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差し込む朝日が、散乱した衣服とシーツの乱れを無慈悲に照らし出している。
ズキズキと疼く体の節々と、首筋に残る熱い違和感。
私は重い瞼を開け、昨夜の出来事が夢ではなかったことを突きつけられた。
(……やっちゃった。本当に、一線を越えちゃったんだ)
隣を向くと、そこにはスヤスヤと眠る黒瀬くんの横顔があった。
寝顔だけを見れば、やっぱりマスコットみたいに可愛い「わんこ系後輩」だ。
けれど、私の手首に残る赤い指の跡が、昨夜の彼がどれほど強引で、絶倫だったかを物語っている。
「……ん、舞さん。おはようございます」
不意に彼が目を覚まし、とろけるような笑顔で私を引き寄せた。
素肌が触れ合い、昨夜の記憶がフラッシュバックして顔が火を噴く。
「く、黒瀬くん。もう時間だから! 私、先に行くから」
パニックのまま彼を置いて家を飛び出し、何とか会社へ滑り込んだ。
デスクに座っても、仕事なんて手につかない。
小笠原に話しかけられても、生返事をするのが精一杯だった。
「舞、本当に大丈夫か? 昨日の夜から様子が変だぞ」
「え、ええ。ただの寝不足だから……」
その時、フロアのドアが開き、彼が入ってきた。
「皆さん、おはようございます!」
いつもの、一点の曇りもないキラキラした笑顔。
同僚の女性陣が「黒瀬くん、今日も癒やされるわね」なんて囁き合っている。
彼は完璧に「可愛い後輩」を演じきっていた。……私と目が合うまでは。
一瞬の隙。
彼は小笠原と話す私を、氷のように冷たい目で見据えた。
そして、他の社員には見えない角度で、自分の唇を指でなぞってみせる。
(……っ!)
あの唇が昨夜、私のどこを貪ったか。
それを思い出させようとする、あからさまな挑発。
「舞先輩、この資料のチェック、お願いしてもいいですか?」
数分後、彼は何食わぬ顔で私のデスクにやってきた。
周囲からは微笑ましい教育風景にしか見えないだろう。
けれど、差し出された資料の下で、彼の指先が私の太ももを執拗になぞった。
「……やめて、黒瀬くん。誰かが見てたら」
蚊の鳴くような声で拒絶しても、彼は手を止めない。
それどころか、資料を覗き込むふりをして耳元に唇を寄せた。
「……首筋の痕、隠しきれてませんよ?」
楽しそうに目を細めた彼の瞳には、昨夜と同じ「ケダモノ」の欲が渦巻いていた。
純情な顔をした絶倫後輩。
私は、彼が仕掛けた甘い罠から、もう一生逃げられないことを確信し始めていた。
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