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─桜咲く街中。その時からだろうか、君は輝いていた。鮮明で、焦げるような痛みを伴う恋を、君と共にしたね。



…ああ、もしも例えるならば雷だろう。それはまだ高校三年生だった俺の心にはっきりと爪痕を残し、思わせぶりの好意とひとつまみの恐怖を俺に植え付けた。



「好き。…俺は、兄ちゃんのこと…好きやで」


頬にすうっと赤色が差し、そっと微笑む伊織。

その瞬間に、痛みに似た恋が体を走った。好意と捉えていいのか、はたまた親愛と捉えるべきなのか。そんな迷いの中、俺は賭けをする。



キスをした。戸惑いを浮かべる伊織の頬は、あの日のように色づかない。

冗談やろ、と薄く笑った伊織に俺の真っ直ぐな愛情を教えるように、何回も。

このキスが、いつまでも続けばいいのに。そう思っていた。



「兄ちゃん、?」


戸惑っている様子で、顔を真っ赤にして、泣きながら伊織は甘い吐息を漏らす。

びりびりと走るどうしようもない幸福感に身を任せ、ひたすら獣のように俺らは愛し合った。突く度に揺れながら踊る髪の黒は、白い肌と相まってどこか嫋やかで。愛おしさと、罪悪感と、気持ちよさと。ぐしゃぐしゃになった感情は、欲望を止めてはくれなかった。



それから数年後もまた、このベッドで目を覚ます。先に起きていた伊織は、ずっと深くまで闇を湛えた瞳でどこかを見つめていた。声をかけても、おざなりな返事を返すだけで愛情表現はしてくれない。


伊織はよく、俺の隣で泣いている。ひとしきり抱き合って寝る時に、何も言葉を交わさなくなってすぐ、後ろですすり泣きが聞こえて。ああ、間違った判断をしてしまった。最愛の人が泣いている。すぐにでも抱きしめてやりたかったのに、伊織が寝るまで俺は動けなかった。頬に手を伸ばす。何かが壊れるような気がして、…怖かったんだ。


だからこそ、伊織を傷つける物をみんな消してやろうと思った。伊織を絶望に陥れて、そのあと抱き締めて全てなかったことにできるのは、俺だけだから。


もし、あの時みたいに伊織を犯すような奴が現れたとする。その時はあの時よりももっと、その人間の伊織との記憶を、痛くて苦しいものにしてやろう。



「もう、恋人ごっこなんて、したく、ない…」

初めて、伊織に苛立ちを覚えた。いつから、伊織は恋人ごっこなんてものと勘違いしていたの?

でも、この”恋”の発端など分かりきったこと。でも、身体は言うことを聞いてくれなかった。


本当に、自分勝手な兄ちゃんだよね。…ごめんね、伊織。



次の日、伊織が俺を殺しに来た。俺に跨るように座って、包丁を突き立てる伊織。俺をじっと見つめる瞳は潤んでいる。

でも、やっぱり俺がいないとどうにもならないみたい。俺を殺したら独りぼっちだと伝えると、包丁を傍に置いてされるがままになってしまった。



「…俺も、好き」


その日の夜は、お互いに愛を確かめあった。伊織は甘い声で喘ぎながら「好き」と繰り返す。キスを交わし、頬に手を伸ばすと、伊織はその手を握ってにこりと笑ってくれた。



目を見つめた。すると伊織は、優しく笑う。

細い声で俺の事を呼ぶ伊織。もう、俺らは両想いだ。


言葉にするのも、形にするのも。そのどれもが覚束なくって。

ふらふらと揺れる髪は、甘い香りを纏う。


いつか消えてしまいそうなその肌を撫で、俺は、


「いつまでも、そのままでいてね」


と言った。




参考楽曲【春雷/米津玄師 様】


自プロジェクト #歌を描け

掲載作品


創作恋愛ストーリー

いつかの恋と、踊る髪


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