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話は何日も前に遡り、
ジークとイドゥン教が出国したあとの話。
フィヌノア国に向かう道にて。
ジーク「ぅおぇ…。」
ジークはグロッキーになっていた。
アグレス「大丈夫ですか?」
ジーク「一旦吐きたい…。」
ルシアス「1度ここで休憩にしましょう。アルケル。」
ルシアスは御者台で馬の手綱を握っているアルケルに話しかける。
アルケル「なんですか?」
ルシアス「貴方も疲れたでしょう。1度ここで休憩にしましょう。」
アルケル「承知いたしました。 」
アルケルは手際よく馬車を停め、御者台から降り馬車を引いていた馬に話しかける。
アルケル「お疲れ様です。貴女たちも暫く休んでいてください。」
ルシアス「アルケル、ありがとうございます。テオス様は…」
アグレス「上手く吐けないようですので、補助いたします。」
ルシアス「お願いします。馬車はどうやら初めてだったようですね。」
アルケル「馬車は揺れますから慣れてないとまぁこうなりますよね…。でも私もできる限り揺れないように専念します。」
ルシアス「すみません、お願いします。…俺も御者になれたなら良かったんですけど…。 」
アルケル「彼女達、ルシアス様のことを嫌ってるわけじゃなさそうなんですがね…。」
彼女達とは、この馬車を引く2頭のメス馬のことだ。
ルシアス「なんで私は御者台に乗っちゃダメなんですか?」
ルシアスはそう馬に話しかけるが、馬はそっぽをむく。
アルケル「以前は問題なく、ルシアス様も御者台に乗れましたから不思議です。」
ルシアス「俺のことはいいでしょう。それより、テオス様です。」
ジーク「…見せもんじゃねぇぞ。」
ルシアス「そんなこと分かってますよ。ただ吐かないと苦しいでしょう?」
ジーク「吐いてもしんどい…。」
アグレス「テオス様、吐いた直後で飲食をしたくはないと思うんですが、お水を飲まないと脱水症状を起こしてしまいますので…」
ジーク「あとせめて10分くれ…。」
ルシアス「アグレス、水分を取るのも大切ですが、胃を休ませるのも大切ですよ。テオス様、飲めそうになったら教えてください。」
アグレス「す、すみません…。」
ルシアス「謝る必要はありませんよ。俺では水分にまで気が回りませんでした。ありがとうございます。」
ジーク「…この近く川とかないのか。」
ルシアス「はい。元々テオス様用の水筒も馬車に積んでありますので、そちらを飲んでいただこうかと。」
ジーク(…こいつらが渡す飲み物なんて信じられないが…干からびて死ぬのも御免だ。)
ジーク「…川さえありゃなぁ〜…。」
アルケル「ルシアス様、食事の準備をいたしませんか?」
ルシアス「いいですね。そうしましょうか。」
アルケル「…あ。」
ルシアス「どうしました?」
アルケル「…あの、テオス様の食事って…」
ルシアス「俺が作りますので、大丈夫ですよ。」
アルケル「承知いたしました。お願いします。」
イドゥン教の3人の会話をぼんやり聞きながら、ジークは未だ気持ち悪いと悲鳴をあげる身体を休めるのに集中する。
ジーク「…寝てたのか。」
ジークは目を開き自身が寝ていたことに気づく。目の前にはアルケルとアグレスがお互いを枕にしながら寝ていた。
ジーク「今は夜か。」
ジークは馬車の外を見て、時間を確認する。
ルシアス「あ、起きました?」
ジーク「お前は起きてるんだな。」
ルシアス「アグレスとアルケルが早寝なだけですよ。…少し話したいことがあるんです。馬車の外で食事をしませんか?」
ジーク「どうせ俺は動けないからな。好きにしろ。」
ルシアス「お言葉に甘えて。」
ルシアスは、ジークを馬車の外に運ぶ。
ルシアス「今日は1晩ここで休もうと思いますので、ご自身のペースで食事を取られても構いません。」
ジーク「話したいことって?」
ルシアス「まぁまぁ後で話しますから。それより、水筒をどうぞ。」
ジーク「だから飲めねぇんだって。」
ルシアス「あそうか、すみませんつい。 」
ルシアスは慣れた手つきで、ジークを介助する。
ジーク(身内に身体の不自由な奴がいるのか?やけに慣れてる…。)
