「…おーい?奏斗?」
 
 『…』
 
 「おーい!奏斗ってば!」
 
 『…え、あ、…雲雀、?』
 
 
 _______やば、ボーッとしてた
 
 
 あの後、おぼつかない足取りで教室まで戻った。…記憶はほとんどないけど
 
 そして何故か、いま目の前に雲雀がいる
 
 眉を少し下げて不思議そうな顔をして僕を見つめている
 
 
 「次体育やけど?」
 
 『あ…そうだったけ、着替えるか』
 
 「?…おう」
 
 
 そうか、体育ということを教えてくれたのか。優しいな雲雀は
 雲雀と一緒に教室を出て更衣室に向かう
 
 「次の体育バスケやって!最初のペア一緒に組もうぜ」
 
 
 _ペア、
 
 
 
 『……あー、…今日は、ちょっと、体育休もうと思ってて、 』
 
 「まじ?腹痛いん?」
 
 『まあそんな感じ?ごめんだけと他の人と組んでよ』
 
 
 「ん。分かった。」
 
 
 雲雀はあっさりと了承し、更衣室の扉を開けた
 自分のロッカーにつき制服を脱ぎ始める
 _______いい体してるよな
 シャツの隙間から雲雀の綺麗な体が見える
 
 って、なに考えてんだよ。変態か…
 
 
 
 雲雀から目を背け、自分もジャージに着替える。あ、…そういえばネックレス入れたまんまだった
 ポケットから取り出し、ロッカーに入れる
そのままベルトを外そうとした。
が、誰かの視線に気づき手を止める
 
 ふと横を見ると、雲雀と目があった
 
 『え、な…なに?』
 
 疑問の言葉を溢すと、ハッとした表情になり慌てた様子で言葉を紡ぎ始めた
 
 「え、あ、いや。なんかお前から、甘い匂いがしたっていうか」
 『?甘い匂い?』
 「…いや俺の気のせいかも。ごめん!」
 
 雲雀自身もよく分からないという顔をしていた。_甘い匂い
 間違えて香水でもつけてきちゃったか?
…もしかしてあのネックレス?
 _いやでも甘い匂いなんてしなかったし。
なんなんだ?
 
 
 「お前、Ωの人と仲良いん?」
 『え??Ωの人?……んー、アキラと雲雀以外わかんないかも』
 「そうなんや」
 
 “んー?”と雲雀が声を溢している
 
 
 『…なんか分かんないけど、早く行こ。』
 
 「ん」
 
 
 「今日は他のクラスとも合同です。最初の10分はペアで練習をしてください。見学者はステージに座って見学してください。」
 
 先生の指示と共に、体育館のステージに座る
合同授業のも相まって人が多い
 
 _あ、雲雀いた。
アキラとセラフと一緒に楽しそうに話している。その光景を見ながら、小さくため息をついた。
 
 「…あの…」
 
 『?…はい?』
 
 女性の声が聞こえて振り返ると、綺麗な黒髪の女子生徒が立っていた。
 どこか見覚えがある顔。
 
 確か、保健室に運んだ少女だ
 
 
 「えっと、さっきはありがとうございました!…足は捻挫って言われたんですけど、1週間後くらいには治るそうで、」
 
 『そうなんですね!無事でなによりです。……あ、それと、あのネックレスを___』
 そう言ってポケットを探る。
 残念なことにネックレスは自分のロッカーだ。その事実に気づいて肩を落とす
 
 「え?あ、あれは奏斗さんに持っていてほしくて!」
 『いや、でもあんな綺麗なもの、貰えませんよ…!』
 しかも、あれは相当な値段がするだろう。階段から助けただけだし、見返りは求めていない
 「…そう、ですか……。すみません、不快な気持ちにさせてしまったのなら謝ります、」
 
 『いや、全然大丈夫ですよ。いつ返せばいいですか?』
 
 「…うーん、じゃあ_______」
 
 ピーーーー!!
 
