テラーノベル
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小笠原を牽制し、半ば強引に私を連れ出した黒瀬くんが向かったのは、人気のない非常階段だった。
重い鉄の扉が閉まると同時に、彼は私の手首を掴んだまま壁に押し付けた。
「っ、黒瀬くん…」
「……舞さん、僕じゃダメなんですか?」
低い、地を這うような声。
さっきまでの「可愛い弟分」の顔はどこにもない。
暗い階段の踊り場、非常灯の緑色の光に照らされた彼の瞳は、嫉妬で濁っていた。
「な、なにが?」
「…小笠原さんのことばっか気にかけて」
「あ、アイツは同期だからで…よく誘ってくれるし」
「ふーん。あんな男の誘い、断ればいいじゃないですか。舞さんには、僕がいるんだから」
彼は空いた手で私の首筋をなぞった。
タートルネックを少し引き下げ、自分が付けた痕を確かめるように、親指の腹で強く擦る。
「……っ、ん…。やだ、誰か来たら……」
「来ませんよ。……それより、舞さんの匂いが上書きされるのが嫌なんです。他の男の匂いつけて欲しくない」
彼は私の肩口に顔を埋め、深く、深く息を吸い込んだ。
まるで自分の所有物であることを確認するような、執着に満ちた仕草。
そのまま、鎖骨のあたりを強く噛み締めた。
「っ!」
「……これ、消えないように深く付けておきますね」
顔を上げた彼の瞳は、潤んでいながらも獲物を逃さない肉食獣のそれだった。
彼は私のスカートの隙間に強引に膝を割り込ませ、密着度を強める。
「……先輩。僕、舞さんが他の男と話してるだけで、頭がおかしくなりそうなんです」
切なげに歪められた唇が、私の唇を塞ぐ。
それは優しさなんて微塵もない、支配と執着の味がした。
逃げようとしても、彼の大きな手が私の後頭部を固定し、さらに深く、奥まで侵略してくる。
「……ねぇ、舞さん。今夜も、舞さんの部屋に行っていいですよね?」
耳元で囁かれた掠れた声に、心臓が跳ねる。
「ダメ」と言わなければいけないのに。
彼の強引な熱に、私の体は裏腹に甘い疼きを感じ始めていた。
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