ルシアス「なんで慣れてるんだろうって顔ですね。俺、好きで重病人の看病とかも良くするんです。」
ジーク「随分変わった趣味で。」
ルシアス「よく言われます。」
ジーク「なぁこの肉何の肉だ。食ったことの無い味がする。そもそもこれは肉なのか?」
ルシアス「お肉ですよ。アルケルが購入した物なので、種類は俺も分かりません。」
ジーク「分からないのかよ。」
ルシアス「テオス様、本当はテオス様にお肉は食べさせてはいけない決まりなんです。穢れているからとして。お肉だけでは無いですが。」
ジーク「…じゃあ何を食っていいんだ。そもそもなんで俺にそれなら食べさせた?」
ルシアス「テオス様の食事は果物と水のみとなります。」
ジーク「……。」
ルシアス「ただ…申し訳ございません。果物を積んだ箱はあったのですが、俺が腐ってる方の果物を馬車に積んでしまって…。」
ジーク「…お前ら意外とポンコツだよな。」
ルシアス「返す言葉もございません…。勝手なお願いだとは分かっていますが、このこと秘密にして貰えませんか?アルケルとアグレスにも。バレたらすっごい俺怒られちゃいますんで…。」
ジーク「…ん?お前が上司だろ?」
ルシアス「そうなんですけど、あの2人もちょっと口が軽いとこがあるので…。それと怒ってくるのはそのことを聞きつけた同僚です。頼みます!俺の同僚めちゃくちゃ怖いんです!」
ジーク「近い!」
ルシアス「すみません!」
ジーク「うるさい!」
ルシアス「はい。いやまじで…ほんと…何回か殺されかけたことあって…。」
ジーク「イドゥン教ってそんな仲悪いのか…。秘密にねぇ。」
ルシアス「アグレスとアルケルが知ると、あの二人も罰を受ける可能性があります。最悪、あの二人だけでも構いません。ダメでしょうか?」
ジーク「……」
(メリットがあるかというと…いや。)
ジーク「生憎俺は宗教には疎くてな。イマイチ話が見えてこない。同僚でも上下とかあるのか?」
ルシアス「すみません、配慮が足りてませんでした。今からお教えします。ええとまず俺はイドゥン教の聖職者にあたりまして…」
ジーク「それで?」
ルシアス「聖職者の階級は、1番上のテオス様が教皇になります。」
ジーク「…俺がリーダーなのか?」
ルシアス「はい。イドゥン教を作ったのはテオス様じゃないのに不思議ですよね。次に、イドゥン教を作った方、クロノ様が司教にあたります。ここまでは1人のみです。次の階級は司祭、俺もそうですね。この辺りから複数人居ます。」
ジーク(こいつ…聞いたことはなんでもペラペラ喋ってくれるな…。なにより…本当のことしか言わない。 )
ルシアス「次が、助祭で司祭の補佐にあたるものです。アグレスとアルケルがそうですね。さらにその下は明確に位が分けられていないため、全てイドゥン教教徒として呼ばれます。」
ジーク「フィヌノア国の人間は外に出られないはずなのに、どうしてイドゥン教の信者は出られてるんだ? 」
ルシアス「それは任務のためですね。悪魔の恐ろしさを説くだけ説いて、何もしないなんてそんなの最低じゃないですか。定期的に悪魔討伐のために、国を出るんです。これに階級制限はありません。 」
ジーク「そんなことしたら脱走しそうなものだけどな。」
ルシアス「脱走できない仕組みがあるんですよ。口止めされてるので、何も言えませんけど…。 」
ジーク「そうか。さっきの話だが、誰にも言わないでやる。」
ルシアス「ほんとですか!?ありがとうございます!あぁ助かった…。」
ジーク「お前も苦労するな。」
ルシアス「まさかテオス様にそのように言われるとは…。」
ジーク「お前のとこの同僚はお前と違って真面目だな。」
ルシアス「…どうなんでしょうね。」
初めてルシアスは言い淀む。
ルシアス「真面目なだけならいいんですけど…。」
ジーク「…眠い。」
ルシアス「すみません、そのままでは寒いですよね。馬車に戻りましょうか。」
ルシアスはそう言い、俺を馬車に運ぶ。
ルシアス「おやすみなさい。」
翌日、目を覚ますとまだ馬車は止まっていた。
ルシアス「おはようございます。」
ジーク「…あぁ。」
ジークは辺りを見回し、何かを探す。
ルシアス「アルケルとアグレスですか?
