そこには金森梓と表示されていた。「あ、なんだ、金森か・・・よかった」
発信元が警察では無いという事実を目の当たりにして、安心したようにホッと胸を撫で下ろす駿。
「でも・・どうしたんだろ?何かあったのかな?」
駿はすぐさま梓からの電話に出る。
「はい!もしもし?」
「皆川駿だな?私は警察だ!」その声は明らかに梓だった。
図太く低い声で言っているが明らかに梓だった。疑う余地もなく梓だった。まごう事なき梓だった。
「いやいや、金森だろ?」「何を言っている!私は警察だ!」
「いや、そもそも画面に金森って出てるしなぁ」
「なんだぁ〜つまんないの!先生の事脅かしてやろうと思ってたのに〜」梓は悔しそうな声を出す。
「てか、どうしたんだ?何かあったのか?」
「いや、別に何かあったって訳じゃないんだけど、何やってるのかなぁ?って思っただけ」
「ふっ、なんだよそれ」駿の顔から笑みが溢れる。
「あと、次の条件も話したいしさ」
梓の一言で空気がピリつく。
「ん?次の条件?ナニソレ?」
「いやだなぁ先生、またとぼけちゃってさ!」
「ん?何の事だ?」
「先生のアレを黙っとくための条件だよ。忘れないでよね?」
梓の言葉を聞いた駿の額から、一筋の汗が滴り落ちる。
「いや、待てよ!アレは終わっただろ?」
「何言ってんの?勝手に終わらせないでよね?そもそも私は”条件はこれで終わり”なんて一言も言ってないし」
「いや、勘弁してくれよ!金森が黙っててくれるって言うから見せたのに」
「勘弁してほしいなら、私のお願い聞いてよ!ね?」
「マジかよ・・・」
駿は少し考えて頭を整理する。
「ち、ちなみに、その条件ってなに?」
条件次第では許容したいこともない。
そう考えて駿は梓に尋ねるが
「それは私のお願い聞いてくれるって言わなきゃ教えらんないよ❤︎」 梓は軽く突っぱねる
「いや、それは・・」
「やる前に条件聞くのは反則だよね❤︎」
そんな事を言われてしまっては、拒否する事など出来るわけもなく、駿は受け入れるしかなかった。
「わ、わかったよ・・やるよ、やるから!だから教えてくれ!今度は何をすればいいんだ?
「オッケ❤︎次はね・・・・」
先ほどの条件よりも優しい条件になるのか?
それともさらに攻めた条件になるのか?
駿は内心穏やかではなかった。
「どんな条件なんだ?」駿は優しい条件でありますようにと心で願いながら梓の条件を聞く。
「先生がひとりでシてるトコみせて❤︎」
駿の頭の中でクエスチョンマークが踊る。
「ひとりでしてる?何をだ?」
「まぁた先生とぼけちゃってさ」
「いや、何をすれば良いのか言ってくれないと」
「女の子の口からそれ言わせる気?てか、今朝も私同じこと言ったよ?先生ってば鈍感すぎだよ」
駿は頭の中を整理していた。今朝は淫部を晒せという条件で、先ほどは梓にキスをした。
そして次はひとりで何かをしろという。
「ひとりで・・ひとりで・・・」
駿は頭の中であるひとつの答えに辿り着いた。
「あ!ま、まさか、オナ」
「その通り!さすがに鈍感な先生でもわかったか。」
梓の条件。それはつまり駿に梓の目の前で自慰行為をしろと言う条件だったのだ。
「バ、バカな事言うなよ!!そんな事出来るわけないだろ!何言い出すんだ!!」
駿は全力で梓の条件を拒否する。それもそのはずだ。
未成年である梓に淫部を晒し、キスをした事ですら倫理的にアウトな行為だと言うのに、さらに自慰行為を見せつけるなどありえない。
「えー?ダメなの?」梓はガッカリしたような声を出す。
「何で落ち込んでんだよ!ダメに決まってるだろ!」
「なんで?男の人って、女の子に見られながらすると興奮するんじゃないの?先生も興奮できるし、私もお願い聞いてもらえるし、ウィンウィンじゃん❤︎」
「ウィンウィンってなぁ・・」自分が口にした事の重大さをあまり理解していない梓の言葉に、駿はガックリと肩を落とす。
「いいか?金森!俺はもうすでに倫理的にまずい事をしちゃってるんだよ。そこにさらにアウトな行為を重ねる事はできない」
「ならもう何したって同じじゃん!もうアウトなんだし❤︎」
「1人殺すもの2人殺すのも同じみたいに言うなよ」
しかし、一見理不尽とも言える梓の言動も、見方を変えれば正論とも言える。
確かに駿はもうすでに、未成年に対して淫部を晒し、おまけにキスをすると言う、他人から犯罪者だと言われてしまっても否定できない状態に居る。