 「試合開始〜!!!」
 そういう声と共に、試合が始まった。
彼女の声と重なり、肝心な部分が聞こえなかった
 
 『すみません、もう一回言ってもらっていいですか?』
 
 「あ、えっと、今日の放課後…教室行きますね!」
 
 
 
 「マリー!こっちで見よ〜!」
 
 「あ、うん!…じゃあ、また放課後に、!」
 
 そう言ってニコリと笑った。
愛らしい笑顔はどこか雲雀と似ていた
 
 『…マリさん、か』
 友人らしき姿のところに走っていく彼女の後ろ姿を、見えなくなるまで見つめていた。
 
 
 
 
 ______________
 
 
 
 「起立!さようなら!」
 
 
 “さようなら〜”
 
 
 挨拶が終わった途端、クラスは急激にうるさくなる。
_______もう放課後か、
 
 
 できる限り雲雀と一緒にいるのを避けていたら、もう放課後になってしまっていた。
 自分の鞄に荷物を入れていると、トントンと肩を叩かれた
 
 「かーなとっ!帰ろーぜ!」
 
 
 そしてニパッといつもの笑顔で笑った。
_______可愛いな
…帰るだけなら、
 
 
 「奏斗ーー!お前のこと呼んでるぞー!」
 
 そういうクラスメイトの声と共に、僕の視線は扉に釘付けになった。
 そこには、マリさんがいた。こっちに気づくと優しく手を振った
 …あぁ、そうだった、あのネックレスを貰いにきたのか
 
 『ごめんひば。ちょっとまってて』
 
 そう雲雀に言い、彼女の元に近づく
 周りがザワザワしてるが、お構いなしにポケットからネックレスを取り出す
 『あの、これ』
 
 「わ、本当にごめんなさい。ありがとう」
 
 『いえ、じゃあ僕はこれで…』
 
 そう言ってマリさんの顔を見る。
彼女は上目遣いで僕の頭を見つめて、不思議そうな顔をしていた
 
 『…あの?』
 
 「ふふ、奏斗くんなんかついてる…」
 
 『え?マジですか?…あれ、どこだ…?』
 
 自分の頭を触って、なにかを取ろうとする。
 
 「…んふ、ここですよ_______うわっ、」
 
 そう言って彼女が、手を伸ばす。
 そしたら運悪くバランスを崩してしまったのだろう。僕の胸に飛び込んでしまう形になってしまった
 
 『っ!?』
 
 “きゃー!!!!!”と、周りから叫び声ににたようなものが飛び交う。彼女も焦ったように頬を赤らめながら僕から離れていった
 
 
 「ご、ごめんなさいっ!!…そ、それじゃあ!!!!」
 
 『え!?ちょっ______________』
 
 
 そう言った頃にはもう遅く、彼女はどこか走り去ってしまった。
 なす術がなく、彼女の後ろ姿を見つめていると、本日2回目。クラスメイトから囲まれてしまった
 
 「え!絶対付き合ってんじゃん!!」
 「ひゅー、お似合いだったよ〜」
 
 
 と、からかってくる
 うんざりしてため息をつくと、雲雀が間に入り込んできて、僕の腕を掴んだ
 
 「奏斗!行くべ!」
 
 
 そう言って、雲雀が走り出す。
僕もそれについていくように走り出した
 
 
 
