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一ノ瀬ルナ
10
#日記
QuartoMew
1,527
62
フユめん
380
第4話 泡沫の絶殺
――休日。
朝。
蓮「…………。」
目を開ける。
カーテンの隙間から、朝の光が差し込んでいた。
蓮「…………。」
しばらく天井を見つめる。
蓮「……休みか。」
今日は学校がない。
目覚ましも鳴っていない。
急いで起きる理由もない。
それなのに。
蓮「…………。」
なぜか眠れなかった。
昨日の夜。
月を見ながら話した結翔の言葉。
そして――父親のこと。
蓮「…………。」
布団から出る。
適当に着替え、部屋を出る。
――ガチャ。
リビング。
誰もいない。
蓮「…………。」
テーブルの上には、何もない。
蓮「……クソ。」
冷蔵庫を開ける。
蓮「…………。」
蓮「何もねぇじゃん。」
仕方なく水だけ飲む。
そして。
蓮「…………。」
家を出た。
――――――
昼。
蓮「…………。」
特に目的もなく、街を歩く。
休日の街は人が多い。
家族連れ。
友達同士。
楽しそうな笑い声。
蓮「…………。」
少しだけ、その光景を眺める。
蓮「…………。」
そして。
何事もなかったように歩き出す。
途中でコンビニに寄る。
蓮「…………これ。」
おにぎりを一つ手に取る。
レジへ向かう。
店員「ありがとうございました。」
蓮「…………。」
外へ出る。
蓮「…………。」
一人で食べる。
蓮「…………。」
別に寂しくはない。
そう思っていた。
――――――
夕方。
空が少しずつ暗くなっていく。
蓮「…………。」
スマホを見る。
時間はまだ早い。
帰る気にはなれなかった。
蓮「…………。」
なんとなく。
昨日と同じように。
夜の街へ向かって歩き始める。
――――――
夜。
街灯の少ない道。
人通りもほとんどない。
蓮「…………。」
――コツ。
――コツ。
自分の足音だけが響く。
蓮「…………。」
ふと。
蓮の足が止まった。
蓮「…………。」
空気が変わった。
さっきまでとは明らかに違う。
蓮「…………。」
背中を何かが撫でたような感覚。
蓮「……ッ。」
無意識に身構える。
蓮「なんだ……!?」
周囲を見る。
誰もいない。
蓮「…………。」
なのに。
確かに感じる。
――気配。
しかも。
普通じゃない。
蓮「……この忌々しい気配は……。」
その瞬間。
??「そんな怯える必要はないわ。」
蓮「……ッ!?」
声。
すぐ後ろ。
蓮「だ、誰だ……お前。」
ゆっくり振り返る。
――月明かり。
そこに、一人の少女が立っていた。
淡い髪。
透き通るような肌。
静かな瞳。
夜の中に溶け込むような姿。
なのに。
その存在だけが妙に鮮明だった。
蓮「…………。」
??「そんなに警戒しなくてもいい。」
蓮「…………。」
蓮「俺に何の用だ。名乗り出ろ!」
少女は少しだけ首を傾げる。
??「私?」
そして。
静かに口を開く。
??「私の名は――」
一拍。
??「…………彗音。」
蓮「…………彗音…彗音って…」
その名前。
聞いたことがある。
昨日。
父親が口にした。
――『彗音という女についてだ。』
蓮「…………。」
彗音「…………。」
蓮「……アイツが言ってた。」
彗音「誰?」
蓮「親父が…」
彗音「…………。」
ほんの一瞬。
彗音の表情が変わる。
蓮「…………。」
蓮「やっぱりそうか…」
彗音「何の話?」
蓮「アンタ」
蓮「親父と何か関係あんだろ?」
彗音「…………。」
答えない。
蓮「…………。」
蓮「なぁ」
蓮「何が目的だ?あのクソ親父は俺に変な事押し付けてきてて切羽詰まってるってのに…」
彗音「…………。」
蓮「予測だが俺を殺すつもりなら……」
蓮「女でも容赦しないぞ───」
彗音「…………。」
彗音は蓮を見つめる。
そして。
彗音「貴方、もしかしてコロシ屋さん?」
蓮「だったらなんだよ」
彗音「コロシ屋はそんな簡単にやれる事じゃない」
彗音「……人を殺すたびに――自分の中の何かも、少しずつ死んでいくんだから。」
彗音「最初は怖い。」
彗音「次は慣れる。」
彗音「そのうち……何も感じなくなる。」
蓮「………ッ」
彗音「……でもね。」
彗音は静かに蓮を見る。
