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#prtg
@ きみ以外なんて選ばないよ
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「温かい飲み物を用意してあげたり、静かな音楽をかけてあげたり、彼がリラックスできる環境を整えてあげることが大切です」
「焦らず、ゆっくりと、彼が安心して眠れるようにサポートしてあげてください」
先生は、僕と敦の顔を交互に見て、最後に穏やかな笑顔を見せた。
「そして、太齋さん、あなた自身のことも忘れないでくださいね」
「パートナーを支えることは、時に大きな負担になります。もしあなたが疲れてしまったら、一人で抱え込まず、信頼できる人に相談したり、息抜きをする時間も大切にしてください」
「あなたが心身ともに健康であることが、宏樹さんの回復にとっても重要です」
敦は、僕の手をそっと握り直し、先生に深々と頭を下げた。
「ありがとうございます。心に留めておきます。ひろのことは、しっかり支えます」
その言葉を聞いた瞬間
僕の胸には、温かいものが込み上げてきた。
敦が、僕のために、こんなにも真剣に考えてくれている。
その事実が僕の心を強く、そして優しく包み込んだ。
◆◇◆◇
診察室を出て、会計を済ませ
薬局で薬を受け取った。
小さな白い袋に入った薬は、僕の心を少しだけ重くしたけれど
敦が隣で「これで、少しは楽になるといいね」と優しく声をかけてくれた。
病院の自動ドアをくぐり、外の光が目に飛び込んでくる。
昨日までの重苦しい空気とは違い、今日の空はどこか澄んで見えた。
敦が僕の肩を抱き寄せ、ゆっくりと歩き出す。
病院の自動ドアをくぐり抜けた瞬間
容赦なく降り注ぐ太陽の光に、思わず目を細めた。
世界がこんなにも眩しかっただろうか。
診察室で先生の言葉に頷きながら、なんとか平静を装っていた僕は
その反動で一気に押し寄せる感情の波に身を任せるしかなかった。
胸の奥からじわりじわりと溢れ出してくるのは
安堵、緊張、そして拭いきれない申し訳なさ。
それら全てがごちゃ混ぜになって
どれが本当の僕の気持ちなのか、もう分からなかった。
駐車場までの帰り道
僕は意識的に少しだけ歩くペースを落とした。
すると、何も言わずにしゅんが僕の横に合わせてくれる。
そのさりげない気遣いが、僕の心にじんわりと染み渡った。
車に着き、敦が運転席のドアを開けようとしたそのとき
僕の肩にふわりと優しい手が置かれた。
「ひろ、今は無理せずゆっくり療養してこうね」
敦の声は、僕の胸に深く落ちていった。
優しすぎて、温かすぎて、今の僕にはもったいなさすぎる言葉だった。
声が震えるのを隠したくて、僕は俯いたまま
かろうじて「……うん」と小さく呟く。
「……ごめん、なんか、ごめんね、しゅん」
自分でも、何を謝っているのかさえ分からなかった。
頭の中はぐちゃぐちゃで、整理がつかない。
ようやく診断をもらって
《病気なんだ》と認めることができたはずなのに。
それなのに、心のどこかでまだ
《僕の心が弱いだけなんじゃないか》
という疑念が渦巻いている。
仕事にも行けない。夜は不安で眠れないかもしれない
まともな社会人としてのレールから外れてしまった僕は、もう敦の隣にいてはいけないんじゃないか。
そんな思いが、僕の心を締め付けた。
でも、敦はそんな僕の頭を、ためらいもなく優しく撫でてくれた。
「ひろが謝ること、ひとつもないでしょ?」
その声に、また胸がぐらりと揺れる。
優しい、温かい。
それなのに、どうしてこんなにも苦しくなるんだろう。
「……ごめん……っ、この先、ちゃんと働けるか…わかんないし……」
唇が震えるのを止められない。
こぼれ落ちそうになる感情を、どうにか押し留めようとするけれど、もう限界だった。
「きっと、夜も不安になって……しゅんのこと起こしちゃう……」
「しゅんの仕事の疲れ、癒すどころか……やっぱ、り、僕…邪魔になっちゃうんじゃないかって……っ」
