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39 ◇チャンスをください
彼がみそ汁に入れるためのお湯をキッチンに取りに行ったので
手伝おうと私もキッチンに入った。
「いいよ、いいよ、今日はお客様だから座っといて」
「そう?」
お寿司の時は、引き下がったものの、食後のコーヒーは私が淹れた。
「久しぶりにひまりの淹れてくれたコーヒー飲むけど
自分で淹れたものとはぜんぜん違うなっ。
むちゃくちゃ美味しい」
「褒めまくっても何にも出ませんよー」
「いやぁ、だって……美味しいんだから褒めるよ。
こうやってひまりと向き合ってコーヒーを飲める日が来るなんて思っても
みなかった……から、刺されて良かったのかも」
「止めて、そんな自虐的な台詞。
どれだけ皆を心配させたと思ってんの? ぶつわよっ」
「ホントにぶってくれるんなら……ほらっここっ」
そう言って滉星が片方の頬を突き出した。
「何か、らしくないキャラになってなぁ~い? ふふっ」
このあと、一瞬静寂がふたりを覆った。
先に静寂を破ったのは、滉星。
「ひまり、ここに戻って来てほしい。俺のところへ……。
厚かましいのは重々承知してるけど、やり直してもらえないだろうか。
何度ひまりとの生活を諦めようと……自分に言い聞かせるんだけど駄目なんだ。
もう1度だけチャンスをくれないかな」