彗音「何も感じなくなった時が、一番怖い」
蓮「…………ッさっきから何を言いたい?」
彗音「…………」
彗音「私にも、よく分からない。」
蓮「…………は?」
彗音「ついつい喋ってしまう…これは大事な事。最後まで聞いて?」
彗音「その時にはもう――」
彗音「自分がどこまで壊れているのか、自分自身にも分からないから。」
蓮「…………。」
彗音「だから。」
彗音「もし貴方が、まだ何かを感じられるのなら」
彗音「それだけは……絶対に捨てないで欲しいの」
彗音は屈託ある笑顔を浮かべた
蓮「…………。」
その言葉に。
蓮は何も言えなかった。
だが。
彗音「…………」
彗音の瞳が、少しだけ鋭くなる。
彗音「後ね…」
蓮「…………?」
彗音「一つだけ貴方に言っておきたい」
彗音「貴方じゃ私に勝てない。」
蓮「…………。」
蓮「……はッ」
蓮の口元が上がる。
蓮「言ってくれるじゃん…」
一歩。
蓮が前へ出る。
蓮「俺、負けるの嫌いなんだけど」
彗音「負けず嫌いなのね…子供臭い…ᯣ_ᯣ」
蓮「………え、何その目…急にそうなんのやめてよ」
蓮「つかこんなん話してる場合じゃねぇーだろ!なんで知ってんだ…」
彗音「それは……見ていたから」
蓮「…………。」
蓮「いつから?」
彗音「少し前から」
蓮「…………は?まじかよ……」
蓮「気味悪いな…」
彗音「観察してたのが気色悪いのなら……人をジロジロ見れない……」
蓮「…………お前急に変なキャラになるよな??」
彗音「……でも」
彗音「私は貴方を殺さない」
蓮「…………。」
蓮「じゃあ何しに来たの?」
彗音「…………。」
彗音は空を見上げる。
月。
蓮もつられて空を見る。
蓮「…………。」
彗音「綺麗ね。」
蓮「…………話切り替えんな!」
彗音「今日、月も星も綺麗」
蓮「…………。」
蓮「あ、観察…し忘れた……」
彗音「月とか好きなの?」
蓮「…………まぁ見て飽きないし……な」
彗音「…………。」
少しだけ考えて。
彗音「へぇ、私も今度から月を見るようにしよ……( .ˬ.)“」
蓮「……急に素直になったねお前……やっぱ変なやつ…」
彗音「でも、夜は好き。」
蓮「なんで?」
彗音「静かだから」
蓮「…………。」
昨日と同じ月。
けれど。
隣にいる人間は違う。
蓮「…………。」
彗音「…………。」
静かな時間が流れる。
やがて。
彗音「あ、もう行かなきゃ」
蓮「…………は?」
彗音「また会いましょうコロシ屋さん?」
蓮「ちょ…!待てって!」
彗音は歩き出す。
蓮「おい!」
彗音「…………。」
振り返らない。
蓮「…………。」
数秒後。
蓮「…………消えた…!?」
そこには。
もう誰もいなかった。
蓮「…………。」
蓮はしばらく、その場に立ち尽くす。
そして。
蓮「…………彗音…アイツ何なんだ…?」
その名前を呟く。
――その時。
スマホが震えた。
――ブブッ。
蓮「…………。」
画面を見る。
父親からだった。
『例の件の情報をお前にも送る。安易に扱うなよ』
蓮「…………。」
続けて。
『 能力発現――10歳』
『現在――17歳』
蓮「…………。」
蓮の目が細くなる。
蓮「…………。」
蓮「……あのクソ親父俺を使いやがったな…」
蓮「何か知ってんなら教えろよボケ」
月明かりの下。
蓮はスマホを握り締めた。
――この夜。
蓮はまだ知らない。
『泡沫の絶殺』と呼ばれる少女が。
なぜ自分の前に現れたのか。
そして。
なぜ父親が、彼女を恐れるような言葉を口にするのか。
ただ一つ。
分かったことがある。
彗音との出会いは――
偶然ではない。
コメント
1件
ああ、第4話、読ませていただきました……! 彗音さん、いきなりの登場でドキッとしました。あの「♡♡♡屋」の話、すごく心に残ってます。「何も感じなくなった時が一番怖い」って、彼女自身の経験から出た言葉なんだろうなって思うと、胸がぎゅっとなりました。 それに、月を見ながら急に素直になる彗音さんと、戸惑いながらもつい月を見ちゃう蓮くんのやりとり、何だかほっこりしました。でも最後の父親からのメッセージでまた一気に不穏な空気に…続きがすごく気になります! 天羽朔さんの描く、静かな夜の空気感と、キャラ同士の距離感の変化が本当に素敵です。次の話も楽しみにしています🌙