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sora
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莉心
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#山中柔太郎
Yuna
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ゆいは
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第七章 交わる運命
第十二話 解けた夜
夜は、少しずつ静けさを取り戻し始めていた。
城の廊下を召使いが静かに歩いていく。
その後ろをダイチとジントが続いていた。
「客間はこちらになります」
丁寧な声。
ジントはまだ少し顔色が悪い。
そんな彼を、ダイチはさりげなく支えていた。
部屋の前でハヤトが静かに口を開く。
「……聞きたいことは山ほどある」
黄金の瞳が、真っ直ぐジントを見る。
けれど
「今日はもう休め」
穏やかな声だった。
「話は明日だ」
ジントは一瞬だけ目を伏せ、小さく頷く。
ダイチはまだ少し警戒したままだったが、それでも短く礼を言った。
「……ありがと」
ハヤトは小さく笑う。
「気にするな」
そして
「また明日」
そう言い残し、ハヤトは執務室へ戻っていった。
執務室の扉が閉まる。
静かな沈黙。
しばらく誰も口を開かなかった。
やがて、ハヤトがゆっくり息を吐く。
「……二人は、何を見たんだ」
低い声だった。
シュンタが困ったように笑う。
「もう何が何だかわからへんわ……」
疲れ切ったように、ソファへ身体を沈める。
ジュウタロウが静かに口を開いた。
「順を追って説明する」
ハヤトが頷く。
ジュウタロウは、記憶を整理するようにゆっくり話し始めた。
「まず、ハヤトが出たあと、宿屋に黒髪黒眼の人物がいるとの情報を得た」
「俺達はすぐにそこへ向かった」
「近付くにつれ、瘴気が濃くなっていくのを感じた」
シュンタも真顔で頷く。
「尋常じゃなかった」
「正直、あの時点で嫌な予感しかしとらんかったわ」
ジュウタロウは続ける。
「そして到着した時、ちょうど中から衝撃音が聞こえた」
脳裏へ、あの時の光景が蘇る。
壊れた扉。
濃密な瘴気。
暴れる影。
そして、
「……俺達が見たのは、教会の連中が月蝕の子――ジントを抑えようとしている場面だった」
部屋の空気が、少し重くなる。
ハヤトは黙ったまま聞いていた。
ジュウタロウが、わずかに目を伏せる。
「その時のジントの姿は……」
言葉を探すように、僅かに沈黙する。
すると、シュンタがぽつりと呟いた。
「あれは……衝撃的やった」
いつもの軽い調子じゃない。
本当に、そう感じた声だった。
「影が、動いてたんや」
「部屋中、真っ黒な瘴気で溢れてて……」
「正直、めちゃくちゃ怖かった」
静かな声。
ハヤトの黄金の瞳が、ゆっくり細められる。
「ジントは、ダイチを傷つけられた怒りで暴走していたんだ」
ジュウタロウは続けた。
「だが、それだけじゃない」
「ジントは、倒れたダイチへ治癒魔法を使った」
ハヤトが顔を上げる。
「……治癒魔法?」
「ああ」
ジュウタロウが頷く。
「傷が塞がっていった」
「月属性の能力だ」
その瞬間。
ハヤトの目が、大きく見開かれる。
完全に想定外だった。
かつて存在したとされる月属性。
特殊な一族のみに受け継がれ、現在では絶えてしまったと考えられている能力。
「しかもその後、外で魔物襲撃があったやろ?」
「あそこで俺ら、見たんや」
シュンタが身振りを交えて話し始める。
「ジントが、魔物の瘴気を吸収するところ」
「こう……手ぇかざして吸い込んだんやで!?」
シュンタが実演するように手を動かす。
ハヤトは眉を寄せ、深く考え込んだ。
「……やはり、月蝕の子なのか」
低い呟き。
シュンタが小さく首を傾げる。
「でも……思っとったんと違う」
「記録にあった月蝕の子よりも、人間らしいというか……」
泣きそうな顔をしながら、必死にダイチを治癒し、抱きしめる姿を思い出す。
その言葉に、ジュウタロウも静かに頷いた。
「それになぜ治癒魔法が使えるのか」
「記録とは違いすぎる」
再び沈黙が落ちる。
ハヤトは何も言わない。
ただ、静かに考えていた。
脳裏へ浮かぶのは、先程のジントの姿。
怯えた顔。
年相応の反応。
シュンタの言葉に赤くなって、必死に否定していた様子。
あれは本当に、世界を滅ぼす災厄なのか。
窓の外では、夜が少しずつ白み始めていた。
月はその光を徐々に失い、空に薄く溶けていく。
もうすぐ、夜が明ける。
第七章 完
コメント
1件
読み終えたよ!今回は第七章の締めくくりって感じで、めっちゃ重要回だったね…。 ハヤトがジントに「今日はもう休め」って優しく言ったのが印象的で、あの場面で彼の懐の深さが出てたわ。でもその後の夜会議がまた良くて、シュンタとジュウタロウが話すジントの姿がすごく具体的に伝わってきた。「泣きそうな顔で必死にダイチを治癒するジント」の場面、脳裏に浮かんでもう…胸が熱くなったよ。 記録と現実が違うってところも気になるし、月蝕の子が治癒魔法使えるって設定、めっちゃ好き。続きが待ち遠しい🔥