそろお開きだ」
「そうっすね。おじさん貴重な話をどうもありがとっす!」
そうして、会計を済ませ俺達は店内から出た。
「うわ暗いな。俺達どんだけおっさんの話聞いてたんだ?」
「そうっすね…てことでナリセパイセン家まで着いてきてください!」
うーん。はっきり言って無理だが、こんな夜に女の子1人は流石に危ない
「無理、1人で帰れ。お前なら大丈夫だ。」
「えぇぇ!!!??こんな夜に女の子を1人にしないでください!」
けっ。お前格闘技習ってただろ。
それに護身用とか言ってスタンガン持ってたじゃねーか。
居酒屋の前でクソほどどうでもいい言い合いをしてから30分。
「もぉう…ナリセパイセン…家まで送ってくれないならここで吐きます…」
「おいおいちょっと待てよ」
恐ろしい…何が恐ろしいかって、
こいつは発言から行動実行まで数秒かからないモンスターなのだ。
「分かった分かった。家まで送るから吐くのは辞めてくれ。」
「やったぁ!パイセンに家まで送ってもられるとか幸せすぎて死ねる…」
「あぁー死ね死ね。ささっと行くぞ、モンスター」
しっかし歩けど歩けど工場ばかり。これも田舎の特権だ。
そうしてミハヤのアパートに着き、解散しようとした時、
俺の目にある建物が映る。
やけに閉鎖的なイメージの建物。壁の染みや鉄柵の錆びが
死を連想させる、朽ち果てる過程の工場だ。
「なぁミハヤ。あそこにある工場、なんだか知ってるか?」
「あー、養豚場ですよ。今年の春につぶれちゃいましたけど」
「工業地帯なのに養豚場なんてあったんだな。」
「はい。そうなんです。だけど過激派ヴィーガンがそこに乗り込んで養豚場の職員全員殺してしまったんです。それで潰れたらしいです」
あまりにも衝撃的すぎて何とも言えなかった。ただ黙り込むだけ。
「犯人はまだ捕まってないそうです。顔を覆面で隠されていたそうでなので特定もできないし、当時は監視カメラもついてなかったから不念です。」
「もぉいい!その話は辞めろ。てかもう寝ろ。」
「はぁい!それじゃあ明日また会いましょうね!!ナリセパイセン!」
俺はミハヤがアパートに帰ったことを確認し、自宅へと帰った。
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