そこに自慰行為を見せつけたという事実が加わったところで、犯罪者だという事実は何ら変わりない。
仮に梓を無理やり犯したとしても同じく犯罪者。しなくても犯罪者。
言ってしまえば無敵の人状態という事だ。
「えー?ダメなの?」
「た、確かに、金森の言う事も一理あるよ。俺はもうすでにアウトな行動を重ねてる。けどやっぱり俺には無理だ。出来ない」
根が優しく真面目な駿には、そんな非情な選択は出来なかった。
「うー・・・ん」梓は少し考える。
「せめて条件を出すなら、もっと、なんなこう、倫理的に大丈夫な感じにしてくんないかな?俺に出来る事だったらやるからさ!頼むよ!な?」
駿は梓に条件を帰るように懇願する。
「わかったよ、条件変えたげる❤︎」
駿に根負けしたのか、梓は駿の条件変更を受け入れる。
「え?ほんとに?」「まぁ、あんまり先生いじめちゃ可哀想だからね❤︎」
「ありがとう金森・・助かるよ」
駿は安堵の息を漏らす。しかし、梓が次にどんな条件を提示してくるかは、現時点ではまだわからない為、まだ安心はできない。
「で?次の条件ってなんなんだ?」
「うー・・・ん、そうだなぁ・・・」
そんな梓を回答を生唾をゴクリと飲み込みながら待つ駿。
「なら、私を先生の家にあげて❤︎それならいいよ❤︎」
梓はしばらく考えた後新たな条件を提示してきた。
「あげてって、俺の家に入りたいって話か?」
「そ❤︎それならいいよ❤︎」
「いや、でも未成年を親の同意なしに」
「もう!ワガママだなぁ先生は!これでも譲歩してあげてるんだよ?」
駿の言葉を遮るように、梓は不貞腐れた様子でぼやく。
「いや、そう言われてもだな、やっぱり」
「ふん!いいもん!先生が嫌って言っても勝手に行くから!」
駿は梓の言葉の意味がわからなかった。
「勝手に行くって、俺の家に?金森は俺の家知らないだろ?」
梓は駿の住所は知らないはず。それなのに勝手に行くとはどういう事なのだろうかと駿は疑問だった。
そんな駿の問いかけに梓は意味ありげに含み笑いをする。
「ん?何だ?何笑ってるんだ?」
「私、今どこに居ると思う?」
「え?どこって・・普通に家に居るんじゃないのか?」
「はーっはっはっは!それが違うんだなぁ!」
梓はまるで何処ぞの悪役かと言わんばかりに高らかに笑う。
「違って・・なら今どこに・・・」
「カーテン開けてみれば?そうすれば分かるような気がするよ?」
「え?ま、まさか・・・」
駿は梓の発言に一抹の不安を抱きカーテンを開けると、 そこには自宅へ帰ったはずの梓の姿があった。
「なっ!!!!!!!!!」
梓の姿を見た駿の額から大量の汗が噴き出る。
そんな駿を目視した梓は「やっほー❤︎先生❤︎」と笑顔で手を振る。
そんな梓を見た駿は焦ってカーテンを閉める。
「ちょっと!何でカーテン閉めるのっ!?」
梓は不貞腐れた様子で駿に詰め寄る。
「いや、何で居るんだよ!てか何で俺の家の住所は知ってんだよ!」
「あれ?気づいてなかったの?私ね、先生と別れたあと、家に帰らずに、先生のあとずーっと付けてたんだよ?」
「え?まじで?」
実は、夕方に駿と自宅アパートの前で別れた梓は、ずっと駿の事を、家まで尾行していたのだった。
そんな衝撃の事実を目の当たりにし絶句する瞬。
「あ!本当に気づいてなかったんだね!なら私って尾行の才能あるのかな?きゃはは❤︎」
梓は無邪気に笑う。
「頼む!帰ってくれ!お願いだから!詳しい事は明日学校で話そう!な?か?」
駿は梓に自宅へ帰るように懇願する。
「あー、そーゆー言うんだ!へーわかった!ならココで叫んじゃおっかなぁ〜」
「叫ぶって?何を?」
「学校の先生に無理やり、おち◯◯ん見せつけられました〜!ってね❤︎」
梓の一言で駿の顔は真っ青になる。
「なんでそうなるんだよ!」
「こんな住宅地で叫んだりしたら、どうなっちゃうんだろ?試してみょっか❤︎」
そう言うと梓は思いっきり息を吸い込む。
「だぁああああ!分かった!分かった!来ていいから!叫ばないでくれ!」
住宅地でそんな事を叫ばれてしまっては、駿の人生は崩壊確実。
駿には梓を自宅に招き入れる以外に選択肢はなかった。
「あ!やっとその気になったね❤︎」
「もう、心臓に悪いって・・・」
駿は仕方なく、半ば諦め気味に梓を家に迎入れる。
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