テラーノベル
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ほむぺ⋆*
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珍しく明日も仕事がない、緩んだ夜。ソファに深々と体を沈めてスマホを弄っていた俺は、ふと思いついてメッセージアプリの通話ボタンをタップした。数回の軽いコールの後、スピーカーから少し籠もった声が返ってくる。
『もしもーし?何?』
「…照ー。リモートしない?」
『んー?まぁいいけど、俺今メシ作ってるよ?』
「いいから!」
半ば強引にカメラを起動してビデオ通話に切り替えると、少し遅れてキッチンに立ちながら画角を調整する照の姿が映し出された。ジュージューと油の弾ける心地よい音が、スマホ越しに部屋に響いてくる。案の定、手際よくフライパンを振って炒飯を作っている最中だった。
手元を見つめるその真剣な眼差しがカッコよくて、俺の口角が勝手に上がっていく。画面越しの視線に気付いたのか、照はちらりとこちらを一瞥し、さっきまでの鋭い表情から一転してふにゃりと目尻を下げた。
『ねぇー、何で笑ってんの?』
「ううん、美味そうだなーって。」
画面越しでも香ばしい匂いがしてきそうで、俺はソファを降りてローテーブルに肘をつき、頬杖をつきながらその姿をのんびりと見つめた。フライパンを振る手を止めないまま、照がふと尋ねてくる。
『…ふっか、もうメシ食った?』
「いや、これから出前でも取ろうかなーって思ってるとこ。」
『じゃあ今から来れば?』
あまりにも当然のようなトーンで言われて、俺は思わず間抜けな声を漏らした。
「…へっ?」
『冷蔵庫にまだ材料あるし、来たら作ってやるよ。』
そう言いながら、照は手際よく炒まった黄金色の炒飯をお皿にこんもりと盛る。それをカメラのギリギリまで近づけて、画面いっぱいに《出来たー。》とアピールしてきた。
画面越しに立ち上る湯気の向こうで、彼が少し得意げに笑った瞬間──ぐぅ、と俺の腹が絶妙なタイミングで音を立てた。
「…行こう、かな。」
目の前の美味そうな炒飯と、画面の向こうにある居心地のいい空気にあっさり毒気を抜かれて呟く。すると、スマホから《いっひひ!》と照の独特な笑い声が跳ねた。
『じゃ、俺先に食いながら待ってるから。気を付けて来いよ。』
心底嬉しそうに目を細める照の顔を見ていたら、なんだか無性に急ぎたくなってきた。《すぐ行く》と短く返して通話を切る。
画面が暗くなると同時に立ち上がり、俺は上着を引っ掴んで急いで玄関へと向かった。
フライパンからの心地よい音が部屋に響き渡り、香ばしい匂いが立ち込め始める。俺はダイニングテーブルの前に座り、自分の為だけに改めて炒飯を作ってくれている姿をぼんやりと眺めた。
「はい、お待たせ。」
ほんの数分で、出来たて熱々の炒飯が俺の目の前に差し出された。少しまとまった米粒に、色鮮やかなネギとレタス、卵がバランスよく絡み合っている。照は俺の向かいに腰を下ろす。
「いただきます!」
「どーぞ。」
フーフーと軽く息を吹きかけてから一口分を口に運ぶ。口の中に広がった絶妙な塩加減とごま油の香ばしさに、思わず目を見張った。
「…うわ、うっま。」
「だろ?ふっか仕様にちょっと味濃いめにしてあるからね。」
俺のリアクションに、照は満足そうに肘をついて俺が食べる姿を嬉しそうに見つめてくる。彼のその表情を見ていると、さっきまで一人で部屋にいた時のほんのりとした寂しさが、完全に吹き飛んでいく。
「てかさ、ふっか来るの早過ぎ。びっくりしたんだけど。」
「そりゃね、腹減ってたから。」
「あっは、…インスタントだけど、スープ出そうか?」
「欲しい!」
無邪気に笑う照は、《待ってて》と準備にとりかかる。テレビの音もついていない静かな部屋で、俺がレンゲを動かすカチャカチャという音と、ケトルが湯を沸かす音だけが心地よく響いていた。
あっという間に皿を空にして、俺が《ごちそうさま》と息をついた瞬間だった。向かいに座っていた照がすっと立ち上がり俺の隣へ移動してくると、逃げる隙もなく横から抱き竦められた。
「うわっ、ちょっと、照!?」
「すげぇ綺麗に食ってくれたじゃん。見てて清々しかった。」
耳元で低く呟きながら、照は俺の首筋に顔を埋めて体重を預けてくる。大きな体がすっぽりと背後から覆い被さってきて、彼の温かい体温と、仄かに残るシャンプーの香りが鼻腔を擽った。
「食ったばっかだから苦しいんだけど。」
「嘘吐け。ふっか、顔赤くなってる。」
首筋に触れる照の吐息が擽ったくて、身を捩ろうとするけれど、腰に回された腕はびくともしない。照は柔らかく目尻を下げて俺の頬を撫でると、そのまま軽く唇を重ねてきた。
「んっ…!?」
離れ際に俺の口から小さな息が漏れると、照は満足そうに悪戯っぽく笑った。
「画面越しもよかったけど、やっぱり近くに居る方がいいな。」
「…素直に言えばいいのに。」
照の胸に身体を預けたままぼやいてみるけれど、繋いだ指先からはしっかりと彼の体温が伝わってくる。俺は腕の中でそれを感じながら、静かに目を閉じた。
コメント
2件
すごく…好きです、 やっぱ惹かれ合うんですねぇ…(*´∀`*)
はぅんっ(゚∀゚)アヒャ これっはマジ好きぃ〜✨