静かな手紙

それから数週間が経った。松本春子の心には、タケシからの手紙が温かい灯火として残っていた。彼女は日々の生活に少しずつ活気を取り戻し、久しぶりに外に出て、近所の公園を散歩するようになった。

ある日、公園のベンチに座り、手紙を思い返していた春子のもとに、一人の若い男性が近づいてきた。彼は少し緊張した様子で話しかけてきた。

「すみません、松本春子さんですか？」

驚いた春子は顔を上げ、彼を見つめた。「はい、そうですけど、どなたですか？」

「僕はタケシの孫、佐藤健（さとうけん）です。お祖父さんが亡くなる前に、この手紙を届けるように言われていました。遅くなってしまって申し訳ありません。」

健はもう一通の手紙を差し出した。春子の手は少し震えていたが、手紙を受け取り、ゆっくりと開封した。

「春子へ

最後に伝えたいことがあります。君との思い出は、私の人生の宝物です。遠く離れても、君のことをずっと思っていました。君が幸せであることを願っている。

永遠に愛している。

タケシ」

春子の目には再び涙が浮かんだが、その涙は前回とは異なり、温かい喜びの涙だった。タケシの愛は、時を越えて彼女の心に深く根付いていた。

健は静かに座り、春子の話に耳を傾けた。彼女はタケシとの思い出を語り、二人の間に新たな絆が生まれた。その日、公園のベンチで、春子は過去と未来を繋ぐ静かな安らぎを感じていた。