言葉にするたび、視界が滲んで、涙が今にもこぼれ落ちそうになる。
僕は無意識のうちに、敦の服の袖をぎゅっと握りしめていた。
「こんな彼氏じゃ……不釣り合いだと思うんだ……っ、しゅんは、お店も成功してるし……毎日頑張ってるのに……っ」
必死に声を抑えようとしたけれど、無理だった。
嗚咽が喉の奥で震えて、どうしても止まらない。
情けない自分に、さらに涙が溢れた。
そんな僕の頬に、敦の両手がそっと添えられた。
包み込むように、温かく、そして限りなく優しく。
敦の大きな掌が、僕の顔の熱を吸い取ってくれるように感じた。
「ひろも頑張ってるでしょ?今は療養期間なんだから、なにも、今すぐ働けなくたって、1~2年は様子見してもいいと思うよ」
その言葉が耳に届いた瞬間、僕は息を呑んだ。
信じられなかった。
「てかなんなら、このまま専業主夫なってくれても、俺は大歓迎だし」
くしゃっと笑いながら言ってくれる敦の声は
なんだかもう、僕の全てを許してくれるようで。
僕の凝り固まった心が、少しずつ解けていくのを感じた。
「……あ、ひろが病気ちゃんと治して、働きたいなら話は別ね?」
冗談めかして加えた一言に、涙まじりの僕の口元が、ほんの少しだけ緩んだ。
「しゅん……っ」
「それに、ひろは“何もしてない”わけじゃない。頑張ってきたからこそ、今こうなっただけで」
敦の言葉は、まるで魔法のようだった。
僕が自分自身を責めていた部分を的確に、そして優しく解きほぐしてくれる。
「……夜中だって、俺のこと叩き起こせばいいよ」
「で、でも……そんなことしたら……っ、しゅんに迷惑かけちゃう…」
敦に迷惑をかけるくらいなら、僕なんか
夜中にひとりで震えていた方がいい。
「だから、大丈夫…っ」
そう心から思っていた。
僕の存在が、敦の負担になることだけは避けたかった。
なのに
「大丈夫なわけないでしょ」
敦はその僕の言葉すらも、優しく否定してくれた。
「え……っ、でも…」
「ひろが不安でたまらないときに、そばに居てあげられないことの方が俺は辛いから。お願いだから…そばにいさせて?」
「……っ、いい、の?」
「いいに決まってる…だから、そんなに不安にならないで。ひろのペースでいいんだよ」
言葉の一つひとつが、まるで温かい毛布のように僕の心を包み込み、深く深く染み込んでいく。
「しゅんは……ぼくが……びょ、病気になったって知っても」
「うん?」
「そ、それでも……めん、どくさい…っ、とか…っ、思わない……の…?」
「もし思ってたら病院付き添ったりしないって」
「た、確かに……?」
「それにさ、ひろが病気になったの、俺にとっては見方を変える理由じゃないよ」
「……っ?」
「一緒にいる理由が、また一つ増えただけ」
そう言われた瞬間
我慢しきれずに、ぽろりと涙がこぼれ落ちた。
僕の頬を濡らしたそのしずくを、敦がそっと指で拭って、そして、力強く僕を抱きしめてくれた。
車の中
密室の空間、エンジンもかかっていないから
外の音はほとんど遮断されて、敦の腕の中だけが、今の僕の世界だった。
敦の温もりと、規則正しい心臓の音が僕の全身に響く。
「…ぁ、りが、っ…と……しゅ、ん…ぅ、ぅぅ……」
震える声でそう言うと、敦は僕の頭をぎゅっと胸に抱き寄せてくれた。
心臓の音が聞こえるくらい、近くで。
それだけで、ああ、ここにいていいんだ
ここに僕の居場所があるんだ、って思えてしまうから──
敦って、ほんとにすごいなって、心の底から思った。
本当に僕はこの温かさに、どれだけ救われているんだろう。
不安はまだ消えないけれど、しゅんの温かさに包まれて
少しだけ、前向きになれるような気がした。
コメント
2件
久しぶりに作品読んでとても面白かったです😍💖最初表紙にとても惹かれて読んでみたらほんとに素敵な話で最高です😙💖ほんと見てよかったって思える話です‼️😍とっても素敵なエピソードたちで幸せでした💖💖これからも夢に向かって頑張ってください😆💖素敵なエピソードありがとうございました💖😆