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#佐久間担
yuka🌃🪽💎@猫化中
1,014
第五十七章 白詰草の約束
白いカーテンが風に煽られパタパタと靡く。その隙間から澄み渡る青空が時折顔を覗かせていた。
翔太💙「はっ……はくしゅん」
涼太❤️「おや?風邪でも引いたのかな?」
花を人差し指で擦った翔太は、〝季節性のものです〟そう言って窓辺に立つとふとそこに置かれていた四葉のクローバーが目に止まった。
翔太💙「これ……」
涼太❤️「あぁ、ここの中庭にね、たくさん咲いているよ」
翔太💙「四葉のクローバーってお花じゃないのに、〝咲いてる〟ってなんか変じゃありません?」
涼太❤️「ふふっ……相変わらずだ」
翔太💙「ん?」
涼太❤️「実際に見に行ってみるかい?」
翔太💙「え?」
翔太は窓の外を見た。
青い空。
雨上がりの光を受けた中庭は、いつもより眩しく見える。
さっきまで胸にかかっていた雲が、少しだけ薄くなった気がした。
涼太❤️「今日は風も気持ちいい。少しくらいなら、散歩も悪くないだろう」
翔太💙「……そうですね」
小さく頷くと、涼太は病室のドアを開けた。
ペタ、ペタ。
静かな廊下に、翔太のナースシューズの音だけが小さく響く。
涼太は歩幅を緩め、後ろから聞こえる足音にそっと耳を澄ませた。
涼太❤️「ほら、やっぱり元気ないだろ?」
翔太💙「え? なんで分かるの?」
涼太❤️「君は分かりやすい」
くすっと笑った涼太は、そのまま前を向く。
涼太❤️「昔からね」
翔太💙「……そんなの自分じゃ分かんないですよ」
二人は並んで中庭へ向かった。
雨粒を残した白詰草が、風に揺れていた。
一面に広がる緑の中に、小さな白い花が無数に咲いている。
翔太は思わず足を止める。
翔太💙「すごい……綺麗。こんな場所があったなんて……」
涼太はしゃがみ込み、一株をそっと指差した。
涼太❤️「みんな幸運を求めて、四葉ばかり探すけどね。本当は、この白い花の方が主役なんだ」
翔太💙「僕はどっちも可愛らしくて好きですけどね。そう言えば小さい時、よく白詰草で遊んだな」
急に強い風が吹き、中庭に干してあった真っ白なシーツがバタバタと靡く。何処かで風に煽られたのか、ガシャンと音を立て、何かが落ちた。
その音に紛れて。
――ううっ……
どこかで、小さな子どもが泣いているような気がした。
翔太は思わず足を止める。
(……あれ?)
懐かしい。
そう思った瞬間だった。
翔太💙「リョウちゃんどうしたの?泣いてるの?」
「四葉……ここならいっぱい咲いてると思ったのに」
翔太💙「ふふっリョウちゃん、四葉はお花じゃないよ!」
「知ってるもん!」
「でも、四葉があれば翔くん行かなくて済むかもしれないじゃん」
意地けたように背を向けて、必死に涙を拭いながら、また四葉を探しだしたリョウちゃんはきっと随分と長い時間探していたのだろう。膝小僧も、腕も真っ黒でお気に入りのスニーカーも泥まみれだった。
「ママたちの話、聞いちゃった……」
「翔くん、どっか行っちゃうんでしょ?」
翔太💙「……うん。こじいんってとこに行くんだって。リョウちゃんと離れちゃうね」
「やだ……うわぁ〜ん!なんで見つかんないの!四葉のクローバー」
リョウちゃんはしゃがみ込んだまま、何度も何度も葉をかき分ける。
けれど、どれだけ探しても四枚の葉は見つからない。
翔太はそんな背中を見つめると、足元に咲く白い花を一輪、そっと摘んだ。
それからもう一輪。
また一輪。
「……翔くん?」
泣き声が少しだけ止まる。
翔太は返事をせず、小さな指で花を編み始めた。
きゅっと唇を噛み締める。
泣き声を漏らさないように。
ママに教わった通り、一輪ずつ丁寧に編んでいく。
手元へ落ちた涙が、白詰草を静かに濡らした。
翔太💙「はい、できた。ママみたいに上手じゃないけど」
花冠を差し出した翔太の頬を、一筋の涙が伝う。
「……翔ちゃん?」
その小さな声を合図にしたように、堪えていた涙が溢れた。
〝ママ〟
口にした瞬間だった。
張りつめていた糸が切れたように、翔太の涙は止まらなくなった。声を荒げて泣きじゃくる翔太を、リョウちゃんは小さい手で抱きしめると、必死で背中を摩った。
「ごめん……」
「翔くんが一番悲しいのに。」
「僕、自分のことばっかりだった……」
翔太💙「そんなことないよ?僕ね、リョウちゃんが泣いてる方が嫌だ」
翔太はそっと花冠をリョウちゃんの頭に乗せた。
翔太💙「ほら、リョウちゃん。王子様みたい//」
リョウちゃんは頬を赤く染め、照れ隠しのように後頭部を掻いた。真っ赤な頬を夕陽のせいにしながら、その日、花冠を最後まで外そうとはしなかった。
翔太💙「いつか本当の王子様になって迎えに来てね」
「うん!」
「必ず迎えに行く」
バタバタとはためくシーツの音に、ゆっくりと顔を上げる。
視線の先で、涼太が静かに微笑んでいた。胸がドキドキと激しく音を立てた。自然と伸びた手が彼の頰を撫でる。
翔太の手の上から添えられた手は何処か懐かしくて、知ってる温もりだった。
翔太💙「迎えに来たの?涼ちゃん?」
涼太❤️「遅くなったね、翔太」
しゃがみ込んだ翔太は、その場に崩れるように膝をついた。
気づけば、ストッキングの膝は土で汚れていた。
涼太❤️「……そんなに待たせた?」
肩を震わせて泣く翔太の背中を、涼太はそっと摩る。
あの頃と、同じように。
涼太❤️「着替えなきゃ。……膝、真っ黒だね。あの日、汚れたまま帰って母さんに叱られて大変だったよ」
翔太💙「ふふっ……涼太のママ怒ったら怖えもんな」
涼太❤️「それは翔太のママも同じだろ」
翔太💙「……うん。そうだった」
懐かしさが胸を満たし、翔太はもう一度だけ涙を零した。
コメント
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おかわり🍚したけど、本当に描写が優しくて綺麗なんだよなー。胸が洗われる😭😭😭
思い出したのねー!尊い❤️💙 そして毎回泣き虫❤️も可愛い🥰