テラーノベル
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翌朝、、、、雲一つない快晴。
昨日の土砂降りが嘘みたいに、校庭の砂はもう乾き始めている。
私は、きれいに畳んで紙袋に入れた折りたたみ傘を抱えて、いつもより少し早く教室に入った。西くんの席は……まだ空席。
(どうやって返そう。「昨日はありがとう」だけでいいかな? それとも「これ、お礼!」ってお菓子とか付けた方が良かった?)
そんな自問自答を繰り返しているうちに、教室のドアが開いた。
「お、おはよ」
入ってきたのは、お目当ての西くんだ。でも、昨日のこの世の救世主みたいな面影はない。寝癖がぴょこんと跳ねていて、なんだかすごく……かわいい。
「あ、西くん! おはよう」
「……あ、昨日の。傘、わざわざ持ってきてくれたんだ」
私は紙袋を差し出す。彼はそれを手にして、少し照れくさそうに鼻をこすった。
「助かったよ、本当に。……あ、これ、中見て。昨日のファイル、無事だったから」
彼が紙袋の中を覗き込む。そこには傘と一緒に、昨日私が徹夜でまとめたノートのコピーを一枚忍ばせておいた。
『テスト範囲、ここが出るらしいよ!』というメモを添えて。
「これ、もしかして……」
「昨日の『お利息』! 西くん、あんまり授業聞いてないでしょ?」
「バレてた? ……助かる。これなら赤点回避できそう」
彼は、昨日ホームで見せたのと同じ、でももっと柔らかい笑顔を見せた。
その瞬間、私の心臓が無意識に跳ねる。
「じゃあ、テスト終わったらさ。今度は僕が何かお礼するよ」
「えっ?」
「『貸し出し中』のお礼。」
彼は自分の席に戻りながら、ひらひらと手を振った。
窓から差し込む朝日のせいにしたけれど、顔が熱いのはきっと朝日のせいじゃない
雨上がりの教室。
返却した傘の代わりに、今度は新しい「約束」を貸出してしまった。。。。
コメント
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いい話やな