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放課後の教室。
昨日の出来事を思い出し、胡々は授業中もどこか上の空だった。
(佐倉くん、あの後どうしてるかな……。)
ペットボトルを飲んだあとの彼の赤くなった顔を思い出すと、胡々の胸はふわりと熱くなる。
「……胡々、どうしたの?」
隣の席の友人・奈々が、じっと胡々の顔を覗き込んでくる。
「えっ? な、なんでもないよ!」
「なんでもないって顔してないんだけど……もしかして、恋の悩み?」
「ち、違うってば!」
胡々が必死に否定するが、奈々はニヤニヤしながら「ふーん?」と怪しむ。
そんなやりとりをしていると、休み時間の終わりを告げるチャイムが鳴った。
「またあとでね、胡々♡」
奈々が意味深に微笑みながら席に戻るのを見送り、胡々はふぅっと息をつく。
(恋……なのかな、これって……?)
心の中で問いかけながら、そっと佐倉の後ろ姿を盗み見る。
* * *
放課後。
胡々がカバンを持ち、帰ろうとしたその時――
「神山。」
聞き慣れた声に振り向くと、佐倉が少し気まずそうに立っていた。
「佐倉くん……?」
「昨日のこと、悪かった。」
彼は少し視線を落としながら、不器用に言葉を紡ぐ。
「え?」
「お前の飲み物、勝手に飲んで……悪かったって。」
胡々は思わずくすっと笑ってしまう。
「そんなの、もう気にしてないよ。」
「……そっか。」
佐倉は短く返事をしながら、ふとポケットからペットボトルを取り出す。
「ほら。」
「え?」
「昨日のお詫び。お前、レモンティー好きだったろ?」
手渡されたのは、胡々がよく飲んでいるレモンティー。
(ちゃんと覚えててくれたんだ……。)
「ありがとう、佐倉くん。」
胡々が微笑むと、彼はまた少し目をそらしてぼそっとつぶやく。
「……別に、大したことじゃねえし。」
そんな不器用な優しさが、また胡々の胸をキュンとさせる。
だけど――
「でも、どうせなら一緒に飲みたかったな。」
思わず口にした言葉に、自分で驚いた。
佐倉も一瞬動きを止め、目を丸くする。
「……お前、それ……わざと?」
「え?」
「……もう知らねぇ。」
そう言いながら、佐倉はポケットに手を突っ込み、教室を出て行こうとする。
(あ、逃げた。)
胡々は小さく笑いながら、彼の背中を見つめた。
届きそうで、まだ届かない。
そんな微妙な距離に、心がくすぐったくなる。
――佐倉くんとの関係、少しずつ、変わっていくのかな。