彼らは彼女達…馬の世話をしています。 」
ジーク「そういや、馬の名前なんて言うんだ。」
ルシアス「真っ黒な子が、アムシア。茶色で、おでこに白い模様がある子が、スディです。」
ジーク「へぇ。アムシアとスディ…」
ルシアス「あっ名前を呼ぶと…!」
ジーク「……。」
ジークは目を見開き固まる。
呼んだかと言わんばかりに、
2匹の馬がジークの目の前にいたからだ。
ルシアス「彼女達、呼ぶと来ちゃうんですよ。」
アルケル「アムシア!スディ!
どうしたんですか!?」
ルシアス「問題ありません、テオス様に反応しただけですよ。」
アルケル「それならよかった…。」
ジーク「馬が賢い生き物とは聞いていたが…悪いな。特に用があった訳じゃないんだ。」
ジークはそう馬に謝るが、馬は1歩も動かない。
ルシアス「来てあげたんだから、なんか頂戴よって言ってますね。」
ジーク「分かるのか?」
ルシアス「大体は。言葉が通じなくても、何年もずっと一緒にいますから。」
アグレス「アルケル…待って…速すぎ…。」
ルシアスが言い終えた後に、
ようやくアグレスはアルケルに追いつく。
ルシアス「よかったらご飯をあげてみます?」
ジーク「まぁ…折角なら…」
ルシアス「分かりました。アグレス、餌を貰えませんか?」
アグレス「あ、はい。」
アグレスはルシアスに言われ、
持ち歩いていた干し草の入っていた桶を、
ルシアスに渡す。
ルシアス「スディからご飯を上げましょうか。」
ジーク「スディからって言われても、俺はこの通り身体が動かないんだ。選ぶ余地もない…だ…ろ…。」
ジークは言いながら、違和感に気付き腕の方を見る。
ジーク「…動いてる。」
アルケル「テオス様って確かセヌス国にいた事があるんですよね?毒への抗体が人より強いから、ちょっとだけ治ったんですかね?」
ジーク「んなアホな…。…で、毒のかさ増しでもするのか?」
ルシアス「しませんよそんなこと。クロノ司教に飲ませるよう命令されたから、飲ませただけで、あんな恐ろしいもの出来ることなら関わりたくないですよ。それにもう毒は手元にありませんし。」
アグレス「そんなことより、早くご飯をあげないと、スディ達拗ねちゃいますよ。」
ジーク「そんなことねぇ…。」
(俺は武器を取り上げられている。こいつらは武器を持っている可能性が高い以上、勝算はないな。今は大人しく従うか。)
ジークは桶の中から干し草を取り出し、馬車から降りる。
アルケル「ご飯をあげる前に一言だけ、僕から言わせてください。」
ジーク「なんだ。」
アルケル「絶っっ対に、スディ達馬の後ろに立たないでください。僕達ヒトと違って馬の足は凄く強いんです。もしかしたら獣人よりかも…。万が一蹴られでもしたら…」
ジーク「蹴られでもしたら?」
アルケル「全身の骨が砕けます。」
ジーク「こっわ…」
アルケル「いや正確には全身ではないんですけど、それくらいの心構えでいてください。アグレスと仲良く骨折の治療に励むことになりますよ。」
ジーク「アグレスってどこか骨折してるのか?そうは見えないが…」
アグレス「今からするんですよ。」
ジーク「は?」
アグレスの訳の分からない回答に、
ジークは振り返ると、いつの間にかアムシアが今にもアグレスに突進をしようと構えていた。
アグレス「すいません、助けてください。」
アグレスは両手をあげ、助けを求めていた。
ジーク「いや避ければいいだろ…」
アグレス「いやあのですね。ここから1歩でも動くとですね。 アムシアの怒りを買うというか… 」
ジーク「なんでアイツあんなに嫌われてんの?」
アルケル「さぁ…。」
ルシアス「アムシア、大丈夫ですよ。」
ルシアスはアムシアに近づき宥める。
その隙にアグレスはアムシアの遠くへと離れる。
アグレス「死ぬかと思ったぁ…!」
