体育祭が終わり、一週間が経った。今日も、三人で登校する。玄関に着いた時だった。冬青の上靴の中に、ティッシュペーパーが入っていた。
「え?」
「っ━━」
「あーあ、水澄が来てから、今までなかったのに。」
「どうして、こんなことを…。誰が━。」
「これくらいなら、まだ…。」
「そうだね。ひどい時は、もっと…。」
「うそ…。」
まだ、いじめられていた…。
「どうして、言ってくれなかったの!?」
「心配、かけたく…なかった…。大切な、友達だから…。」
彼は、優しい。でも、その優しさがあるから、言えなかった。
「友達だから心配かけたくなかった?違う。友達だけど、私は、話して、ほしかった。話してくれない方が、私は心配になるの。だからさ、隠さずに話してほしいな。これからは。」
「…ごめん。」
「大丈夫。暗い顔しないで、笑ってて、ほしいんだ。」
「あり…がとう。」
━━彼は優しい。だからこそ、苦しみを抱えているんだ━━
教室に着いた。
机に、なにか書いてある。落書きだ。いじめの定番らしい。私だったら、多分泣いている。でも、彼は、平気そうだ。驚いたり、泣いたり、怒ったりもせずに。これも、彼の優しさなのだろうか。それとも━━。
帰り道。私は、
「どうして、いじめをするのかな。どうして、誰も、手を差しのべてあげられないのかな。」
簡単そうに見えて、とても難しい話題だった。結局、結論は出なかった。考えたことが、なかったから。
冬青は、私たちと、よく話すようになった。無口ではなくなり、明るくなった。そんな彼のことが、ますます好きになっている自分がいた━━。
一週間後。私にとって、二人は、かけがえのない存在となっていた。
そして、冬青へのいじめは、いつの間にか、なくなっていた。彼の反応が、少なすぎたからだと思う。
その日、冬青が、
「なあ、次の土曜日、三人で遊びに行かないか?」
と、提案してきた。
「良いね!」
「どこに行くの?」
「三人で決めよう。」
「そうしようよ。」
私、この辺りのことしか知らない…。まあ、どこでも良いか。
「私はいいよ。二人で決めて。私は、どこでも良いから。」
「私、遊園地に行きたい。」
「遊園地か。良いと思う。それじゃあ、土曜日、水澄と久実の家に行くから。準備しとけよ。」
「オッケー。」
「分かった。」
遊園地に、行くことに。とても楽しみだなぁ。
コメント
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面白くていーねー