 
 「はぁ”ーーー!疲れたー!!」
 
 『マジで無理……』
 
 
 倒れるようにして、玄関に座り込む
 あのまま流れで僕の家に来てしまった
 アキラから雲雀から離れろと言われたばかりなのに、結局約束を破ってしまった
 
 玄関に寝転び、楽しそうに笑っている雲雀を横目で見つめる
 伸ばしていた手を持ち上げ、雲雀の頬に触れようとする
 
 ____ ___なにしてんだろ
 
 伸ばしかけた手を戻そうとする
 その時、雲雀と目があった
 
 
 「どした?」
 
 
 ドキリ、と心臓が鳴る
悟られないように、あくまで平然と
「なんもない」と答えると怒ったように眉を顰めた
 
 「なんもなくないやろ。」
 
 そう言って頬をつままれた
 
 
 『いひゃい…!(いたい!)』
 
 
 「んははっ変な顔!」
 
 
 雲雀はおかしそうに笑って、隣に寝転がってきた
 
 
 _カチリと目が合う
 次の瞬間、ポツリと言葉を溢した
 
 「……匂う、」
 
 ______________…匂う?
 
 
 『え?なにが?』
 
 
 その瞬間、グリッと首筋に顔を埋める
 
 
 『は、なに!?』
 
 
 そのまま強い力でグリグリと頭を擦る
_頬が熱い。心臓がバクバクと鳴っている
 可愛すぎやしないか
 
 『…ひ、ひば?』
 
 
 「奏斗のくせに」
 
 
 そうポツリと呟くと、バッと顔を上げた
 一瞬なんともいえないような表情をした後、すごい速さで靴を履き直し、玄関の扉を開けた
 
 そして最後にこちらを振り向き
 
 「後悔しろばーか!」
 
 そう言い放って出ていった。
 
 
 『はあ!?おい、雲雀!』
 
 
 
 _______バタン
 
 
 
 
 『……はぁ、??』
 
 
 
 
 嵐のような速さで過ぎ去っていき、誰もいなくなった玄関を見つめ、ポツリと言葉を溢す
 
 
 真っ赤になった頬を隠すようにしゃがみ込む
 
 _______こんなんじゃ、離れることできないじゃん
 
 
 
 
 
 ドクンッ
 
 
 
 
 
 『…ぅッ、?』
 
 
 ________あれ、視界が、?
 
 
 
 
 
 
 
 _hbr side
 
 
 別に奏斗が誰と仲良くしても気にしない。
 奏斗はβだし普通の女の人と付き合うし
どうでもいい。
 
 _______そう、思ってたはずなのに
 
 「…なんでっ」
 
 
 朝来た時、奏斗の話題が上がってて、興味心で話を聞いたら「奏斗に彼女がいる」というものだった。
 
 本人は否定していたらしいから特に気にしてなかった。
でも、奏斗から”Ωのマーキング”の匂いがした瞬間、俺の意識はそっちにしか行かなかった
 
 体育の授業中、女の人と話してて、一目で分かった。”ああ、あの人の匂いか”って。
 その時、心にモヤがかかるみたいな、そんな感じがした。
 
 
 放課後になった時、その女の人がまた現れた。奏斗はその人に何かを渡してた。
 _プレゼント、か
 その時はまだ大丈夫だった
いや、もうダメだったかもしれないけど
 
 女の人が奏斗の胸に飛び込んだ時だ。
あれは完全にマーキングだった
 
 スリっと奏斗の首筋に匂いをつけていた
 
 
 奏斗に近づくと、あの女の人の甘い匂いがして
 それが気に食わなくて、いてもたってもいられなくて、気づいた時には俺も奏斗にマーキングしていた
 
 
 「…マーキングって、俺、」
 
 
 
 奏斗のこと、好きでもないのに
 
 _______チクッ
 
 
 「っ、?」
 
 
 一瞬、チクリと胸が痛くなった。
咄嗟の出来事に胸を抑える
 
 
 「…なんなん、」
 
 
 奏斗はβで俺はΩ
結ばれないし、俺はαの先輩が好き
 
 
 奏斗は相棒で仲間で友人
 
 それ以下でもそれ以上でもない
 
 
 
 _______それ以下でも、ないはずなのに
 
 
 _雲雀_
優しくて、落ち着く奏斗の声が頭の中で広がる
 
 
 その瞬間、下半身が熱を持ち始めた
 
 「…っは、?なんで?」
 
 ズクズクと疼く、
 
 「…っ、」
 
 どうしようもなくて、
ベルトを外して
ゆっくりと指を入れる
 充分すぎるほど濡れていて、どこか嫌気が差す
 
 「んっ……ふ…ぅっ、」
 
 くちゅくちゅと、部屋に水音が広がる
 
 「…あっ……ぁ、っ?…ぅ…うぁッ…」
 
 「っ、は、ぁ…ッん”…っ」
 
 「か、…なとっ…んんッ〜っ〜”〜〜♡」
 
 
 
 ぽたぽたと白い液体が床に溢れる
 
 
 その時初めて、奏斗で抜いた
 
 
 
 
 
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コメント
4件
めちゃくちゃ好きです!続き楽しみに待ってます。
続きありがとうございますめちゃくちゃ最高です;;;;