ジーク「一体アムシアに何したんだ?」
アグレス「なんもしてないですって!何故かあの2匹に昔から嫌われてるんですよ。」
ジーク「嫌いな匂いでもすんのか?」
アルケル「僕からも同じ匂いがするので、それはないかと。一緒に暮らしてるので…」
ジーク「家族じゃない奴とイドゥン教の奴らは暮らすのか?」
アルケル「特段不思議なことではありませんよ。ハンターさん達がチームで、同じ空間を過ごすのと一緒です。その方が出勤しやすいんですよ。」
ジーク「苦労してそうなこった。」
アルケル「むしろアグレスの方が苦労してるんじゃないんですかね。僕落ち込みやすいんで…」
ジーク「ふぅん。」
ルシアス「食事を終えたら出発しましょう。
テオス様は馬車の中で食事にいたしましょうか。」
アグレス「何故ですか?」
ルシアス「ああそれは…」
ジーク「俺はヒトに食事を見られるのが、苦手なんだよ。」
アグレス「失礼いたしました。」
ジークの傍に ルシアスは行き、耳打ちをする。
ルシアス「ありがとうございます。」
ジーク「皿を持つ前に来てどうする。
寝不足か?」
ルシアス「…そうみたいですね。
よそってきます。」
アルケル「ルシアス様大丈夫なんですか?」
ルシアス「大丈夫ですよ。まぁしようと思えば、走ってる 馬車内でも寝れますから。」
ジーク「あの空間で…!?」
アルケル「まぁ乗りなれてないと、
基本それどころじゃないですけどね。
…酔わない対策とか出来たらなぁ。」
ジーク「まぁあるなら…そりゃ…したいが… 」
アグレス「ルシアス様。 」
ルシアス「どうしました?」
アグレス「ミントって積んでましたっけ。」
ルシアス&アルケル「それだ!」
ジーク「さっぱりわからん…。」
アグレス「ミントティーって軽い酔い止め対策になるんですよ。俺取ってきますね。」
ルシアス「では俺はお湯を用意してますね。
あ、それとお皿を渡してませんでしたね。
はいどうぞ。」
ジーク「ああ。ミントとか必要なさそうだが…」
アルケル「ついでに行商もしてるんですよ。
仮の立場ですけれどね。 」
ジーク「へぇー。」
俺は渡された皿に目を落とし、
食事を見つめる。
ジーク(長旅をするにしては豪華…。トスク国で買い貯めたのか?問題は…毒があるかどうか。)
ジーク「…アルケル。 」
アルケル「どうしました? 」
アルケルは先に食事を始めていたようで、
スプーンを咥えながらそう言った。
ジーク(…同じ食事。)
「毒があるかどうか聞きたかっただけだ。」
アルケル「それはないですよ。
これ以上毒なんて盛ったらテオス様でも、
死んじゃうかもしれませんし…。
それに毒はテオス様が飲んだ、
1杯分だけなんですから。」
(にしてもどうやって果物に、
毒なんて混ぜるんだろう…。)
ジーク「…お前疑うこと知らなさそうだな。
ルシアスが隠してる可能性もあるだろ。」
アルケル「ルシアス様は僕達に意地悪はしませんよ?毒も隠す理由がありません。」
ジーク「あぁうん。」
(すごい信頼してるな。とりあえずルシアスもアルケルも嘘はついてない。ということは本当に毒は手元にない。)
ジーク「餓死で死んだら笑えないし、まぁ食べるか。」
(食って少しでも免疫力を上げないと…毒に殺される…。)
アグレス「ミントありましたよー。」
ルシアス「ありがとうございます。アグレス。お湯も沸かせましたので、早速お茶を入れましょう。」
ルシアスがアグレスからミントを受け取った時だった。馬車からガタガタと大きな音が聞こえたのは。
ルシアス「テオス様、大丈夫ですか!?」
ルシアスが慌てて馬車内を覗けば、
ひっくり返った皿と、吐いてるジークの姿があった。
ジーク「…くそ…。」
(ああそうか…。俺は…食事自体が…)
トラウマになったのか