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「七不思議って、知ってるか?」
薄暗いアジトの片隅で、ホロウギルドの若手メンバーたちは静かに語り合っていた。錆の都には、長い年月の中で語り継がれてきた「七不思議」と呼ばれる奇怪な伝説がいくつも存在する。それは単なる噂に過ぎないと信じたいところだが、この都では何が本当で、何が作り話なのかは分からない。
「一つ目は、“嘆きの壁”だな」と、メンバーの一人が言った。「幽霊が集まって泣いているあの壁、泣き声を聞いたら一週間以内に呪われるって話だ」
「二つ目は“亡者の市”さ。幽霊たちが集まって、不気味な品を売ってる場所。あそこで買い物すると、買った者は品の持ち主と同じ運命をたどるんだと」
他のメンバーも次々と七不思議の話を挙げていく。「三つ目は“無限の地下道”、四つ目は“見えない列車”、五つ目は“叫ぶ水路”……」
話が進む中、メンバーの一人がつぶやいた。「それから…七つ目、“ギルドの裏切り者”」
空気が一瞬、凍りついたように静まり返る。裏切り者の話は、ホロウギルドにとってもっとも不吉な噂の一つだった。伝説によれば、ギルドの中にいる裏切り者は、ギルドを内側から壊そうとし、仲間たちを誘導しているという。そして、その裏切り者の正体は、誰もが疑いを持たない存在に隠されているらしい。
「あの噂、本当に信じてるのか?」と、真嶋が鋭い目で周りを見渡した。彼はこの不吉な話を好まなかったが、何もかもが疑わしいこの都市で、無視できる話でもなかった。
奈央が恐る恐る口を開いた。「真嶋さん、最近、私たちの行動が外部に漏れている気がするんです。いくつかの物資も、誰かに横流しされてるみたいで…」
その言葉に、他のメンバーたちは不安げに顔を見合わせる。どうやら、ただの噂ではないようだった。
「誰が、どうしてこんなことを…?」と、若手の一人が唇をかみしめている。「俺たちはただ、生き延びようとしているだけなのに…」
「だが、それが生き残りを懸けた戦いだ。誰かが我々を見下し、操ろうとしているのかもしれん」真嶋は静かに言ったが、彼の目には怒りが宿っていた。「裏切り者がいるとすれば、その者を見つけ出し、叩き出さねばならない」
その夜、ホロウギルドのメンバーたちは疑心暗鬼の中で、互いを探るように鋭い視線を交わした。ギルドの中に潜む裏切り者は誰なのか——その疑念が次第に彼らの団結を脅かし始めていた。
そして、錆の都に残された七つ目の不思議、裏切り者の影が、じわじわとホロウギルドに迫り来るのだった。