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Eliminator~エリミネ-タ-

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Eliminator~エリミネ-タ-

126 - 第126話 七の罪状 ~後編⑭ 哀しき決着

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2025年06月18日

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――対象者の胎内に投与させた死海血を、特異能の力で膨張させる事により内部破裂を起こす。



その破壊力もさる事ながら、一度捉え発動すれば、防ぐ手段さえ――皆無。



「ああぁぁぁぁっ!!」



チャリオットの美しい五体は見る影も無い迄に脹れ上がり、やがて原型も残さず木端微塵となる。



それは敵とはいえ、目を背けたくなる程の惨劇の開演が幕を開ける――筈だった。



「…………っ?」



チャリオットはおろか、思わず目を背けた悠莉と琉月も怪訝に思う。



惨劇処か、技自体の発動がされていない。



「……どうしたの? 悔しいけどこの闘い、アナタの勝ちよ。なら早く終止符を打ちなさいな」



潔く負けを認めたチャリオットは、躊躇っているようにも見える時雨へ、早急な止めを促した。



それが裏の闘いに於ける鉄則であり、勝者の義務。



「……そう、勝負は着いた。これ以上は無意味という――ね。だからこれで終わりだよ」



だが時雨は止めを否定。死によって終わるのではなく、あくまで勝ちさえすればいいと。



「何を寝惚けた事言ってるの? 抹殺対象に容赦は不要――知らない訳じゃないでしょ」



そうなのだ。チャリオットの言う事が正論で有る事は元より、そもそも今回の闘いの主旨は、ネオ・ジェネシスの完全根絶に有る。止めを刺そうとしない時雨の行動は、狂座の規約にも反する事になる。



「まさかとは思うけど、私だからと情けをかけてるつもりじゃないでしょうね?」



「――っ! そ、そうじゃねぇけど……」



図星だった。当初は殺すつもりだった、許せなかった。



だが土壇場になって迷いが出た。やはり心の何処かで、時雨は彼女を信じていた――敬愛していたのだ。



「私も随分と見くびられたものね……。弟子に情けをかけられるなんてね。時雨……やはりアナタは、まだまだ甘ちゃんね。そんな事では、真のエリミネーターの域へはまだまだ遠い。ふふ……」



チャリオットはそんな時雨の甘さを指摘し、力無く微笑した。



「確かにそうかもね。だが俺のココが、アンタを殺したくねぇって言ってんだよ」



時雨はその甘さ承知しながらも、己の胸を叩いた。それは心の事を言っているのだ。



「だから崋煉さん。大人しく負けを認めて退いてくれ。見たくねぇんだよ……アンタが誰かに倒される所なんて――」



“俺の憧れだから”



時雨はそれ以上は言わなかった。



美しくも強かった、自分の目標で象徴でもあったSS級エリミネーター。何時か自分もその領域へ。



「…………」



チャリオットも言葉を発さない。時雨の訴えに迷っているようにも見えた。



「ありがとう。だけどまだ――」



“まだ終わらない! 終わってはいけない”



だがチャリオットに、時雨の想いは届かなかった。否、確かに届いたのだが、このまま退く気も無い。



チャリオットは再び、戦闘態勢へと移行する。その次なる一手は――。



「馬鹿な事は止めろ崋煉さん! 異能処か、動く事もままならない今のアンタに何が出来る!」



当然、チャリオットに次の一手等、有ろう筈が無い。死海血は変わらず、彼女を捕らえたままだ。



「時雨さんの言う通りよ。もう止めなさい崋煉!」



同じく、琉月も闘いを続けようとするチャリオットへ訴え掛けた。時雨と同様、琉月も彼女に死んで欲しくないのだ。



師弟である彼等同様、琉月とチャリオットは御互い認め合った、裏に於いて数少ない親友同士。



「ホントに甘いんだから二人共。お似合いよ……」



構わずチャリオットは、発動出来ない筈の特異能を発動しようとする。



勿論、外部へと発動出来る筈が無い。



だが違った。彼女の狙いは外部ではなく――内部。



「やめっ――」



止める間も無く、チャリオットの身体が炎に包まれた。



“オーバークライシス・アウト”



「なっ……」



戦闘を続行する為ではない。意図的な異能行使過多による焼き付きを以て、チャリオットは自らこの闘いに幕を下ろしたのだ。



「何て馬鹿な事を……」



琉月はこれが何を意味するのかを知っている。最早止める手段は無い。それでも、やるせなかった。



「何でだ! 何でアンタはそこまで……」



時雨もうなだれるように膝を着く。



「これも運命って事よ……」



燃え盛る炎に身を包まれる中、それでもチャリオットははぐらかした。そしてエンペラーの方を向く。



「…………」



エンペラーは何時の間にか玉座から立ち上がって、彼女を見据えていた。



「ごめんユキ。先に行ってるね。御武運を……」



チャリオットはエンペラーへと、別れの言葉を告げる――永遠の。そしてまた。



「さようなら……。また逢おう」



エンペラーも一言、同士へと贈る。とても、とても哀しそうな、憂いに満ちた表情で。それはかつて亜美に見せたのと同様の、“愛しい人”へ向けてのーー。



「――じゃあ精々頑張りなさいな二人共。まあ、無理だとは思うけど」



燃え散る間際、琉月と時雨の方へ向き直ったチャリオットは、最期に激励でもないが餞を贈る。



「運命からは逃れられない……」



そして意味深な一言を最後に、チャリオットの五体は欠片一つ遺さず、その存在を消していった。



「待ってくれ崋煉さん!」



時雨は手を伸ばすも、其処にはもう何も無い。



「くそっ!!」



やりきれなさか、力の限り拳を地に叩き付ける――が、それが限界だった。



「ぐっ!?」



時雨は力無く、崩れ落ちようとする。体力も、傷の具合も限界を迎えたのだ。



「時雨さん!?」



そんな時雨を、琉月は思わず介抱し支えた。



時雨は本当に酷い状態だった。こんな身体で闘えたのが不思議な程に。



「ルヅキ~、持ってきたよ」



悠莉が二人の下へ駆け寄って来る。その手には救急箱を携えて。



船には狂座秘薬のエクスポーションこそ無かったが、通常の医療品が常備してあったのだ。この超人達の闘いに於いてそれは気休め程度でしかないが、それでも琉月は悠莉と共に、既に意識を失ってしまった時雨の手当てに入る。



「――まさかカレンが敗れるとは……。これは予想だにしない展開だった」



そんな彼等のやり取りを、手出しする事無く眺めていたエンペラーは、再度氷の玉座に腰を下ろす。



「……まあいい。闘いにアクシデントは付きものだ」



“……コイツ?”



磔られたままの雫は、確かに見た。エンペラーの口振りとは裏腹に、その拳は硬く握り締められ、震えていた事を。



「さて、次はどうかな?」



だが思わず見間違いと思える程、見上げたエンペラーの表情は、何時も通りの冷笑だった。



「フン……。薊は負けん。次もテメェの思い通りにはならねぇよ」



二人の向かう、次なる視線の先は――。

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